送り雛は瑠璃色の(思緒雄二)

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送り雛は瑠璃色の

その昔,『ウォーロック』というそれはもう薄っぺらい大判の雑誌があった.TRPG情報誌,なのかな.当時,購読していた.

この雑誌の中で,しばしば話題になるゲームブック,それが『送り雛は瑠璃色の』だった.私はそれをやったことがなかった.でも,題名の叙情の含んだ透明さは頭について離れず,以降,「送り」とか「送る」とかいう言葉を聞くたびに思い出すのはこの題名だった.

ふと,そんなことを思い出し,「結局のところ,アレはどういう類のゲームブックだったのだろう」とインターネットで検索をかけてみて――復刊しているのを知る.

興奮の末,あちこちの本屋で探した挙句,見つからないのでAmazonに注文.

やりはじめてしばらくは,ティーンズ向けと思しき(主人公がそういう年齢だし)軽い文章が続き,失敗したかと思ったのだが,読み進むと,だんだん変わってきた.この短いゲームブックはゲームブックといってしまうのを躊躇われるようなものだった.

日常が若干の綻びを見せ,そして,立ち現れる,今は無き,伝承,伝統.それがほとんど投げ出されるようにそっと置き去りにされている.そう,取り残されるように,置き去りにされている.一度話が終わったあと,全体で何が起きているのかが知りたくて,選択肢を全部読まずに居られなかった.そして,全部読んでさえ,理解は読者に委ねられている.模範解答はあるものの,確固とした答えは無い.瑠璃色の何かを見て,なにをかを感じ取ればそれでいいのだと思う.

同時収録の『夢草枕、歌枕』は,最初の解説のとおり,占いとして試すと面白いと思う.これも,一つ一つのパラグラフを非常に短い幻想譚として楽しむことができる.これも思わず全て読んでしまった.

『送り雛は瑠璃色の』は1990年発刊の社会思想社版では『顔の無い村』という作品が収録されていたそうなのだが,この創土社版にはない.残念に思っていたのだが,ふと創土社のページの刊行予定ゲームノベルを見ると,ある,『顔の無い村』がある!

とても楽しみにしている.

2004/2/25 読書開始 - 2004/4月上旬 読了

日時: 2004年7月20日 | 感想 > 本 |

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