先週,朝っぱらから面白い電話がかかってきた.
「あのぅ,どこに訊いたらいいか分からんがで,おたくさんにかけたんですけど,もし,こういうこと訊くがで正しいところあったら教えてください.あのぅ,博士課程ってありますよねぇ,あれちゃ『はくしかてい』と読むのが正しいんでしょうか,『はかせかてい』と読むのが正しいんでしょうか」
この後,この質問は『博士論文』および『医学博士』の読み方に発展した.喧喧囂囂の論議の末,
「学長が学位記授与のときは『はくし』と読んでいる」
と言う事実から,
「人によって『はくし』とも『はかせ』とも読んでいるが,改まった場では『はくし』になるようだ」
と答えておいた.
この話をTさんにしたところ,
「そうねぇ,年配の方はわりと『はくし』と読む人が多いね」
う,うそー!! 私の中では『はくし』なのに! 私は年配の範疇だったのか?!
Netscape 7をインストールしてしばらく経ちました.Netscape 7は基本的にタブブラウザ.その機能は悪くないなと思います.使用感は6よりはマシという程度です.
4.78よりは表示がうまくいきます.特に,文字化けするページ,スタイルシートの崩れるページ,TABLEの閉じタグがないページ.ただ,私のページでセンタリングが崩れるページがいくつかあって,困っています.
6と比べると,ブックマーク編集のあたりが格段にいいです.と言うより,6が悪すぎ.ブックマークの追加・削除・移動に死ぬほど時間がかかっていたから.
難点は,他のソフトとの連携.メールやエディタなどではURLをダブルクリックすると標準で使うブラウザが立ち上がってページが表示されますが,これにものすごく時間がかかる.立ち上がりが遅すぎて,固まったかと思うほど.
昨日,市立図書館に『剣客商売全集』を借りに行った.書庫にある3巻から7巻を出してもらうことにした.
書庫に入ってしばらくして出てきた係員,3巻が見つからなかったらしく,機械に入力してありかを確かめている.
「けんきゃくしょうばい」
ねーちゃん,ねーちゃん,それじゃ出てこないよ.
剣客商売
先月,眼鏡を割りまして.
普段かけてないものだからめんどくさくてそのまま打ち捨てておいたのですが,初めて通る道をドライブするときなどはあると便利なもので(注:眼鏡限定は無い),重い腰をあげて眼鏡屋に行って参りました.
「うちで作られるのは今回がはじめてで?」
「いえ,あのー,10年ぐらい前に一度……」
「その眼鏡はもうお持ちでないですよね?」
「あ,いや,その眼鏡をこないだ割りまして,それで……」
「それはどうも長い間使っていただいてありがとうございます」
ああいうところは顧客リストをずーっと持っているものなのだな.10年前に作ったときのデータがそのまま残っていた.
その後,いろいろと目の検査をしたのだが,いろいろと測られて面白かった.
「普段,眼鏡はおかけになってない?」
「ええ,前に作ったときに『すぐ度が進むから強めに作っておきます』と言われたんですけど,掛けると気持ち悪くなるもので,結局,あんまり掛けてなかったんです」
「ああ.前のはちょっと強すぎるみたいですね.今回は右目を一段階,左眼を二段階弱くしておきます」
一般に,眼鏡と言うものは新調するたびに度が強くなるものだと思っておったよ.
で,手元に新しい眼鏡が来たんだが.
やっぱ掛けるとどうも気持ち悪くなる気がする.慣れていないからだろうが.おそらく,この眼鏡も常用はすまい.日常生活には困っていないから.
Aさん(40代・男性)は独り言の多いお人.
「名簿のファイルはどこじゃい・・・えーとえーと・・・あったたたたたたた百烈拳!」
それを横で聞かされて腹がよじれるほどわらかされました.
こないだ,Aさんは『愛のコリーダ』を歌いながら仕事をしていた.
あなどれんと思った.
愛のコリーダ
ダルジールシリーズに手を出したのは,ジョン・ソウ氏が亡くなったせいである.
よく見に行くモースサイトに追悼の言葉がいろんな人から書き込まれていたのを知っていたので,見にいったのである.そうしたら,ちょっと前にあったアンケートの集計が発表されていた.質問の一つに「What other detective series do you enjoy?」というのがあり,上から順番に見ていったらまだ読んだことのないもので一番上にあったのが『Dalziel and Pascoe』だったのだ(いや,ほんとうは『Prime Suspect』なのだけど,私が嫌いそうな話だったので,避けているのだ).
ははぁ,面白いらしい.
そこで,図書館へ行った.ポケミスの並んでいる棚で何冊か見つけた.解説のところのシリーズリストを見て最初から読んでやろうと思ったのだが,あいにく最初のほうは図書館に無かった上に,未訳の物もある.新しくなるほど本が厚い.おそれをなして結局,のっけからエライことになってる『闇の淵』を借りた.
面白くて止まらなくなった.このごろ読んでいたモースもメグレもたいてい頭脳労働で,自身が危険な目に会うことはほとんど無い.それに対してダルジール物は面白可笑しいのに知性のスパイスも効いている活劇で,次から次と話が展開していく.例によって僕はしばしば人の名前が分からなくなるのだが,前に戻って確認するのがもどかしいほど先へ先へと読み進んでいた.必殺五行飛ばし読み炸裂.これ読んだあとにメグレ物を読もうとすると,読むスピードを調整するのに必要があるのを感じた(メグレはゆっくりゆったり読むのが吉).
次の日,本屋に出かけて短編集をみつけ,覗いてみた.『最後の狙撃兵』を読む.またもダルジールとパスコーはエライ目にあっている.いつもこうなのか?
捜査を進める主要人物はダルジール(警視),パスコー(部長刑事→主任警部),5作目から加わるウィールド(部長刑事)の3人.彼等は階級の上下はあるものの捜査に関しては皆が皆有能な警官ぶりを発揮する.得意とする捜査手法がそれぞれ違うのがいい効果を生み出しているのだと思う.彼らのツッコミあいは読んでいて面白い.この3人はしばしば聖三位一体と称される.
ダルジールは直感を信じて突き進む.直感といっても,長年の経験と人間理解の賜物であるように思う.それに,直感のほうにあわせるために証拠を捻じ曲げたりはしない.捜査の指針として「無罪が決まるまで有罪」と思っているだけ.もともとがっしりした体格だったところに脂肪をいたるところにつけた巨漢だが,太っているわりに敏捷である.相手が誰であってもかまわず,言いたいことを言い,やりたいことをやる.「近眼の神」.
パスコーは優しげな物腰の常識人だが,部下の中には「パスコーが冷静で理性的なとき,怒り狂うダルジールより怖いと思うときがある」という者もいる.彼の場合は証拠をある程度集めた段階で仮説が飛躍する.もっとも探偵らしいかもしれない.3人の中で一番踏んだりけったりな羽目に陥ることが多いように思う(作者の陰謀?).修行が足りんな,パスコー君.たまに,ダルジールに「若大将」と呼ばれている.ぴったりの呼び名だ.
ウィールドは完全に証拠積み上げ型.一度見たり聞いたりしたことは忘れない脅威の記憶力を持ち,書類の処理能力も傑出している.3人の中で一番身体能力が発達しているのは日ごろから鍛えているウィールドではなかろうか.パスコーより少し年上で,その面構えは作者が「醜い」の形容詞をこれでもかこれでもかと集めているほどごつく,親しい人間でないと表情を読むことは難しい.ウィールド自身があまり感情を表に出さない性癖であることが表情の読みにくさに拍車をかけている.私はなんとなく「大番頭」という印象を受けている(なぜ番頭?).
シリーズを通して出てくる人物も多く,「ダルジールもの」というよりもヒルが書いているのは群像劇で,「ヒルの描く中部ヨークシャー世界」にダルジールが神として君臨しているのだと思う.順番に読んで行くと,各人の関係変化・成長も楽しめる.
《ダルジール シリーズ 作品リスト》
- HPB(1389)『社交好きの女』(原題 A Clubbable Woman)1970
被害者よりも銃を握っていた人物のほうが衝撃が大きかったのではないだろうか.死に様を想像すると,空恐ろしくなってしまう.
- HPB(1356)『殺人のすすめ』(原題 An Advancement of Learning)1971
どっちがより薄汚い人間だろうと考え込んでしまいました.まったくもって・・・.性格からだろうけど口を割らなかった先生に好意を覚えます.捜査が難航する原因になったけど.
- HM(200)-2『秘められた感情』(原題 Ruling Passion)1973
事件の被害者はパスコーの友人たち.パスコーが日時計のそばで死んでいた友人ローズの遺体を抱えていた場面が強く印象に残った.あと,エリー・ソーバーの台詞も.
「悲しみって,ほんとに利己的な感情ね」
そんな理由で殺されなければなかったのか,そんな理由で殺したのか,とやりきれなかった.
- HM(200)-3『四月の屍衣』(原題 An April Shroud)1975
- A Pinch of Snuff 1978
- HM(200)-4『パスコーの幽霊』「ダルジール警視と四つの謎」収録(原題 Pascoe's Ghost 「Asking for the Moon」収録)1979
- HM(200)-4『ダルジールの幽霊』「ダルジール警視と四つの謎」収録(原題 Dalziel's Ghost 「Asking for the Moon」収録)1979
- A Killing Kindness 1980
- HPB(1459)『薔薇は死を夢見る』(原題 Deadheads)1983
実はですね,『武器と女たち』を先に呼んでいたので,アルダーマン夫妻に関しては割りと安心して読んでいたんですよ.そしたら最後の最後に「うわーうわー」となりました.いや,びびった.ところで,ウィールドってほんとに男に弱いね.
- HPB(1508)『死にぎわの台詞』(原題 Exit Lines)1984
老境にある人たちに降りかかった殺人なのだけど,やりきれなくってさ,可哀相でさ.とくにトマス・パリンダー氏殺人事件が.チャールズワースという馬券屋が出てきますが,シーモアをなんとなく気に入ってしまうこの人が憎めません.好きな場面はウィールドが3ポンドでキジを2羽せしめるところ.しかも,相手があのダルジールなのだから.やるな,ウィールド.
- HPB(1536)『子供の悪戯』(原題 Child's Play)1987
ウィールドが可哀相な話.その一方でダルジールの暗躍振りが素晴らしい.弁護士のイーデン・サッカレー氏の老獪ぶりも好きだ.あ,もう1人,レキシーも.最初の印象を裏切って,見事な働き.一つ心に残っている台詞.
「すばらしいことだよね,きっと……歳を取るのは.つまりさ,何をしたら一番いいとか,どうやればいいのかとか,いつも頭を悩ましてなくていいぐらい歳をとるのは」
私も早くそうなりたい.
- HPB(1565)『闇の淵』(原題 Under World)1988
私はこのシリーズ,この話を最初に読んだのだが,シリーズキャラクターよりもコリン・ファーの方に鮮明な印象を受けた.魅力的にも振舞えるが,反抗的でわがまま,どうしようもない閉塞感に鬱屈している,そんな人物.終盤,闇の中でパスコーがカセットを聞いている場面,なぜだか不安でたまらなかった.
- HPB(1585),HM(200)-1『骨と沈黙』(原題 Bones and Silence)1990
- HM(200)-4『小さな一歩』「ダルジール警視と四つの謎」収録(原題 One Small Step「Asking for the Moon」収録)1990
- HPB(1648)『甦った女』(原題 Recalled to Life)1992
- HPB(1664)『完璧な絵画』(原題 Pictures of Perfection)1994
会う人,会う人,銃を向け発砲する覆面の男.血だらけになるエンスクームの村.凶行に気づいて逃げ惑う人々.男に向かってくるのはダルジール・パスコー・ウィールドの3人だけ.男の銃口が3人に向けられる.残り弾は1発.男は標的を決め――引き金を引く…
という書き出しの後,それにいたる2日前から話は始まる.
シリーズの中で1番好きだな,この話.エンスクームの人々は一癖も二癖もあって.エンスクーム効果(ウィールド命名)に侵されつつあるウィールドの活躍を見よ!
ダルジールでさえ煙に巻かれている.
- HM(200)-4『最後の徴収兵』「ダルジール警視と四つの謎」収録(原題 The Last National Serviceman「Asking for the Moon」収録)1994
いかにしてパスコーはダルジールに鍛えられることに相成ったのかが語られます.私,パスコーの何が好きって,怖いときに怖いと思って行動できることが好きです.
- 『雪はくぼんでいた』光文社文庫「最低の犯罪―英米短編ミステリー名人選集〈8〉」収録(原題 Where the Snow Lay Dinted「The Orion Book of Murder」収録)1995
可愛いんですよ,ロージーが.ロージーにかかるとアンディおじさん(=ダルジール)も形無しですね.この話を読んで,自分も試してみたくなりました.ほんとにこんなふうになるのかな.雪,降らないかなぁ.
- HPB(1667)『幻の森』(原題 The Wood Beyond)1996
祖母エイダの葬儀から端を発した曽祖父を巡る謎にのめりこんでいくパスコー.一方,製薬会社の敷地で見つかった古い人骨.捜査を進めるうちに2つの謎が奇妙におり合わさって行く.
なんか,ものすごい偶然だなあと思った.でも,奇妙な二重奏を奏でるピーター・パスコー(曽祖父のほう)の手記がかわいそうでかわいそうで.最後に老人の登場で古い時代がにわかに立ち上がってきて,そこへもってきて衝撃の告白.実は名前が入り混じっちゃって人物関係がよく分からなくなったんだけど,びびったのは確か.
ウィールドは田舎暮らしを満喫しているようです.かなり円満な感じになったなあと思う.もともとはこういう性格だったのだけど,一生懸命,無感動に過ごしてきたのかもしれないなあ.
恋人入手した警官1.(窃盗により)猿を入手した警官.
- HPB(1690)『ベウラの頂』(原題 On Beulah Height)1998
15年前ダルジールやウィールドがかかわって解決できなかった少女失踪事件.事件の起きた村の住人の大半が移り住んだ場所で再び少女が失踪する.
捜査を始めて早々,パスコーの娘ロージーが髄膜炎で入院.これを聞いたときのダルジールの「そんなことは,この俺が許さん!」という台詞がとても好きだ.また,病院でのウィールドとパスコーのやりとりにウィールドの優しさが出ていると思う.
事件の真相が明かされたとき,ずっと物語を通して犯人が暗示されていたんだと,おもわず前を読み返した.挿入話が事件に深くかかわっている.沈黙を保つことも,親しい人を告発することも,ものすごい重荷だったに違いない.
- HMM '99.12『クリスマスのキャンドル』(原題 A Candle for Christmas「EQMM Jan 2000」収録)1999
- HPB(1710)『武器と女たち』(原題 Arms and the Women)2000
副題にエリー遍歴記とあるように,中心はエリー・パスコー.パスコー家の周りでなぜか不穏な動きが…という導入から女たちの戦いになる.
うーん,エリーも登場する活動家も女性刑事ノヴェロも私は苦手.でも,最後の最後でおいしいところを取って行く,2人の女性が好き.特に『シビルの書』を書き綴っている女性の行動の不可解さを理解したいなと思う.
- HPB(1738)『死者との対話』(原題 Dialogues of the Dead)2001
- HPB(1761)『死の笑話集』(原題Death's Jest-Book)2002
- Good Morning, Midnight 2004
- 夜明けのフロスト(光文社文庫.クリスマスにちなんだ作家ごたまぜのアンソロジーで,ダルジール物の『お宝の猿』が含まれている)
今日も今日とて土曜出勤~.人が来ないから仕事がはかどるぜ,こんちくしょう!