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- レックス・スタウトの本(和書)
- レックス・スタウトの本(洋書)
ネロ・ウルフの名前はずいぶん前から知っていた.美食家で,ものすごい巨漢なんだそうだ.読んだことは無かったのだけど,その名前だけは頭に残っていて,ピーター・ユスチノフ版のポワロを見るたびに,「ポワロというよりネロ・ウルフだなぁ」と勝手に思っていた.
さて,そんな私がミステリ専門誌EQのバックナンバーを大量に手に入れたのは,実はメグレのためだったのだが,その背表紙に何度も踊る「レックス・スタウト」「ネロ・ウルフ」の文字.それまで私は作者の名前を「レック・スタウト」などという,どこぞの資格試験学校のような名前だと勘違いしていた.ふぅむ,一つ読んでみるか,と手にとったのが『ロデオ殺人事件』続いて『シーザーの埋葬』.
これがまた,ものすごくテンポがいい.なんと言っても,会話が魅力である.探偵はネロ・ウルフなんだけど,その助手にして語り手のアーチー・グッドウィン君(ハンサムさんらしい)がまたプロに徹していていい.減らず口を叩かせたら天下一品.どうやったらそんな会話が思いつくんだってほどの丁丁発止のやり取りが堪らない.たとえば,『シーザーの埋葬』の冒頭,アーチー君運転の車がひっくり返った場面.
- ウルフ
- ふざけるのはやめてもらいたい。これからどうするのかね?
- アーチー
- あなたのことは知りません。でも、ぼくはわれとわが身を滅ぼすつもりです。先日の新聞に,皇帝を失望させた日本人は必ず自殺するって記事が載ってました。僕も日本のやつらには負けませんよ。これはセップクと言うのであります。あなたはたぶんハラキリだと思ってるでしょうが,彼らはそういう呼びかたをしないんです。少なくとも,めったにそうは呼びません。正しい名称はセップクです。
なんだってそんなくだらんことを知っておるのだ,アーチー!(笑)
オチの方はいつもなんとなく知りきれトンボ.証拠をびしばし並べ立てて「さあどうだ!」という具合に切れのいい終わり方じゃなくて,「証拠は無いがこちらには戦う用意がある,それを避けたければ潔くすることだな」という程度で終わることが多いからだろう.でも,読んでてとても面白い.
ところで,アメリカの CATV で 2000年から制作されているドラマがあるようです.写真を見た限りでは配役(アーチー役=ティモシー・ハットン,ウルフ役=モーリー・チェイキン)は良さそう.公式ページを見る限りアーチーのほうが目立ってます.まぁ,原作もそんな感じだけど.50年代風のファッションもなかなか良いので,一度見てみたいです.
《ネロ・ウルフ シリーズ 作品リスト》
- HM(35)-3『毒蛇』
(原題 Fer-de-Lance)1934 - HM(35)-2『腰抜け連盟』
(原題 The League of Frightened Men)1935 - HM(35)-6『ラバー・バンド』
(原題 The Rubber Band)1936 - HM(35)-4『赤い箱』
(原題 The Red Box)1937 - HM(35)-1『料理長が多すぎる』
(原題 Too Many Cooks)1938 - 光文社文庫『シーザーの埋葬』
(原題 Some Buried Caesar)1939ご自慢の蘭のために珍しく出かけた田舎での事件.しょっぱなから車がひっくり返ったり牛に追いかけられたりで大変なことになっている.「炭疽菌」という単語はこの話で始めて知った.この話を読んでしばらくして白い粉があちこちに送りつけられる事件が発生してびびった.ちなみにシーザーは「ジュリアス・シーザー」ではない.以降,アーチーとはつかずはなれずな関係になるリリー・ローワン登場.
- HPB(439)『我が屍を乗り越えよ』
(原題 Over My Dead Boby)1940 - EQ '93.7-9『遺志あるところ』
(原題 Where There's a Will)1940 - EQ '83.3『苦いパテ』
(原題 Bitter End)1940 - EQ '86.3『黒い蘭』
(原題 Black Orchids『Black Orchids』収録)1940 - EQ '86.7『死の招待』
(原題 Cordially Invited to Meet Death『Black Orchids』収録)1940 - EQ '88.1『まだ死にきってはいない』
(原題 Not Quite Dead Enough『Not Quite Dead Enough』収録)1944 - EQ '86.9『ブービー・トラップ』
(原題 Booby Trap『Not Quite Dead Enough』収録)1944 - 世界推理小説全集(19)『語らぬ講演者』
(原題 The Silent Speaker)1946 - EQ '90.1-3『女が多すぎる』
(原題 Too Many Women)1947 - EQ '98.9-'99.5『Xと呼ばれる男』
(原題 And Be a Villain)1948 - 探偵倶楽部 '57.3『死の前に』
(原題 Before I Die『Trouble in Triplicate』収録)1949 - 別冊宝石87号(フィルポッツ&傑作中編集)『求む、影武者』
(原題 Help Wanted, Male『Trouble in Triplicate』収録)1949 - 世界短編傑作集『証拠のかわりに』
(原題 Instead of Evidence『Trouble in Triplicate』収録)1949 - The Second Confession 1949
- EQ '93.5『二度死んだ男』
(原題 Man Alive『Three Doors to Death』収録)1950 - EQ '88.7『花のない葬礼』
(原題 Omit Flowers『Three Doors to Death』収録)1950 - EQ '89.5『死の扉』
(原題 Door to Death『Three Doors to Death』収録)1950 - In the Best Families 1950
- EQ '85.7『翼ある拳銃』
(原題 The Gun with Wings『Curtains for Three』収録)1950 - HMM '79.11『セントラル・パーク殺人事件』
(原題 Bullet for One『Curtains for Three』収録)1950 - EQMM '62.1『ねじれたスカーフ』
(原題 Disguise for Murder『Curtains for Three』収録)1950 - Murder by the Book 1951
- Prisoner's Base 1952
- 別冊宝石123号(特集・世界の名探偵)『身から出た錆』
(原題 Home to Roost『Triple Jeopardy』収録)1952 - EQMM '57.12『巡査殺し』
(原題 The Cop-Killer『Triple Jeopardy』収録)1952 - EQ '96.7『ヒーローは死んだ』
(原題 The Squirt and the Monkey『Triple Jeopardy』収録)1952 - HPB(177)『黄金の蜘蛛』
(原題 The Golden Spiders)1953 - HMM '86.2『美しい容疑者たち』
(原題 Invitation to Murder『Three Men Out』収録)1954 - EQMM '63.10『ゼロの手がかり』
(原題 The Zero Clue『Three Men Out』収録)1954 - HPB(729)「EQMMアンソロジーII」収録『ワールド・シリーズの殺人』
(原題 This Won't Kill You『Three Men Out』収録)1954 - しゅえっと『ザ・ブラック・マウンテン』
(原題 The Black Mountain)1954 - Before Midnight 1955
- EQ'80.5『法廷のウルフ』
(原題 The Next Witness『Three Witnesses』収録)1956 - EQ'95.1『人を殺さば』
(原題 When a Man Murders『Three Witnesses』収録)1956 - EQ'95.1『真昼の犬』(新潮文庫『いぬはミステリー』収録)
(原題 Die like a Dog『Three Witnesses』収録)1956 - HMM'81.5-6『殺人犯はわが子なり』
(原題 Might as Well Be Dead)1956 - カッパまがじん'77.5『死を招く窓』
(原題 A Window for Death『Three for the Chair』収録)1957 - EQMM'58.7『殺人はもう御免』
(原題 Immune to Murder 『Three for the Chair』収録)1957 - EQMM'59.10 / HMM'72.10『探偵が多すぎる』
(原題 Too Many Detective『Three for the Chair』収録)1957 - If Death Ever Slept 1957
- 『クリスマス・パーティ』(新潮文庫『クリスマス12のミステリー』収録)
(原題 Christmas Party『And Four to Go』収録)1958 - EQ'87.5『イースター・パレード』
(原題 Easter Parade『And Four to Go』収録)1958 - HMM'76.2『独立記念日の殺人』
(原題 Fourth to July Picnic『And Four to Go』収録)1958 - 『殺人は笑いごとじゃない』(新潮文庫『ビッグ・アップル・ミステリー―マンハッタン12の事件』収録)
(原題 Christmas Party『Murder is No Joke』収録)1958 - Champagne for One 1958
- Plot It Yourself 1959
- Too Many Clients 1960
- HMM'75.2『ポイズン・ア・ラ・カルト』(創文『ディナーで殺人を(下)』収録)
(原題 Poison a la Carte『Three at Wolfe's Door』収録)1960 - EQ'92.9『第三の殺人法』
(原題 Method Three for Murder『Three at Wolfe's Door』収録)1960 - EQ'98.7『ロデオ殺人事件』
(原題 The Rodeo Murder『Three at Wolfe's Door』収録)1960 - EQ '97.7『究極の推論』
(原題 The Final Deduction)1961 - EQ '92.5-7『ギャンビット』
(原題 Gambit)1962 - 『殺人鬼はどの子』(HM『クィーンズ・コレクション1』収録)
(原題 Eeny Meeny Murder Mo『Homicide Trinity』収録)1962 - Death of a Demon『Homicide Trinity』収録 1962
- Counterfeit for Murder『Homicide Trinity』収録 1962
- The Mother Hunt 1963
- EQ'79.11『殺しはツケで』
(原題 Kill Now-Pay Later 『Trio for Blunt Instruments』収録)1964 - EQ'78.7『スイート・コーン殺人事件』
(原題 Murder Is Corny 『Trio for Blunt Instruments』収録)1964 - EQMM'64.6『血の証拠』
(原題 Blood Will Tell 『Trio for Blunt Instruments』収録)1964 - A Right to Die 1964
- 光文社文庫『ネロ・ウルフ対FBI』
(原題 The Doorbell Rang)1965 - Death of a Doxy 1966
- EQ '82.1-5『ファーザー・ハント』
(原題 The Father Hunt)1968 - Death of a Dude 1969
- HM(35)-5『マクベス夫人症の男』
(原題 Please Pass the Guilt)1973 - HM(35)-7『ネロ・ウルフ最後の事件』
(原題 A Family Affair)1975
コメント (2)
ネロウルフ。ドラマ版から知った者です。
WOWOWで以前放映していましたよ。
演出が、ちょっと昔の米TVドラマにしてあって、テンポのいい会話が楽しいドラマでした
投稿者:匿名 (2009年7月30日 22:30)
実はCATVでやっていたのをチラッと見たのですが,ちゃんと1本最後までは観なかったのです.
本は読まれましたか?
小説も会話がポンポン進んで楽しいですよ.
投稿者:Sousui (2009年7月31日 23:03)