暗号解読(サイモン・シン)

新聞の書評を見て「面白そうだな」と思い,図書館で見つけて予約して,ようやく読むことができた.これがまた久々に面白い本にぶち当たった.大満足.

書き出しがスコットランド女王メアリーの裁判の話からで,こういった,暗号が歴史にかかわったエピソードがちりばめられていて歴史好きにもお薦めだ.また,初期の頃の簡単な暗号の解き方も解説してある.推理小説で出てくるような(ドイルの『踊る人形』やセイヤーズの『死体をどうぞ』など)暗号についても,成り立ちや背景が書いてあって読んでてニヤニヤ.

暗号とは少しずれるが,線文字b の解読の話も面白かった.アプローチがすごくパズル的.その解説の中で,表意文字は何千個にもなってしまい,表音文字だと数が少なく30文字ぐらいまで,音節文字は中間でだいたい30~90ぐらいと書いてあり,「音節文字は例が浮かばないなぁ」と思って考え始めて数秒後,ひらがな(カタカナ)に思い当たった.おう,そういえばこれは音節文字じゃないか?50ぐらいだからちょうど合うなぁ.

名高いシャンポリオンとロゼッタストーンの話もある.

本を読んでいてつくづく思ったことがある.私は外国語学習が道楽のようになっているが,おそらく,目的は人とのコミュニケーションじゃなくて,暗号を解く感覚なのだと思う.母国語ではないゆえに一見まったく分からないテキストに実は意味があるという感覚が面白いのだと思う.

他には,ネットショッピング・ネットバンキングには欠かせないrsa暗号についても書いてあったし,pgpについてはずっと「どうして公開鍵ってのがあるんだろう,鍵公開しちゃっていいの?」と思っていた疑問がやっと解けた.(メールソフトにpgp機能を実装するのが流行った頃,ネットニュースを読んでいろいろな話を聞いていたので,pgpにはちょっぴり興味があった)

普通,この類の本で「分かりやすく書かれている」と書いてあっても,中盤あたりでさっぱり分からなくなるのが常だったのだが,この本は最後まで楽しく面白く理解しながら読めた.

日時: 2002年2月 3日 | 感想 > 本 |

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