三船さん,暴れすぎだよ三船さん.
あ,ちょうど五七五になった.
黒澤映画特集 in Stanford Theatre, Palo Alto, California, USA第2作目です.
この映画,観たと思ってたけど,どうも観ていなかったらしい.有名だからTVでやるときの紹介CMだけは何度も見ていて,観たと思い込んでいたらしい.縛られた多襄丸には見覚えがあったから.
それで,まあ,冒頭の通り,多襄丸がやりすぎ.と言っても,やり過ぎに見えるのは,お白州(この時代も白州っていうのだろうか?白い砂が敷いてあって,白州にしか見えなかったけど)で筵に座っているときと,自分の証言の時だけだったかな.女の証言の時は調子のいい男に見え,武士の証言の時はある程度の倫理観(とまで言えば言い過ぎか)を持っているように見え,杣売りの話では情けない.そうだ,ほっとんど半裸で着てる物もいい物じゃなくて,粗野で野卑なのに,にやりと笑ったときの表情がなんとも憎めない感じがしたなあ.
皆が皆それぞれの証言で違った感じがするんだよなあ.一番印象に残っているのは,女の証言の時の武士の目つき.あれは嫌だわ,確かに.「蔑む」ってこういうことかと思わず納得してしまうあんな視線は.
印象の違いで言えば,女が一番すごいかもしれない.そりゃ腕力はないけど気迫だったり情念だったりかと思えば泣き崩れるだけに見えたり.女って恐ろしいね.
考えてみると,奇妙なことに,皆が皆自分がやったと言っている.皆が自分を繕っているのだとすると,興味ぐらい繕い方じゃないか.
Stanford Theatreで作った紹介文で,この映画は「added "Rashomon-type story" to the vocabulary」と書いてあって,日本ではこの映画の原作の『藪の中』がそういう意味を持っている(あ,むしろ日本じゃ「迷宮入り」って意味か)から面白かった.
ややこしいことに映画『羅生門』の主たる原作は芥川龍之介の『藪の中』のほうなんだよね.『羅生門』はストーリーを彩る雰囲気ぐらいかな.
私はどちらも読んでいたのだが,映画を観た後もう一度読みたくなって,読み直してみた.
それで.
武士の小刀を抜いたのは誰かと思ったとき.
空恐ろしくなってしまった.
この証言は映画でも言っている.だからだから,映画ラストで旅法師は「救われた」と言うけれども.
あるいは.
或いは......