予てからの懸案事項,夢野久作の『ドグラ・マグラ』をとうとう読みました.
これから読む諸氏に告ぐ.とりあえず,半分読めーーー!いや,半分まで行って,下巻に入ったぐらいにやっと面白くなったので.それまで,事件は何なのか自体が分からないのだ.
まあ,一寸,落ち着いて.
『ドグラ・マグラ』というと,エログロの極致みたいな紹介のされ方をしていることが多いのだけど,むしろ,整然としている.整然と理論立っている.でも,狂っている.頭のいい人の狂い方だと思うんだよ.
構造が分かりにくいという話も聞くんだけど,構造は単に入れ子になっているだけで,そう分かりにくいものでもない.むしろ,分からないのは,語られる情報のうち何が真実かという部分なのだ.
事件としては,大きく3つだ.発端たる呉一郎の事件,遠因たる呉青秀の物語,そして九大医学部の事件.
このうち,どれが一番重要かと言えば,九大医学部内部の静かな闘争だろう.これがなければ,呉一郎の事件は起き得ないし,呉青秀の話だって,単に話にドロリとした味付けをする挿話でしかない.
そしてまた,最も真相が分からないのも正木教授・若林教授(もっと言えば斉藤教授も)の意図・真実だ.だからこそ,この教授たちの動向が私には興味深かった.
そして,この堂々巡りは続くのか?真実,彼は呉一郎なのか?
この話に手をつけたなら,2回は読むべきだと思う.
2004/8/3 読書開始 - 2004/8/16 読了