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2010年2月

2010年2月 3日

私が彼女に初めて会ったのは彼女が白髪染めを探しているときでした

Sousuiです.アメリカです.現在,シリコンバレーにおります.

既に車を逆走したりGoogleのセキュリティにとっつかまったりまあいろいろやってます.

えーと,今週の日曜日は現地の人にショッピングセンターやブランド街を案内してもらいました.

というか,私,なんでこの人と知り合いになったのか我ながらよく分からない.

つまるところそれは「私が彼女に初めて会ったのは,彼女が白髪染めを探しているときでした」という英作文の練習みたいな文章になるわけです.うーん,なんか冴えないなあ.

詳しく説明すると.

ホテルの向かい,一番近いスーパーは日系です.アメリカ来るまで「醤油ぐらいはあるだろうけど,どうしよっかなー」と思ってたら,なんのこたない,何でもあります.こしひかりもあきたこまちも売ってます.めんつゆも売ってれば,レピシエの茶葉だって売ってます.富山産みりん干しとか.ちと高いのですが,今は円も高いですからね.

さて,その日,私はなかなか時差ボケから復帰できず,ぼーっとスーパーを歩いていると,商品を手にとって難しい顔をしていた女性が突然私に訊きました.

「あなた,日本語読める?」

「ええ」

「私,ダークブラウンを探してるんだけど,これ,なんて書いてあるの?」

商品は日本製の白髪染めでした.

「ああ,それはライトブラウンです」

「何?」

何回も聞き返され,何回も言い直してはたと気がついた.

し,しまった,ボケてた,right brownって発音してた.正しい茶色ってなんだそりゃ.

「すいません,light brownです」

「じゃダメだ.ダークブラウンが欲しいんだから.じゃ,こっちは?」

それにはナチュラルブラウンと書いてある.そんな説明のしにくい分け方をするな,と思わずメーカーにけんかを売りたくなった.

「ええっと......」

「こっちの方が濃く見えるんだけど」

「それはですね,言葉通りならnatural brownって書いてあって......あ,これ,これがdark brownですよ!!」

奥にダークブラウン発見.あってよかった.

「ありがとう!――あなた,どこから来たの?」

「日本からです(当然ながら)」

「いつ?」

「えっと......2日前です」

「ええ?!2日前?!ほんと?英語どこで習ったの?」

「え゛.あー,そのー,学校に行ってたときに......(←このあたりから片言になっていく)」

「私も12年前にここに来たから今のあなたの気持ちすごくよく分かる!」

あー......私は今時差ボケで眠くて眠くて仕方がないんですが.

「ここには何しに?」

「うーん,とある会社で,うーん,インターンシップです.(←さっぱり正確でないが英語で込み入った説明をするのは不可能だった.だいたい,日本語で説明するとしても実は面倒なのだ)」

「そうなんだ.週末とか空いてるならこの辺案内してあげる.どこに何があるとか分かんないでしょ?」

「どうもありがとうございます」

「連絡先教えてくれない?」

「えーっと,名刺ならあるんですけど」

「携帯の番号書いてある?」

「(うへえ,掛けてくる気か!英語で電話って恐怖なんだが)携帯は契約はしたんですがまだ届いてなくて番号が分からないんです」

「じゃあ,メールアドレスと携帯番号教えるから分かったら連絡してね」

「はい」

というのが彼女との出会いだったわけです.

その後,携帯が届いたときに,番号を教えようとして彼女の番号を連絡してしまうというボケたことをしつつ,メールのやりとりをしました.

彼女,なにかと「自信持ちなさい,あなた英語うまいよ.だって,何言ってるか私分かったし」と言ってくれます.きっと心細く思ってると思ったんだろうなあ.いや,そんなに気を遣ってくれなくていいです.単に現状認識してるだけです.書くのはまだマシですが,しゃべるとtenseがめちゃくちゃです.あと,native speedでしゃべられると60%ぐらいしか分かりません.

彼女の流ちょうな英語を聞き間違ったかもしれないなーと思いながら,せっかくの縁だから一度ぐらい会ってみるか,と「よかったら普段文房具とか電化製品をどこで買ってるか教えてもらえませんか.あと,喫茶店とかレストランとかのおすすめも教えてください」とメールを打ちました.

そしたら電話がかかってきました.

ひゃー,英語の電話!ジェスチャーが使えない!

「メール見たよ!もちろん紹介する.土日が空いてるんだろうけど,私,土曜は都合が悪いんだ.日曜,どう?」

「あー,いつもなら土日空いてるんですけど,24日はあいにく空いてないんです」

「スケジュール入ってるってこと?」

「はい.あーうー,えーっとサンフランシスコに行くんです」

誰が言えるか,スタトレのコンベンションに行くなどと.

「そう......」

「次の日曜はいかがでしょう」

「次?」

「31日です」

「24日?」

「いえ,31日です」

「twenty-4th?」

「thirty-1stです.end of Januaryです」

「twenty-4th?」

「違います,thirty-1stです」

「twenty-4th?」

すいません,かなりめげました.

結局,メールで連絡したら,「ごめんごめん,運転してたからよく聞こえなかったの」

運転しながら携帯掛けていいんすか?

というわけで,31日は彼女とあちこち行ってました.

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2010年2月11日

You use the internet too much

金曜からずっとホテルのネットが繋がらなかったんですよ.

けっこう断続的に繋がらなくなったり繋がったりしてたので回復を待ってたんですが,数日たっても直らない.それで気が重かったけれども日曜日にフロントに行って「繋がらないんやけど,何か起きてます?」と訊いたら,ネットサービスに電話しろと番号を教えてくれた.うへぇ.だから英語の電話勘弁してくれって.

しゃあないので電話したんだが,なんかそんときのあんちゃんは「そこのホテル全体が繋がらなくなってる,テクニカルサポートがいないからいつ直ると言えないけど,待ってくれ」と言われたのでしょうがなく眠った.月曜日になっても直らなかった.

火曜日になってもぜんぜん直らない.

しゃあないのでホテルの人にもう1回訊いてみた.新しいパスコードを教えてくれた.しかし,それを入れるべきログイン画面に繋がらない.

泣く泣くもう1回電話した.それでまあIPアドレスどうなってます?とかいろいろやりとりがあって(この時ばかりはつくづく自分がネット設定とかコマンドプロンプトとか分かる人間で良かったと思った),あー,結局ですね,「動画みたりソフトダウンロードしたりしませんでしたか?」ときたもんだ.「You use the internet too much, ma'am」

......

......

......

うっへー,しまった,ATOKだ!!

私はATOKユーザーなんですがね,私が昔買ったATOKは17で,これがまたWin VistaにいれるとATOKパレット(言語バーみたい物)が意図せぬところに吹っ飛びまくるという症状が出る.それで私が今持ってきているのは年末に買ったWin7機なんだけれども,これも同じ症状が出ていた.アップデーター入れたら直るだろうと思ってはいたんだけど,もう数年たってるし,せっかくだからWin7正式対応のATOK2010を買ってやろうと思ってたわけです.

そして待って待ち焦がれた発売日が2月5日.アメリカにいるから,当然パッケージじゃなくてダウンロード(日本にいてもダウンロードのつもりだったけど).

これがまずかったってわけだ.

うん,まあ,プレミアム版買ったら1G超えてたからまずいかな,とは思ってたんだ.そもそもホテルの回線では細すぎてダウンロードできなかったんだよね.最初の表示で終了までの時間が17時間と出て,「おおう,10年あまり前から見かけたことのない表示だ」と思っていたんだ.当然失敗したし.

それでATOKはどうしたかというと,ここの図書館Google提供のWiFiがあって(というか,Googleのお膝元なので市内全域にアンテナが立ってる),これがホテルの10倍ぐらい速いのでそこで落とした.(それでも1時間かかった上に,キャッシュRAMディスクにしてたら足りなくなって2回やる羽目になった)

あー,もしかしてホテル全部がぽしゃってたのももしかして私が無茶なことをしたから止められちまったのだろうか.

すまない.>All of guests in the hotel

結局,Oh, I seeつって制限解除してもらって,やっと今繋がってます.疲れた.

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2010年2月18日

なんかいろいろ無い

アメリカは15日がPresident's dayでお休みだったので,もうこれ逃したら三連休はないと思ってアナハイムとロサンゼルスに行ってきました.

いや,兄貴の指令で松井のTシャツを土産にと言われたので,せっかくだから球場に行こうと思ったらエンジェルスってロサンゼルスにないのね.正式名称はLos Angeles Angels of Anaheimつって,LAの隣のアナハイム市にあるわけよ.えー,けっこう時間かかるしやめようかなあと思ってたら,なんかでっかい遊園地があるのです(ポルナレフランドを押っ立てるぜ!という台詞が浮かんだ自分がちょっと嫌).うん,これと抱き合わせなら行ってもいいかな,と思っていたらネット不通事件.ぐはあ.

グダグダしてるうちに木曜になっちゃって,もう面倒だし止めようかなあと思っていたんですが,その日の夜に一緒に夕食取った人が行け行けってサウスウエスト航空のURIまで送ってくるから(知ってたんだけどね),なんか木曜の夜23時頃から手配して金曜日に会社引けたら突撃という,実に行き当たりばったりなことをしてきました.

うーろうーろして,3日間歩き通してたら,足に水ぶくれができました.普段全然運動なんかしない人間が1日目2万5千歩,2日目1万9千歩,3日目2万3千歩とか歩いたらそらできるわな.おまけに,火曜日にのどが痛くなってこらあかんかなーと思って会社休んだら,水曜日に熱が出ました.アホか.出張なのに大変申し訳ない.

さて,絵はがきや封書など出すにあたって,USPS(The United States Postal Service)を利用する訳なんですが,その国際料金表の地図の日本がえらいことになってました.

北海道・四国・九州がない.

なんかいろいろちぎれ飛んでますよ.

私,昔,「能登半島をわざわざ(大きく)書くのは石川県民と富山県民だけだ」と誰かに言われた覚えがあるのですが,アメリカ人もでした.しかも,石川県民と富山県民は日本を書けと言われたらさすがに北海道・四国・九州を書くと思うのですが,アメリカ人はどうでもいいようでした.

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2010年2月23日

Stanford Theatre

今年は黒澤監督の生誕100周年だそうで,近隣のPalo Alto市にあるStanford Theatreで黒澤映画特集やるよーと聞き,これ逃したらいつ銀幕で見られるか分からんと思って馳せ参じました.

Stanford Theatreはその名の通りスタンフォード大学の近く,University Avenueという感じのいい商店街にあります.

黒澤特集最初の1週間はずっと『七人の侍』です.

火曜日に仕事が引けてから行ったのですが,何の因果か土砂降りの雨.しかも,映画館は上映が始まる30分前じゃないと開かないときた.冷たい雨の中を向かいのケバブ屋に走り込んでなんかのラップを買ってむしゃむしゃやって時間をつぶし,中に入りますると,まあ,ずいぶんと雰囲気のある劇場ですよ.映画始まるまでの間,舞台真ん中でオルガンの生演奏してるんですよ.すげえ.

1曲終わるたびに拍手が起きるやら,入ってきた老夫婦が通路で踊ってるやら,アメリカ人愉快だね.映画上映直前の曲が『荒野の七人』のテーマで,にやりとしました.『荒野の七人』は『七人の侍』のアメリカリメイクだからね.

ご機嫌で見ていたら,オルガンが,なんと,沈んだー!!

舞台にオルガンが沈むと同時に映写が始まりました.

『七人の侍』は長いので休息があるのですが,そこでの曲に『上を向いて歩こう』を演奏していたので思わず小声で歌ってしまった.ははは.なかなか選曲考えてるね.

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七人の侍

あい,黒澤映画特集 in Stanford Theatre, Palo Alto, California, USAです.

そもそもですね,黒澤映画はあんまり見たことが無くて,最初にちゃんと最初から最後まで見たのが『乱』,それから『羅生門』は見たんだったか見なかったんだったかで,なんか取っつき悪くて難しい映画撮る人だなーと思っていた.『椿三十郎』がTVで入ったときに友人宅で見ようとした覚えがあるものの,別のことをしているうちにいつの間にか椿が流れてきていて,その後に目を離していたら最後の「抜け!(ズバーッ)」という状態だったので,まともに見てなかったんですよ.

ただ,後で名高い『七人の侍』は娯楽映画だと聞いたので,そんならちょっくら見てみてもいいかな,と.もし,『七人の侍』見て肌に合わなかったら,せっかくの黒澤特集だけど止めよう,と.さらに重要だったのは英語吹き替えかどうか.すまねえ,字幕じゃないと分からねぇ.

始まりまして,映画は字幕だったのでほっとしたのは良かったんですが,見た人分かるんですけど,最初が文字の大写しなので字が重なって日本語読んでる私は読めない.字幕邪魔.

ようやく人が出てきてしゃべりだしたら――

日本語分かんねえ!

焦って必死になって英語字幕読んでました.忘れてたよ,あの頃の映画って妙に早口で独特の発声なんだよね.おまけに,この映画の場合最初がお百姓さんの場面な物だから,訛りもあって余計に何言ってるか分からない.町の場面になって,やっと言葉が分かるようになってほっとした.

それで,ぜーんぜん知らないで見ていたんですが,やっと見つかった一人目,これがリーダーになる人らしいんですけど,この人は――三船さんじゃないね.えーと志村さんだよね.そう,私は三船敏郎がどういう顔だったかもあんまり記憶が定かでなかったんですわ.ですんで,ずいぶん見続けてからやっとどの人か分かった.えー?!そののっけからウロウロしてた挙動不審人物?!ってか侍というより侍もどき?

リーダーになる勘兵衛さんはほんとについて行きたくなるような感じの人ですが,二人目の丸々とした穏やかな人(五郎兵衛)も私は好きで,家に入ろうとして「ご冗談を」って止まるところがとてもいい.

勘兵衛さんは何度も合戦に出た経験のある穏やかな御仁で提案されたり質問されたりすると,「うん?うーん......そうさな」と考え考え答えていて,この人について行けば大丈夫だ,と思える人.でも,ここぞというときには刀を抜いて威嚇してぴしゃりと百姓を抑える厳しい面を見せてくれる.

この映画見て「これぞ侍!」と思うのは久蔵さんだ.小柄だけど最強.彼については勘兵衛さんが「己をたたき上げる,ただそれだけに凝り固まった男」って言うけど,村での様子を見てると全然そんなこと無いと思う.けっこう気を配った発言もしてるし,案外笑ってる.だいたい,村に来る前に菊千代の刀取って追いかけっこさせるきっかけ作ったのって久蔵さんだよね.それでいてもちろん剣豪らしい.練兵の場面で,槍で思いっきり胸を突かせようとするところとか,一人で敵の砦に行って種子島取ってくるとことか,矢を避けるとこなんかは思いっきり剣豪らしいんだけどね.そりゃあもうかっこいい.

考えてみると,この久蔵さんが後の『荒野の七人』におけるジェームズ・コバーン氏が演じるナイフ投げの名手の元で,このジェームズ・コバーン氏が『ルパン三世』の次元大介のモデルである,ということを考えると,何がどんな風に影響する物か分からんもんだなあと思う.

「苦しいときに助けになる」って連れてこられた人よりも,菊千代が全てをかっさらってませんか.菊千代はですね,笑えるけれど,一番感情を引きずり回してくれる人でもある.持ち場離れたせいで犠牲が出てごっつり落ち込んでるところなんかは一緒に泣きそうだった.

2010/04/17追記:菊千代という役は最初無くて,三船さんが久蔵を演じる予定だったそうだ.でも,三船さん菊千代で良かったと思う.そりゃ三船さんが久蔵やっても格好良かったと思うけど,宮口さんの久蔵は「優れた体躯の剣豪」とは違っていて,求道者だけどちょっとしたところが優しいし,堅いんだけど格好いい.そして何より,菊千代は三船さんじゃないとできないと思う.

百姓の側では与平が一番好きだなあ.何をやってもうまくできないんだけど,どうにも憎めない.

ただ,守ろうとしてんのに何かと反するようなことする人が出るのには苛々したっけ.だから,菊千代が半鐘鳴らして百姓相手に一席ぶつのは拍手喝采だった.「おさむらいさま~おさむらいさま~」のとこなんか最高.

演技としてすごいなあと思ったのは実はメインの人々じゃなくて,野武士の砦にいる女性でした.悲嘆すら忘れ去ってしまったような緩慢な動きで身を起こして,火が起きているのを見つけ,しかし,騒がずに憤りもせずにいる,というこの一連の場面はとても言葉で説明できない.

野武せりは「bandit」でした.うーん.バンデット.そりゃたしかにやってることバンデットだけんどもよぅ.野武士とか落武者が分からないと途中なんで百姓と侍たちが剣呑になるかよく分からないと思う.

準備万端整えて決戦になるんですが,もう見ててね,生存闘争なんだと思った.どっちがいいか悪いかなんて関係なくて,1騎ずつ誘き出されて村中総出の槍を受ける野武士見てて,可哀想になっちゃったんだ.食糧が尽きるから向こうも必死だという勘兵衛さんの言葉を見て,やっぱり可哀想に思ってしまったんだ.野武せりの方の生活なんて全然出てこないにもかかわらず.最初に非道をしたのは野武士にもかかわらず.

あと何人って×付けていくのが長くて怖くてまだ終わらないのかと気をもんでしかたがなかった.

けっこう長い戦いで,途中,夜に休息取る場面がある.この時に百姓が侍たちに酒を持ってきたとき,本当に仲間になったんだなあと思った.

もう最後は土砂降りの中の総力戦で,種子島ってこんな土砂降りでも使えるのかなあと思ったけど,それは横に置いといてすごかった.

百姓の娘と若侍というカップルがあるんですが,始終娘の方が引っ張ってて,その挙げ句,事件が終わったらあっさり何にもなかったように振る舞っているのがなんとも言えなかった.非常時の恋で,それが終われば否応なしに日常だけが残るんだなあ,と.

この若侍を演じている木村功氏は当時30ぐらいだったそうだ.......詐欺だ!

このね,最後の場面見て,何て言うか日本の縮図というか.いやね,災難が起きる→嘆き悲しむ→それ終わったら復興だろが,という風に見えてね.ちょっと苦笑した.だから感慨深げな,いや,単に漏れ出でた思考だったのだろうが,「勝ったのは村人だ」という言葉が然り,然り,と腑に落ちる.

ところで,この場面で村人は田植えをしている.刈り入れしてすぐに襲撃があったはずなんだけど,3人は結構長い間ここにいたということか?

帰ってきたけど,興奮して眠れない.どうしてくれる.

そもそも映画終わって帰ってくる途中,横道から竹槍持った人が出てくるんじゃないかという妙な感覚に襲われてた.(おちつけ,ここはアメリカだ)

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2010年2月28日

羅生門

三船さん,暴れすぎだよ三船さん.

あ,ちょうど五七五になった.

黒澤映画特集 in Stanford Theatre, Palo Alto, California, USA第2作目です.

この映画,観たと思ってたけど,どうも観ていなかったらしい.有名だからTVでやるときの紹介CMだけは何度も見ていて,観たと思い込んでいたらしい.縛られた多襄丸には見覚えがあったから.

それで,まあ,冒頭の通り,多襄丸がやりすぎ.と言っても,やり過ぎに見えるのは,お白州(この時代も白州っていうのだろうか?白い砂が敷いてあって,白州にしか見えなかったけど)で筵に座っているときと,自分の証言の時だけだったかな.女の証言の時は調子のいい男に見え,武士の証言の時はある程度の倫理観(とまで言えば言い過ぎか)を持っているように見え,杣売りの話では情けない.そうだ,ほっとんど半裸で着てる物もいい物じゃなくて,粗野で野卑なのに,にやりと笑ったときの表情がなんとも憎めない感じがしたなあ.

皆が皆それぞれの証言で違った感じがするんだよなあ.一番印象に残っているのは,女の証言の時の武士の目つき.あれは嫌だわ,確かに.「蔑む」ってこういうことかと思わず納得してしまうあんな視線は.

印象の違いで言えば,女が一番すごいかもしれない.そりゃ腕力はないけど気迫だったり情念だったりかと思えば泣き崩れるだけに見えたり.女って恐ろしいね.

考えてみると,奇妙なことに,皆が皆自分がやったと言っている.皆が自分を繕っているのだとすると,興味ぐらい繕い方じゃないか.

Stanford Theatreで作った紹介文で,この映画は「added "Rashomon-type story" to the vocabulary」と書いてあって,日本ではこの映画の原作の『藪の中』がそういう意味を持っている(あ,むしろ日本じゃ「迷宮入り」って意味か)から面白かった.

ややこしいことに映画『羅生門』の主たる原作は芥川龍之介の『藪の中』のほうなんだよね.『羅生門』はストーリーを彩る雰囲気ぐらいかな.

私はどちらも読んでいたのだが,映画を観た後もう一度読みたくなって,読み直してみた.

それで.

武士の小刀を抜いたのは誰かと思ったとき.

空恐ろしくなってしまった.

この証言は映画でも言っている.だからだから,映画ラストで旅法師は「救われた」と言うけれども.

あるいは.

或いは......

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醜聞 スキャンダル

......

......

......三船敏郎って二枚目だったんだ......

この映画は観る気なかったんです.

黒澤映画はむつかしそうというイメージがあったので,今回の黒澤映画特集も時代劇なら耐えられるかなと思って,時代劇だけ拾うつもりだったんです.

で,『羅生門』観たんですが,その後,席を立つ人がいない.時刻確かめたらすぐに次の『醜聞』が始まる.あ,だったら観ようかなー.

で,冒頭の言になるわけなんですが.

いや,びっくりした.石原裕次郎については若い頃を観ても私はどうもピンとこなくて,なんで国民的スターだったのかよく分からないんですが,三船敏郎は間違いなく二枚目だわ.

なんで今まで気づかなかったかって,だって,三船敏郎の名前知ったの,Wizardryだったもん(ここからして間違ってる).最上級クラスのモンスター(つってもSamuraiだが)にMifuneと出てくるんで,友人に「なんでMifuneなの?」と訊いたのが中学生の頃だ.

「知らない?三船敏郎.俳優の」「いや」「えー?!知らないの?!」「知らないよ.で,なんで一俳優がモンスターなんだ!」

メリケン人の考えることはよく分からない.(Wizは米国製)

その後,初めて三船敏郎を観たのは,よりによって『レッド・サン』だった.まさによりによって!侍が出てくる西部劇だったよ.チャールズ・ブロンソン,アラン・ドロン,三船敏郎ってメンツだったよ.なんてこったい!

で,次がこないだ観た『七人の侍』と『羅生門』とくらあ.ひげ面半裸.分かるか,二枚目だなんて!後で気づいたけど,『醜聞』と『羅生門』って同じ頃に撮ってるんだね.ひゃー,ほんと分からんわ.

でもね,観てて思ったんだけど,三船さんって三船さんにしかなれないんだなあ.志村さんは誰にでもなれるけど.あ,別にけなしてるわけじゃないんだよ.タイプの違いだと思う.三船さんみたい人がいないと華がないし,志村さんみたい人もいないと芝居を成り立たせるのが困難だ.

それで,この『醜聞』なんですがね,世界的声楽家と新進気鋭の画家がでっちあげの恋愛記事を書かれて訴訟を起こす話,と言うと小難しそうなんですが,そんなことない,そんなことない.人情もあれば笑いがあちこちにあって展開もさくさく行くし面白い.

画家の青江とカストリ雑誌社長の堀の言い分をマスコミがインタビューしているところなんかも,青江が動くたびに記者もカメラも動くのとか,マイクの集音部に手を置いた青江の手を誰かが動かしてるのとか.

あるいは西條も原告に名を連ねると訊いたとたん,蛭田がバイクのクラクション鳴らして自分で分かんないとことか.

モデルと青江が喫茶店にいる場面とか.

もうね,面白いんだ.

モデルさん好きだなあ.モデルしてる場面で裸体書かない青江の理屈をさらっと見抜いちゃってるとこ(この時の青江の仕草がまたいい),前日の喫茶店の場面で青江からケーキ守ってるとことか,「もうからかわないから」とか(こんときの青江のケーキヤケ食いっぷりもいい),蛭田のマネとかさ.

西條美也子役は山口淑子です.李香蘭!声楽家の役ですんで歌も歌ってますけー,へえ.

青江は反骨精神旺盛な好青年という感じなんだけれど,蛭田の娘を観て速攻気に入りましたーって感じなところが笑った.そのまま頻繁に出入りするようになってね.山で絵を描いていたとき後ろから見ていた三人にはぶっきらぼうだったのに,子供とか弱い者にはすんなり優しい笑顔を見せるんですわな.

そうだ,青江は器用すぎます.バイク乗りなんだけど,エプロン付けて料理もすればクリスマスの時に足踏みオルガン弾いたりもする.モデルさんには「スキャンダルの素質がないもの」と言われてるけど,ごく自然に女性の隣に座ったり,蛭田の娘が珍しく泣いてもう来ないでと言ったときの「ごめんよ」というあの辺りとか,天然たらしな気がちょっとする(笑).青江氏って金に困っている様子がない......どころか中の上ぐらいに見えるんだけど,収入はどうしてるんだ?

アメリカで観てて,ちょっぴりハラハラ(?)したのが,この話,占領下だって分かってんのかしらん,ってことだった.道路標識に英語書いてあることに疑問を抱かないのか,とか,その道路標識が付いている棒に「米軍憲兵司令部」って書いてあるのが分かってんのか,とか.わっかんねえだろうなあ.

青江がバイクにクリスマスツリー乗せて走ってくるとこがウケてた.クリスマスパーティもおもしろがってた.まあ,これは日本人としてみても面白いとこだ.それでもってね,蛭田がこの明るいパーティーの部屋に入っていけない,っていうとこね,あれはすごく分かりやすかっただろうな,と思う.泣くべ.いっしょに泣くべ.次の蛍の光を歌っている場面はアメリカ人には分かりにくかったかもしれないが.

この話の一番好きな台詞はですね,青江の「おやじィ,人生は涙ぐましいなあ!」ってところだ.この青江・蛭田の酔っぱらい二人組の場面,好きだなあ.「神様は太っ腹だなあ(ひょろろろろーひょろろろろー)」「メリークリスマス,エブリバディ!」この酔っぱらいめ!

それでも,蛭田は抜けられない.正義の善人になれない.結局,蛭田が勇気を出せたのは本当に土壇場になったときだったんだけど,それはもう大事な物がいなくなってしまったからだったのかもなあ.小切手もいらなくなってしまったのかなあ,と思った.もちろん,競輪・酒と小金があると自分のために使ってしまう人だったけど,小切手はさ,使わずに持ってたんだもん.

最後の「星が生まれるところを見た」はちょっとわざとらしい台詞だったかなあ.いや,他のシチュエーションだったら納得できたと思う.静かなところで意味が分かる人の中でだけでしみじみと出た台詞ならすんなり入ったんだけど,インタビューの場面では.

でも,観て良かったよ,ほんとに.

昔,母が「俳優さんっていいねぇ.若い頃の姿も残って」としみじみと言ったことがあるけれど,この映画を観て三船さんを視て本当にそう思った.

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