江戸東京博物館で手塚治虫展をやると言うことは2月に知って,4月~6月までやってるんだから1回ぐらいは東京に行くだろうとのほほんと構えていたら,確かに東京には行ったけれど,飛行機乗り継ぎだけの素通りだけだった,という.
正直,どうしようかなあとも思ったのだが,煮詰まっていたのと,それに伴う症状なのか目の調子やおかしくてかなわなかったのとで,ちょっくら休みを取るか,と上京してみた.
手塚治虫氏の漫画は小学生の時にそこそこ読んだ.吉祥寺にいたときだったか杉並にいたときだったか,ともかく図書館に全集が並んでいて,借りていくことはなぜかしなかったけど,ずいぶんその場で読んだのだ.『ブラック・ジャック』『アトム』はもちろん,『ノーマン』とか『どろろ』とか『ドン・ドラキュラ』とか.印象はですね,寂しいなあ,怖いなあってのが大きかったな.コミカルな場面は有るんだけど,なんだか根底が暗くって,でも先は読みたくなるというというそんな印象.
基本的には丸みを帯びた絵で,かわいらしいと言えばかわいらしいんだろうな.最近突然,ああ,この人は絵がうまいんだ,と思うようになって,いや,それまでだって別に下手だと思っていた訳じゃないけど,どちらかというと物語の作りの方が惹かれる物があったから,私は絵は二の次だった.ただ,どれだったかな,ブラック・ジャックだろうか,ともかくカラーの絵を見たときにグイグイと書いているのにしっかりと人の造形していて,ああ,うまいなあと目が覚めたというか.
それで,展示を見に行く気になったのだ.
子供の頃からのノートとか,愛用品とかが並んでいた.小学生だか中学生だかの頃のスケッチがあって,それはもう子供が描いたと思えないほどだった.
仕事机があった.
ほんと,なんでもない,昔の会社に並んでいたようなスチールの机なの.この遺品がそのまま残されていること,それが価値を持っていることは,座った人間のせいなのだと思うと,とても不思議な気がした.
ものすごく気に入った展示品があって,それはスター名鑑である.と言っても,手塚治虫氏の生み出したキャラクターの.スター・システムというのは手塚治虫氏のことをちょっと知っていれば知っているだろうけれど,ちゃんと名鑑にしていて,主役級,脇役の別やギャラの表などが書いてあって,それぞれの紹介にはアセチレン・ランプ:ロストワールドで圧倒的絶賛を拍し,以来PPPのドル箱になっている
などと説明書きがあるのだ.初期の頃だけらしいけど,後の方のキャラクターまで記載されていたとしたら,どんな名鑑になっていただろう.本当に自分の生み出したキャラクターが好きだったんだろうなあ.
群青君と一緒に行ったんだが,「とりあえず,全部読みたくなった」と言っていて,なんだかとても嬉しくなった.