13時も過ぎてしまったので,おなかが空いて仕方がありません.でも,大覚寺あたりには店などほとんどありません.来る時に通り過ぎてきた天龍寺辺りには店がけっこうあったので,そこまでがまんがまん.
次は大河内山荘に行くつもりだったので,13:22発の28番のバスに飛び乗って野々宮まで戻ります.
前の夜に友人のtoschより電話があって,この周りには湯豆腐屋がいっぱいあるようだと聞いていたので,それを食べようかなあと思ったのですが,なぜか食べていたのは竹之家というお店のゆばステーキでした(注:湯豆腐もある).1680円.値段の割にあまりに上品な量で涙がちょちょぎれそうでした.
元気を出して,いざ,大河内山荘に向かって歩き出します.バス停から西へと入る道を歩き出してすぐ,竹林です.いやがおうにもワクワク感が募ります.きっと,伝次郎さんもこの道に入っていって,竹林を歩いていくと世俗から離れていくような気分になったに違いありません.それが別荘に行く時の大事な儀式だったんじゃないかと.今でこそ一般公開されている観光地ですが,昔はきっと行き交う人もいなかっただろうし.
途中には野宮神社というところがあります.ここの鳥居は木の皮を剥かない黒い鳥居です.この鳥居,取り替えなければならなかったのに,木を手に入れられなくて困っていたところ,日本興業株式会社という香川の会社が奉納してくれたのだという看板がありました.いい話やなあ,とホロリ.
それからまた歩いて行きまして,いよいよ大河内山荘です.
ここは何年か前(何年も前かもしれない)に友人NKが「大河内伝次郎が資金注ぎ込んで作った庭園があるんだ」と熱っぽく言っていたので,行ってみたくなったところです.
入場料1000円.抹茶付き.
人が少なくて,天気が良くて,そりゃもう最高でした.それに,ちょぼちょぼとゆっくり座れるところがあります.ボーッとするのにお誂え向き.なんていいところだろう.
大河内伝次郎氏がここを作り出したのは34歳の時だそうです.うわ,渋い.いくら時代劇スターだからって渋いよ.以来,亡くなるまでの30年間,この庭園に注ぎ込んだのだそうです.
ちょうど裏にあたる辺りに出て山を眺めていると,後からおばさんが出てきて,気持ちよさそうに息をつきました.
「あ~,いいところやなあ.なあ?」
「そうですね.紅葉だったらもっとすごかったでしょうね」
「そうやなあ.いつ頃かな.10月?11月?」
「10月下旬ですかね」
「大山(だいせん)もいいところですよ.来てください」
「どちらから?」
「鳥取」
という会話を交わした後,僅かの間,同道.
この鳥取の方,園芸が好きらしく,「こんな枝は取らんとダメなんやけどな」などといいながらブチブチ枝をちぎるのでハラハラしました.
- 鳥取の人
- 植物は詳しい?
- Sousui
- いえ.鳥の方が......
- 鳥取の人
- そう.鳥なあ.
植物の名前はさっぱり分からんのです.以前,toschと北大内を歩いていた時にしばらく会話を交わした後で「鳥は分かるんだね」と言われた人間です.
そのまま一緒に抹茶をいただきます.
- 鳥取の人
- 一人?
- Sousui
- はい.
- 鳥取の人
- 私はバスツアーで来たんやけどな,みんな「ひばり館」行く言うてたんやけど,「ひばり,ええわ」と思って.
- Sousui
- (笑いながら)ひばりはいいですか.
- 鳥取の人
- で,タクシーでこっちに来たんや.後で怒られるな.――すぐ帰るの?
- Sousui
- そのつもりです.(もう15時過ぎちゃったし,閉まるのどこでも17時頃だからこれからまたどっか行くのは無理だろう)
- 鳥取の人
- そう.私はもうちょっとどっか廻るわ.
- Sousui
- この辺りだと,なんとかというお寺(=天龍寺の名前が出てこなかった)が有名らしいですよ.
- 鳥取の人
- ふうん.
- Sousui
- 足利尊氏が後醍醐天皇の......
- 鳥取の人
- (はてなが飛んでいるという顔をしている)
- Sousui
- ほら,建武の新政をした......
- 鳥取の人
- (遮るように)歴史好きなんやな.
Sousui,説明を諦める.
- 鳥取の人
- 備前もいいところやで.備前焼な.
- Sousui
- ああ,備前は刀を見に行ってしまいました.
- 鳥取の人
- なんか,若い人にしては趣味変わっとるなあ.(断言)
いや,でも,備前焼が好きと言い出すのも若い人の趣味としてはどうよと思うよ?
この後,ちんたら抹茶を啜っているSousuiを置いて鳥取のおばさんは行ってしまいました.
隣に座っていたあんちゃんが近くのおばさんに「お菓子食べてるところを写してください」と言っていたのが楽しかった.そういう写真の方が旅の写真としては面白いよね,きっと.(私は自分が写っている写真というのは身震いするからいやだが)
ええかげん疲れてもいたので,無理せず帰ることにし,野々宮のバス停まで戻りまして,噂の「よーじやカフェ」で「ほうじ茶プリン」というのを食べたのですが,上に乗っていた甘い豆で胸が悪くなりました.(甘い豆嫌い.頼む前に気づけ,と自分でも思った.昨日のゼンザイといい,これといい)