赤間さんが可哀想すぎる.
おまえらなあ,赤間さん強靱だと思って当事者なんに無視するからだ!
いやー,可哀想な人ばっかりですよ.人ばっかりですけど,特に赤間さんが可哀想に思うのは,一番健全そうだったし,少なくとも描かれている様子では一番まともな言動だったからだと思う.妙子とか角田とかはいかにも破滅に向かってますって感じだから,そうかー可哀想だなあーぐらいだったんだけど.
あとね,赤間ってすごくいい人なんだよね.そりゃ乱暴でやくざ者なんかもしれないし,100万持ってきたときは必死何は分かるけど分かってねえなあって気がする.ただ,冒頭でなんでか角田の面倒みちまうところからして悪い奴じゃない.いや,一番心打たれたのは,母親の部屋に行ったときなんだよ.もう呆けちゃってて,「もう何にも分かりゃしねえんだ」と言うんだけどね,それでも「お茶入れてくれよ」と言いながらニコニコと眺めてるし,お供え下ろしてきて「喜ぶから食ってくれ」と自分も一緒に食べてる.翻って我が身を省みるに,私は何をやってるんだろうと泣きそうだった.
ヒロイン(?)那須妙子を演じているのが原節子さんなんですがね,この人本気で綺麗だねえ.豪奢な毛皮に身を包み,愁いを含みつつ夢を見つつ厳しく冷めたような視線を見せる目元.登場時の周りを小馬鹿にしたかのような態度の後に,角田の言動に接して,「許してくださる?」と香山家の人たちに言うところが一番好きだな.
那須妙子というんで,どうせ原作(あ,ドストエフスキーの『白痴』です,原作)でナスターシャとでも言うんだろうと思っていたら,本気でナスターシャだったので笑った.
そうそう,那須妙子がさんざん角田への感謝と尊敬を述べた後に,赤間を選ぶ場面があるんだけど,「ロシア人なら,女は好きでない方の男と結婚して3人で不幸を嘆く」というジョークを思い出して,ツッコミを入れかけた.(映画館で声出してツッコむのはやめよう)
あと,この映画を観て突然千秋実さんがすごくでっかい人だということに気づいた.
この映画,観た物でも十分長いんだけど,本当はもっと長くて前後編だったのだそうだ.長い版観たかったよ.いちいち切ったと思われるところに字だけの黒い画面が出てきてがっかりだった.それに,長かったけど,さほど退屈ではなかったからさ.破局に向かうのが目に見えていて重苦しいけど.この映画のおもしろさというのはアクション的な物じゃないから,人は選ぶと思うけど.メロドラマなんだよね.TVの6回連続物的な感じ.
もし完全版の映像を観たとしたら上述した赤間への同情が違っていたかもしれないなあと思うのも観てみたい理由である.原作人物の獰猛性・暴力性が映像ではさほどには語られていなかったから.
本当に角田と赤間の関係は不可思議だ.第一義的には那須妙子を巡る三角関係なのかもしれないが,角田の性格からか赤間の面倒見の良さからか完全には敵対しない2人の人間関係が面白い.......ちゅうか,赤間角田間の関係描写(ラスト近く)は危ないよ,マジで.