まず,この日のうちに弘前に行こうと思っていたのがポイントではあった.
いや,本当はそこまで行けそうになかったら盛岡で泊まってしまおうかとも思っていたのだが,同室だったAさんに見せてもらった観光案内によると,弘前城は門や天守閣が残っている事が分かってどうしても見たくなり,さらには 弘前YHというのが城のすぐ近くであることから,ぜひにその日のうちに弘前に行きたくなったのだ.
だから,すべてはここから逆算しておく事から始まる.
旅慣れたIさんや私自身の予測により,弘前なら街だから田沢湖や雫石のように18時台でバスがなくなってしまうようなことはあるまい,さらに,私の考えで行くと,もしバスがなくなっても,城下町の常として駅から歩いて行けない距離に城があるとは思えない.
そんなわけで,まぁ弘前にだいたい21時にごろつけりゃいいだろうと考えた.
さて,その日は8:30,Iさん,Aさんといっしょに田沢湖一周サイクリングからはじめた.「龍子の像」というのが唯一の観光スポットらしい.実はそんなものがあることも知らなかったのだが.じゃ,なんで田沢湖に行ったかと言うと……いや,なんかボスが騒いでたからさ,それに,湖もたまには良いかと思ったからさ.ま,まぁ,ともかく出発だ.
YHの隣の国民宿舎で自転車が借りられる.乗り放題300円なり.安い.安いだけあってボロかったけど.
とちゅう,碑などがあるたびに眺めたりしながらのノンビリサイクリング.
龍子像は青い青い湖にスラリと金色の姿を見せていた.ここでAさんのカメラで写真を撮る.実は私は写真が嫌いなのだが,まぁ,その場の雰囲気を壊すこともあるまい.ここには名前も良くわからない体長15cmぐらいの青緑色の魚が群れになって岸に押し寄せていてびっくりした.
龍子像を過ぎてしまうとスポットがほとんどない.最後の坂がけっこうきつかったけど,なんとか完走.いや,帰るには完走するしかないんだけどさ.
それから水沢温泉に行く事にする.この辺で有名な温泉と言うのは乳頭温泉郷らしいんだけど,そこはちょっと遠いからその手前の水沢温泉にしておいた.露天風呂があるのも行きたかった理由.そうそう,Iさんは乳頭温泉に泊まろうと思って電話をかけたがどこもいっぱいで「どこが秘湯だ!」と憤慨していた.
11:30過ぎのバスで水沢温泉へ.水沢温泉のお湯は乳頭温泉といっしょなのだそうだ.行った所は入浴400円なり.お手ごろ料金だろう.白く濁ったお湯に浸かっているといかにも温泉に入っているなぁという気分になる.
さて,さんざんあったまって良い気分になったところで盛岡へGo!
14:02のバスで田沢湖へ,そこから14:37のこまちで盛岡へ.
私はフリー切符だったため気づいてなかったのだが,他の二人を見ていたら盛岡へ行くために730円の乗車券と720円の特急券を買わされていて憤慨していた.別に「こまち」でなくてもいいんだが,ちょうどいい時間に普通列車というものがないらしい.それを考えると,今回,さんざん新幹線に乗ってるから間違いなく元取ってるよなぁ.
盛岡の岩手公園(だったかな)の側にジャジャ麺のおいしい店があるのだとAさんが言っていたので,これまた3人で歩いていく.
着いてびっくり,行列してるのだ.お昼時などとっくに過ぎていると言うのに.
店内はとても狭く,人々はひしめきあって会話をする暇もあればこそ,黙々とジャジャ麺を食べている.連れ立って行っても別々に座るしかない.私は小を頼み,Aさんは中,Iさんは大を頼んだ.といって,私とりたてて小食というわけではない.(そんなこと言ったら,友人たちから突っ込みが入る)様子を見るに,多そうだったからだ,実際,Aさんはきつかったと言っていたし,Iさんは死にそうだったらしい.
風評を聞くに,ジャジャ麺はミートソースうどんというから,そういうもんを想像していたのだが,私が思うにこれは「味噌風味焼きうどん」である.
この店には手を伸ばせば届くところに生卵が盛ってあるどんぶりがある.他の人のやるのを見よう見真似して,でてきたジャジャ麺をホンの一口残して(残さなくてもいいみたいだった.好みの問題だろう)生卵を割り入れてかきまぜ,「お願いします」と言ってどんぶりを店員さんに差し出す.すると,具をちょびっと入れてくれてそこにゆで汁が注がれる.これがチータンというものらしい.やさしい味でうまい.
ちょうど食っているときに『るるぶ』の取材が来たのでびっくりした.
さて,ここでAさん,Iさんとは別れて再び一人旅である.といっても,ひたすら列車にのって弘前に行くしかないんだが.17:46のはつかりまで時間があったので待合室にいたのだが,面白いものを発見した.紙コップ回収機.これはいいものだね,うん.
青森着が20:00.それから20:16の弘前行きに乗り,弘前に着いたのが21:01.
実は,YHの人に電話をかけた時に「21時につくんですけど,バスありますかね?」と言ったら「ないと思うよ~」と言っていたので,歩くつもりだったんだが,どうも人が一方向に流れていく.会社員ばかりならタクシー乗り場か?とも思うんだが,学生もいるし,もしかしたら……
勘は当たった,まだバスがいる.
しかし,ガイドブックには3番から乗れと書いてあるのに行き先が変な気がする.時刻は差し迫っている.おそらく,ここで乗り遅れたらバスはない.私は躊躇せず,ガガッ,とステップに足をかけ,
「このバス,大学病院前に行きますか?」
と訊いた.
「いかない,6番だよ」
このとき躊躇しなかったおかげでちゃんと6番乗り場に行き,バスに乗ることができた.
あとで分かった事だが,今年に入って変わったのだそうだ.
さて,YHは分かりにくいところだったが,まぁ,地名が分からなくても道には強いのが私の特徴,特に迷う事もなく辿りついた.
ここで心ひそかに懺悔.
YH のヘルパーさん,電話で女の人だと思ってたらしっかり男の人だった.ごめんなさい,人のこと言えません.
ここの夜もそれなりに楽しかった.あと,やっとここで学会関係者に会わなくなった.(笑)
ヘルパーさんにとって笑い事でなかったのが,11時ごろ電話をかけてきて「泊めてくれ」と言っておきながら現れなかった奴がいたこと.やめるんなら連絡しろ.
気の毒であった.