素朴な疑問
第十二小隊の面々がアンヌの酒場に陣取っているのはいつも通りのことだ。
もとい。
第十二小隊の年長組が酒場の片隅を陣取っているのはいつも通りのことだった。出動の命が出ない限り、入れ替わり立ち代わり飲みに来ている。
今日の面子はクイーン、エース、ジョーカーの三人。
「あのさー、俺、疑問だったんだけどさ」
また、くだらない話が始まるんだろう、とでも言いたげにクイーンとジョーカーがエースを見返す。もっとも、面白そうに視線が揺れている感じがしないでもない。
「大将な、紋章使うとき左手上げるだろ?」
ジョーカーとクイーンは戦闘中のことを思い返してみてうなずいた。
「真なる雷の紋章使うときも左手上げるだろ?たしか、あれ」
「右手に宿しているはずだね」
「だろ、だろ?違和感あってさ」
少し考えてからジョーカーが言った。
「右手には剣を持っておるからな。剣をあげると自分に落ちるとか」
「それだ!違いねぇ!」
バンバン机を叩きながらエースが叫んだ。
「何がだ?」
「おわぁ!た、大将!ひ、人の背後に音もなく立たないでください!」
ゲドは小首をかしげた。そのまま問いかけるような視線を三人に向ける。
「あんたが紋章を使うときの話をしてたのさ」
「ほれ、右手の紋章を使うときも左手を上げるじゃろ」
「なんか違和感あるなーって話を」
それを聞いて、ゲドはあきれたように目を閉じて、それから言った。
「額の紋章はどうすればいいんだ」
一瞬静まって、エースがすぐさま言った。
「大将、俺が悪かったです」
とっさに何故か謝ってしまったエースの脳裏に浮かんでいたのは額からビームを発しているゲドの姿だった。机に突っ伏して肩をひくつかせているクイーンも、顔を背けて腹を抱えているジョーカーも同じことを考えているに違いない。
ゲドは何も言わずに空いている席に座って酒を注文した。
が、それから一週間、三人は一言も口をきいてもらえなかった。
平成14年10月27日
補足説明
そんなわけで、大将の額には必殺や激怒等をつけるようにしています。
でも、ササライやルックだったらビームが出てもおかしくないような気がする。