カフカ寓話集(フランツ・カフカ)

カフカは『変身』しか読んだことがなくて,『変身』にはずいぶん空恐ろしい気分にさせられた(あれの空恐ろしさというか悲しさというのは,グレゴールの家族が結局のところ不幸ではなかったことではなかろうか).だので,カフカは「物寂しい灰色の混じった青」というイメージがあった.

ところが,この『カフカ寓話集』を読んで,「この人,実は面白い人だったんじゃねえか?」と思い直したのである.そうだなあ,ユーモアたっぷりで面白可笑しいってんじゃないんだけど,大真面目に変なこと考えてそうなんだよなあ.「こういう状況とこういう人物を配したら,物語はどこに向かうんだろう」という実験を繰り返していたんじゃないだろうか.案外,書いてみて,「ああ,こうなったか」と思ってたかもしれない.

『カフカ寓話集』とはあるんだけど,これは勝手に訳者が付けただけで,特に「寓話」というわけではない.物語の断片が多く,草稿や覚書の類が多い.それだけに,わずか数ページや1ページ足らずのものもあって,すんなり読める.

収録作品

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日時: 2008年9月23日 | 感想 > 本 |

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