第3部への序曲

『ジョジョの奇妙な冒険』は現在,単行本が60巻以上出版されていますが,各部ごとに独立した話なので途中の部だけ読んでも十分楽しめます.分からない単語・設定が出てくるとしてもそれは「その時代の風俗を知らなくても時代小説は楽しめる」という程度の物でしょう.

ここでは第3部「だけ」を読むとしたときに関わってくる1部,2部での出来事・単語などを紹介します.ちなみに,

となっています.

第1部概要

第3部のボス,ディオについては第1部に詳しいので第1部をかいつまんで紹介します.

ジョージ・ジョースター卿はジョナサンが生まれて間も無い頃に馬車の事故で妻を失います.事故現場にたまたま通りかかったダリオ・ブランドーが金目の物を盗もうとしていたときにジョージは息を吹き返し,ダリオを命の恩人と勘違いします.後に,それが勘違いだと分かっていたにもかかわらず,ジョージはダリオの頼みをきいて,ダリオの死後,彼の息子を養子にします.それがディオです.

ディオとジョナサンは兄弟のように育てられたのですが,ディオは「ジョースター家の財産をのっとる」計画をずっと練っていたのでした.彼らが大学を卒業する頃,ジョージ卿は病の床にありました.ひょんなことからジョナサンはその「病」がディオに盛られた毒による物だと気がつき,彼らの見せ掛けの友情はついに終わります.

ジョナサンに毒殺の証拠を握られ,進退極まったとき,ディオは「石仮面」(後述)の力を使うことを決意します.すなわち,「人間でない者」として生きることを選択したのです.7年間保護者であったジョージ卿を刺殺した血で吸血鬼と化したディオ.ジョナサンは館を燃やし,その火勢によってからくも勝利を得ますが,父と兄弟と思い出ある館をすべて失ってしまったのでした.

ディオとの闘いの傷を癒すジョナサンの前にツェペリと名乗る男が現れ,ディオは生きていること,ディオには仙道の特殊な呼吸法による「波紋」が有効であることを告げます.

波紋を習得し,激戦をくぐりぬけ,ディオとの再戦に勝利したジョナサン.恋人のエリナと結婚し,不運続きの彼にようやく幸福が訪れたと思われたとき,運命は反転します.彼が新婚旅行に乗った船には首だけになったディオも乗っていたのです.実はディオは頭にまで波紋の効果が及ぶ前に身体と頭とを切り離し,新たな肉体としてジョナサンを選び,機会を待っていたのです.この最後の闘いにおいてジョナサンはディオと彼の手下どもを世にださないために船を爆破させ,自らは力尽きて船と共に大西洋に沈みました.

以上がディオとジョナサンとのいきさつです.第3部ではジョセフも承太郎もディオに対して敵意しかないのですが,ジョセフの祖父であるジョナサンはディオと一緒に青春時代を歩んだこともあって,心情は複雑だったようです.彼らが単なる敵同士でなかったことが味わえるところを引用してみましょう.

まずは,ディオの台詞.

あれほど侮っていたおまえを今おれは尊敬しているからだ…勇気を! おまえの魂を! 力(パワー)を! 尊敬している… それに気づいたからだ…

ジョジョ、おまえがいなかったら このディオに仮面の力(パワー)は手に入らなかっただろう… しかし,おまえがいたから いまだ世界はおれのものになっていない!

神がいるとして運命を操作しているとしたら! おれたちほど よく計算された関係はあるまいッ!

おれたちはこの世においてふたりでひとり! つまり…
おれは この世で ただひとり尊敬する人間のボディを手に入れ絢爛たる永遠を生きる!

一方,ディオに肉体を提供することを死力で拒んだあとのジョナサンの台詞.

ディオ…

君のいうように ぼくらはやはり ふたりでひとりだったのかもしれないな。

奇妙な友情すら感じるよ…

そして 今

ふたりの運命は完全にひとつになった…

そして…船の爆発で消える…

ジョースター家の血統

家系図

ジョースター家の家系図です.太枠で囲まれているのが各部の主人公です.

ジョースター家は代々イギリスの貴族でロンドン郊外に屋敷を構えていました.が,屋敷はディオとジョナサンとの闘いで燃え落ちてしまいました.また,1938年,エリナとジョセフはアメリカへ移住しました.

身体的な特徴として,背が高く頑丈な体格で,首のつけねに星型のあざがある者が多いことがあげられます.社会的にはトップ水準の地位を得るが,短命で家庭的には薄幸(というジンクスはジョセフによって破られたようです.ヨカッタ,ヨカッタ)旅行好きで好奇心旺盛のという面もあり.

活動期間

年代が分かりやすいように生存期間を表にしてみました.ディオについては黒い部分が人間であった期間,白い部分が吸血鬼になってからです.

ジョージ一世はディオに刺されて死亡,ジョナサンはディオと闘って大西洋に沈んでいます.ジョージ二世はディオによって増やされた屍生人(ゾンビ)のうち,波紋の使い手たちからの追跡を逃れ,社会に溶け込んでいた者に殺されます.間接的にディオが殺したといってもいいでしょう.

ジョセフは第2部での石仮面を発明した「柱の男」との闘いに生還した後,ニューヨークの不動産王になります.第3部の頃にはかなりの資産家になっているわけです.

用語

SPW(スピードワゴン)財団

3部中,たびたび旅の助力をしてくれるスピードワゴン財団は,1910年に設立されたものです.

設立者,ロバート・E・O・スピードワゴンはもともとロンドンの暗黒街に住んでいたのですが,ジョナサンの人柄に惚れ込みディオを倒す旅に同行した人物です.彼は後にアメリカに渡り,石油を掘り当てて財を成しました.また,義理堅い彼はジョナサンの死後,エリナ・ジョースターとその家族の面倒を見ていたようです.ジョセフとは家族同然でした.

スピードワゴン財団は表向きは人類の福利厚生のため,医学・薬学・考古学などの様々な分野の研究を助成することを目的としていますが,真の目的は石仮面の謎を追うことでした.

第2部において石仮面の謎が一段落ついてからもスピードワゴンの遺言に従い,「超自然現象」を扱った部門がジョセフに協力しています.

ジョセフは設立者と家族の付き合いがあった人物ですし,「超自然現象」に対抗できる波紋使いにしてスタンド使いなわけですから,財団にとってはかなりの重要人物なのでしょう.

石仮面

第3部のボス,DIOは石仮面によって人間為らざる者になっています.

石仮面は古代アステカの一部族が所有していたものらしく,美術商を通してジョージ一世が手に入れていたものです.ジョナサンは石仮面に血がつくと内部から骨針が出てくることに子供の頃に気づき,仮面の研究を通して考古学に興味を持っていました.

骨針はどう考えても脳髄に達するような方向に出るので,かぶっているときに骨針が出ると死んでしまうと思われました.ディオは最初そのことを利用して,ジョナサンを「仮面研究上の事故」にみせかけて殺すつもりだったのですが,ロンドンでからまれた乞食に石仮面による殺害を試したところ,乞食は吸血鬼と化してディオを襲ってきました.石仮面は人間の脳からある種のパワーを引き出す道具だったのです.

吸血鬼は人の精気を吸い,尋常ならざる力,銃で撃たれても死なない生命力を持っています.弱点は太陽の光で,浴びると体が崩れ去ります.人の血を吸い,代わりにエキスを注入することで屍生人(ゾンビ)を造ることができます.

波紋

ジョセフが第3部でもたまに使いますが,波紋は上述の通り,吸血鬼・屍生人(ゾンビ)・柱の男(闇の生物)を倒すためのものです.普通の人間相手に波紋を使ってもビリッとしびれる程度・もしくは気絶させる程度です.頑健でなければ心臓を止めることもできるようです.このあたりの効果は電気ショックを思い浮かべるといいかもしれません.

波紋は特別な呼吸法によって作り出されるエネルギーで,太陽の光と同じ性質を持ちます.(それで吸血鬼を倒せるのです) また,生命エネルギーと同等のものでもあり,痛みを和らげたり,傷を治したりもできます.第3部でも案外,ジョセフが傷を治していたのかもしれません.

その他,水上を歩いたりもできます.