Sänger Singt den Sang

補足説明

考えてみたら,イルイ寝てばかり小説だなあ.

そもそもは,中村カンコさんのサイト「微速前進」に飾られていた宗高さん(「雪月輪」を作っておられます)のゼンガー&イルイのイラスト(「微速前進」TOPから「PICT」→「OTHERS」→「GIFT」,あるいは「雪月輪」TOPから「絵」→「献上ブツ」とたどってください)を眺めていて,思いついた話だったんです.

そのときは,「次々に人が呼びに来るんだけど,イルイが寄りかかって寝ているので動くに動けないゼンガー」という単なる笑い話だったんです.

調子に乗って,「子守歌歌わせたれ」→「歌うんならドイツ語だな」→「クラシックで有名なんじゃなくて土着(?)の歌ってないんかいな.できればマザーグースみたいな思わせぶりなヤツ」などと思い,検索をかけたところなぜか『ソルヴェイグの歌』が引っかかったところから,話はすごい勢いで迷走を始めたのでありました.

『ソルヴェイグの歌』はノルウェーの作家ヘンリク・イプセンの劇詩『ペール・ギュント』に同じくノルウェーの作曲家グリーグがつけた曲なので,どう考えてもノルウェー語の歌なのに,なんで検索に引っかかったのか分かりません.ドイツ語で歌うことが多いのでしょうか?

私はこの『ソルヴェイグの歌』が大好きなんです.ペール・ギュントは『朝』とか『オーゼの死』とか『アニトラの踊り』とか好きな曲が多いんですけど,その中でも『ソルヴェイグの歌』は別格です.だいたい,国民楽派の音楽って,スメタナにしてもドヴォルザークにしても,胸をワシワシと揺さぶられるような音楽が多いじゃないですか.この『ソルヴェイグの歌』も類に漏れず,聴いてると泣きたくなります.

それで,「よし,ゼンガーに『ソルヴェイグの歌』を歌わせよう」と決意し(なんで?しかも,女性の歌だよ!!),「ゼンガー,音楽なんて聴かないだろう」→「じゃあ,誰かが聴いてたのを聴いたんだ」→「そらやっぱ,ソフィアでしょう」→「歌詞の意味わかんないで歌ってるのがええなあ」→「じゃ,ドイツ語の歌詞は没(私,ゼンガー,ドイツ人だと信じて疑ってない)」→「では,原語版で」→「外伝でさんざん『アウルゲルミル』だの『スレードゲルミル』だの北欧な単語出てたんだからちょうどいいじゃないか」,となったわけです.

あ.でも,ソフィアってどこの人だろう.ドイツとか北欧読みだったらゾフィーじゃないか.ゾフィーじゃ,ウルトラマンに思考が飛ぶよ!

このノルウェー語を見つけるのが大変だった.いや,イプセンのテキスト自体は割と早く見つかったんだけど(注:イプセンは1906年に没しているので,著作権は切れている),ドイツ語歌詞とにらめっこするに,歌だとワンフレーズ毎にどこかから繰り返しているはずで,それがどこだか分からない.というか,私はノルウェー語が分かりません.それで,今度はノルウェー語版で歌っているCDを探して,幸い図書館にあることが分かったので借りてきて,しばし,じっと聞き続け,まあ,切れ目はここだろうと見当をつけて(重ねて言いますが,私はノルウェー語が分からないので,当然,発音も分かりません),今度は訳をどうしよう,ってことに.

対訳は英語版があったし,一応,独−日の対訳もあったし,CDのライナーノーツにもあったんだけど,ほとんど意訳でしょう?どの単語が翻訳者独自に付け足した単語か分からなかったので,今度はノルウェー語のオンライン辞書探して,ひとつひとつ単語調べました.でも,語形変化があるとたいていダメで,ほとんど分からないままに残ってしまった.ogがandとかは分かったから,マシといえばマシだけど.それで,今度は英語訳とドイツ語訳と日本語訳と原文とをにらめっこして,単語の意味を類推(そんな無理矢理な).「træffesってなんや分からんけど,そういえば,なんかドイツ語の単語で「会う」ってのがそんな形してなかったっけ(←ウロ覚えかい!!)」と,こんな感じで.それで,あとは適当です.ここまで来れば私も意訳.意訳といえば,最後のmin Venは迷いました.文字通りだとmein Freund(英語だとmy friend)らしく,それはそれでありかなあと思ったんです.なんか,恋人というよりも,もっと深いような意味合いを持つ「友人」という意味にしてもいいんじゃないかと.でも,うまい単語が思い浮かばなかったので(友よ,じゃ堅いしなあ),結局,恋人への呼びかけの意味にしました.あと,「足下に額ずくとき」もかなり意訳です.いや,何が言いたかったかというと,「訳は適当だから信じないでね」ってことです.

題名なんですが,これも迷いました.

「歌」という意味では「Lied」の方が普通だし,実際,私もLiedという単語の方が好きだし,定冠詞もdasのほうが好きなので随分迷いました.が,SangにするとSSSと揃うなあというのと,原語はSolvejg's Sangなので,そっちにしました.

それに,Sänger.ゼンガーの綴り,キャラ選択の時に一瞬出ることに最近気づいて,見たんですけど,Sangerなんですよね.「ゼンガーじゃなくてザンガーじゃん!!」という衝撃を受けたので,勝手にaに点々を付けました.でも,Sängerだとおもいっきり「歌手」って意味ですね.似合わん.似合わないよ!(どちらかというとゼンガーというとオイゲン・ゼンガー博士なんだが.対遮点爆撃機の.もっとも,ゼンガー博士はEugen Zengerだから,本当はツェンガーだけど.そういえば,階級が名前についてるのはなんでなんだろうね.>ゼンガー少佐)

ドイツ語のウムラウトがかわいくて好きなんですよ.aウムラウトはさほどじゃないけど,oウムラウトとuウムラウトは発音もかわいいと思います.ドイツ語って堅い発音というイメージが強いけど,uウムラウトなんかは特にかわいいと思うんですよ.英語のkissよりドイツ語のküssenのほうがかわいいと思いませんか(「クッセン」に近い曖昧な音で「キュッセン」).

『ソルヴェイグの歌』の歌がどんな曲か知らない方向けに下記サイトを紹介します.

卯如Lar!!

「倉庫」→「MIDI Dataあれこれ」とたどるとあります.原曲に近いです.

クラシックMIDIラインムジーク

「クラシックMIDI」で作曲家名「グリーグ」にあります.これは,ピアノアレンジ.シンプルです.

この話の中では,オクターブ低い声で,しかも,うろ覚えの意味の分からない異国語をたどたどしく呟いていたんだと思ってください.ゼンガー,きっと歌はうまくないに違いないよ.

作中,存在意義なる言葉が出てきますが,はじめ,「レゾンデートル」なる有名な単語を使うつもりでした.で,綴り見たら,「raison d'etre」.……うそ〜ん,これ,フランス語やったのん?哲学用語っぽいからドイツ語やと思いこんどっとたわ!!今回一番の衝撃でした.

ミドリさんが割と出てきますが,これはなんでかと言うと,最初にイルイが登場したステージのエンドデモで,ゼンガーが「俺が居ると怖がるだろう」みたいなことを言ったとき(そういえば,どうして自分が居ると怖がると思いこんでるんだろう,この人),「いいところもあるのね」と言うようなことをミドリさんが言うんです.その瞬間,そうか,君が最初の理解者か(何の?),大空魔竜で僕と握手!などと思っていたからです.なので,私の中ではミドリさんはいつも微笑ましいなあと思いながら,大きいゼンガーさんと小さいイルイちゃんを見守っています.

というか,あの艦の人はみんな,見守っています.甲児くんもさやかさんも名もない整備士も名もない医師も,みんな.(←名前考えるの苦手.各自で名前つけてあげてください)

っていうか,こんなもん書いとらんと,はよゲーム進められんか(富山弁)>自分(まだ『第2次』の20話目である),と思う今日この頃.