Author's Note 往古の良夜にささぐ歌

つーわけで御先祖さんのお話でした.

そもそもの構想は1年前にありました.古文勉強してから書いてやろうと思って書いてなかっただけです.

東京にいる間に,暇に任せて現代文で粗書きをし,富山で古文に訳してたんですが,どうも文章がしっくり来ない.ここでの主人公は“青年”でなければならないと思ったのです,あと,粗書きをしたときの文章の独特の調子,こいつが惜しくなった.

それで,古文にするのは止めたのです.

『徒然草』とか読んで勘を取り戻そうとまでしてたのに.骨折り損のなんとやら.

2005.2.6追記:しかし,それをさっぴいても,あまりにもおかしな文章だと思う.書き直したくて仕方がない.と言うより,書き直さなければならないと思う.

この話が生まれる原因というのは『たえてさくらの……』なんですわ.

『たえてさくらの……』を友人NKに見せたらですな,いたく気に入ってくれて手紙で庵の話をとうとうと語ってくれちゃったんですわ,奴は.

(前略)わし,イヲリンに直衣か狩衣着せたいの.(エボシは抜きね(笑)ついでに髪の毛茶色で2Pカラーでもよし)そーいう絵をここ半年ほど考えてます.荒涼とした平安京の大路の一角,しかも夜で空には月(なんでもいい),そこにちみもーりょーを従えてひっそりとたたずむ庵っての.いや,別に大路でなくてもええねん.寝殿造の屋敷の縁でもいい.庭先でもいい.とにかく,薄闇の中でひっそりとたたずむ庵ってのが描きたいの.顔色は白く,唇だけが妙に赤くて,表情は……薄笑いかな,ハ虫類的なのさね.手に檜扇なんか持ってたりして.(中略)着せる衣装は平安かそれ以前.江戸の衣装はイヲリには似合わんと思う.良くて戦国までかねえ.ただ難点がありまして,こーいった時代の衣装の色ってのは概して「華やか」なんすよね.うーん.ま,濃色系ならなんとか合うかな……(後略)

この手紙の消印が97年6月17日で,これを読んで構想が浮かんだのであります.

しかし,NKよ,1つツッコませてくれ.「庵」は歴史的仮名遣いだと「いほり」だぞ.

いや,ノリで「イヲリ」にしてるんだろうけどもさ.

あ,この絵はその後もらって,『スケッチ』のほうに収録しました.興味があったら見てください,笛吹いおりん.


ここでのいおりんの御先祖さんのイメージなんすけどね.

名前は庵(いほり).

若くして八尺瓊家の当主なんだけど,ものすごく線の細い人で,独特の「感覚」で動く人.熱に浮かされて動くとでも言いましょうか.

660年前というと,1330年頃なんだから,鎌倉時代末期なんですね.ちょうど『徒然草』が成立した頃(だから,『徒然草』で勉強しようとしたわけですが).けど,平安時代をイメージとしてます.

封印を解いたという事件をその頃の動乱と絡ませると面白そうですね.(この頃に鎌倉幕府が倒れ,建武の新政,南北朝対立)

草薙・八尺瓊・八咫の三家は武家ではなくて公家.「戦うお公家さん」というと何かのようだ.(笑)

決して高い位には着かないけれど,重要視されていて,絶えないように配慮されている.その理由を知っているのは天皇含む極々少数の人々で.

しかし,八尺瓊の当主が突如,“封印”を解いたことにより,歴史の歯車が変わって行く……なんてね.


‘けもの’さんですが,本来ならオロチであり,ヘビなんでしょうが,ここでは豹のイメージです.黒豹の.ルガールじゃないけど.

それから,私はいおりんの衣装の背中の模様,あれを「月蝕」だと思ってます.八尺瓊家の家紋は「月」だったんだけど,八神になってから「月蝕」になったんだと勝手に思ってます.なぜか昔からそう思ってます.なぜでせう……