はじきとばされた。
ごう、と音を立てて意識が薄れていく。
淡いグレーのフィルタがかかった視界のむこうで、雪をのけていたあいつの手が止まる。
赤い、雪に濡れた髪をやさしくかきあげて……やさしく頬に触れて、『それ』を見て微笑う。
死んだように動かない『それ』を抱き起こして、やさしく抱きしめて臘のような白い額にくちづける。
待て……待ってくれ。俺はここにいる。俺は『それ』じゃない。『それ』は俺じゃない!
綺麗な綺麗な、白い笑顔に血の気がさした。頬がうっすら淡い桜色に染まる。
唇が、ふるえて。ささやかれるそれは。
「愛してるわ……」
やめろ。『それ』にそんなことを言うな。『そんなもの』に、そんなふうに笑いかけるな。俺は……俺はここにいる!