黒澤映画特集 in Stanford Theatre, Palo Alto, California, USAですが,劇場以外にも部屋があって,そこで関連資料やシアターがらみの展示がありまして,どっか東欧版のポスターがあったり,『羅生門』受賞のチラシ?があったりしました.これ観ると,『羅生門』はあの平安女性のエキゾチックさもポイントだったみたいです.(イラストが入っている)
んでね,気になったのこれ.
シャーリー・テンプルが描いてあったから展示してあったんだと思う.でも,私の目は右側に釘付けだ.ちょっと読んでみよう.
萬一貴下のヘアーラインが後退し始めたら、一刻も猶豫なくヨウモットニックを振りかけられよ。病的のフケ、抜毛を止め毛根を彊めて生毛力を促進し、初期特等に好轉期を與へん。
ごめん,これ読んで笑いを堪えられなかった.日本語読めんもんなあ.しかし,昔も今も悩みは同じか.
いやいや,まあ本題に入りましょう.黒澤映画特集,第9作目『影武者』です.
本当は17日から19日にかけてやっていた『悪い奴ほどよく眠る The Bad Sleep Well』と『蜘蛛巣城 Throne of Blood』も見たかったんだけど,ちょうどニューオリンズでやってた会議に出ることになっていて,しかもその会議,自ら出たいと頼んだものだったから,断念せざるを得なかった.おおう,申し込んだ昨年末にはこんな黒澤祭り状態になるなんて夢にも思ってなかったからなあ.
それで,この『影武者』と同時上映の『椿三十郎』も無理矢理観たんですよ.世話になっている会社の人にほとんどの荷物を預けてニューオリンズに行き,預けた相手に荷物をパロアルトの駅に持ってきてくれと頼み,挙げ句に劇場まで送ってもらってようやっと間に合いましたわ.
でも,こんなに急いでいったのに,開場遅れてた.
大荷物持って並んでたもんだから後ろのおじさんに「どうしたの?」と言われ,明日日本に帰るんだと答えたら,そのおじさん「それはいいねえ」と言った後,劇場の常連さんなのか,荷物置くのにいい場所があるよと舞台の袖みたいところを教えてくれました.
それで,やれやれと思ってトイレに行ったら,そのすきに映画始まってた.なんてこったい.おかげで最初を観ていない.気づいたら影武者になる下郎が信玄に合わせられてる場面だった.だからか知らないけど,なんでこの人がこんなに信玄のために影武者になる気になったのかがどうも分からなかった.
信玄があっけなく死んじゃうんですよ.本当にあっけなく.思いつきで行動した結果がこうだ.
そんで紆余曲直あって,影武者がうまいところやばい場面を乗り越えて,孫ともすんごく仲良くなって,まるで本物のような迫力を身につけたところで,プツリと切れるように襤褸が出ちゃうんですよ.どうして女性たちを口止めできなかったのか,たとえば限られた者にだけ厳命しておくんじゃだめだったのか,と観ていて思ったんですが.
剽悍な武田軍を観ているだけに長篠の戦いが悲しくって哀しくってならなかった.だって,馬鹿だよ.総大将になった勝頼の駄目っぷり.もうわがままな子供が意地になって打ち振るってるだけなんだもん.大将たちはもう駄目だと思ってて,戦の前に別れを交わしてるんだけど,なんで勝頼に従って無謀に突撃しなくちゃならないのかと思うし,勝頼にしたって,武田軍の必勝パターンの説明からすると,最初の突撃が止められてる時点で止めて退却するべきじゃない.なのに,突撃だけ命じてさ.
この場面,哀れで観てられない.映像自体は綺麗なんだよ,色分けされた騎馬が突撃して.でもこの後に倒れ伏して身動きままならない人馬が映る長い長いシーケンスがある.本当に長くてもう止めてくれというほど長くて,その画面の中を馬が立つに立てずにもぞもぞと動いている.間を人が倒れている.
そして,勝敗が決して静かになってしまった戦場の傍らを流れる川を,影武者が軍旗をつかもうとして,つかめもせずに息絶えて,死骸は旗の横を流れていく.
鬱やわ-.
終わった後,斜め後ろに座っていた日本人らしき人が連れのアメリカ人になんで勝頼が信玄の後継げないの?と訊かれてしどろもどろに説明してた.
コメント (2)
勝新太郎の影武者も観たかったですね。
スケールのデカイ騎馬戦が黒澤らしいんですけど、黒い地面を走ってると、所々で真っ白な石灰の土ぼこりが……。
まだカラーの映画に慣れてなかったんでしょうか?
投稿者:まゆげ (2010年7月 6日 14:28)
私は仲代さんでベストじゃないかなと思っています.なんとなく哀愁と勝新が結びつかなくて.^_^;
騎馬戦の石灰は気づかなかったです.
騎馬戦も圧巻ですが,私はそれよりも広い空間に倒れ伏す人馬の方が印象に残っています.
投稿者:Sousui (2010年7月18日 14:09)