山椒魚戦争(カレル・チャペック)

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山椒魚戦争
岩波文庫

かの有名なSFの古典『山椒魚戦争』.前から気になっていたのだが,やっと手を出した.コレ,カレル・チャペックの作品だったのですね.全然知らなかった.

『山椒魚戦争』なんて題名なもんだから,なんとなくアクションバリバリなのかと思っていたが,さにあらず.どちらかと言えば,ルポルタージュのような作品で,いろいろな語り手や新聞記事やプロパガンダを交えた作りになっている.訳者のはしがきでこの構成ゆえに読みにくいと書いているが,特に読みにくいとも思わなかった.

「山椒魚VS人間」という構図を思い浮かべていたのだが,どちらかと言えば,「山椒魚を巡る戦争」である.結局のところ,人同士の戦争なのだ.山椒魚自身はどう考えていたのだろう?案外,悲劇は山椒魚の上にこそもたらされているのでは無かろうか?

作者は,行きすぎた科学が何をもたらすかという憂いを込めているんだと思うんだけど,私はそういうところには共感を覚えない.「行きすぎた科学」なんて物はない.だって,まだまだ科学にはできないことが多いし,解明されぬ謎はあとからあとから止め処なく出てくる物だから.そりゃあ,無条件に無邪気に輝かしい未来をもたらすとも思わないけれど,それは科学が悪いのではないだろう.

いずれにせよ,一度読んでみてうーんと唸ってみる価値のある作品だと思う.

本編とは関係ないけれど,訳者の人がエスペランティテトで,「エスペラント万歳」な主張がはしがき・訳注・解説でさんざん出てきて,勘弁してくれ,と思った.かくいう私は,エスペラント語には割と否定的で,己の思うところの機微を表現するに最も相応しいのは各人の母国語だろうし,母国語を異にする人との意思疎通は最も流通する言語(今なら英語か?コレは,地方事情にも依るだろう)でたくさんだと思っている.

2005/3 読書開始 - 読了

日時: 2005年4月17日 | 感想 > 本 |

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