長いお別れ(レイモンド・チャンドラー)

レイモンド・チャンドラー/清水俊二訳/ハヤカワミステリ文庫

2007年3月.出張で東京に行き,神田の三省堂にブラッと立ち寄ったら,1階入り口正面に『ロング・グッドバイ』が積み上げられていた.言わずとしれたチャンドラーの名作『Long God-by』を村上春樹氏が新訳したのだそうだ.それを見ながら,そういえば随分前,学生時代の終わりに文庫もらったっけと思い出した.

それで,家に帰ってきてボツボツと読み出した.

いい文章が散らばっているのは確かなのだが,しばしば分かりづらい.マーロウが何度か皮肉を言うのだが,言われた相手だけでなく私も分からなくて,自分が言われたみたいにイライラした.

多分,この印象は私がマーロウが嫌いなことに起因する.

この人,身勝手で優しくないなあと思ったことに起因する.

と言うのは,最後の場面なのだ.最後にマーロウの前に現れる人物,それが私には嬉しかった.でも,マーロウは喜んでいない.彼の中では奇麗な別れが終わった後で,もう会うべき存在ではなかったのだ.彼の中では既に勝手な偶像ができあがっていて,それから外れたことが許せないのだろうと思うのだ.

だから,『長いお別れ』という題の意味を知ると共に,一抹の苦さ(私にとってはどちらかと言えば悲しさだった)が禁じ得なかった.

長いお別れ

2007/3/20 読書開始 - 4/30 読了

日時: 2007年5月13日 | 感想 > 本 |

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