浪人・三船敏郎,渡世人・石原裕次郎,謎の医者・勝新太郎,役人・中村錦之助という,なんなんですかその顔ぶれはという映画.
出だしからして,浪人が身分の高そうな謎の人物から不可解な仕事を引き受けるところから始まるのでワクワク感満載だ.ちゅうか,不可解すぎて「そんな曖昧な指令でええのん?」と思うほどだ.(笑)
何の因果か,とある茶店に訳のありそうな連中がみんな集まっちまうわけです.
浪人と弥太郎の殴り合いのところ,何か好きで,いや,ありがちな場面なんだけど,弥太郎が「なんなんでぇ」と思ってる目の前で浪人がゲラゲラ笑うところが好きなんですよ.たぶんですね,これの前に見た『素浪人罷り通る』の春夏秋冬が,大きく表情を変える人じゃなかったから嬉しかったんだと思う,うん.でも,弥太郎の出番が突然プツンと途切れた感じで,ファンでもないのに,えー,裕ちゃんにも見せ場作ってよーと思ったのは確か.
浪人さんがこの顔ぶれの中では一番まともでいい人だな.
浪人さん名前呼ばれてなかった(と思う)から名前付いてないのかと思ったら,ちゃんと鎬刀三郎という名前が付いていたことを後で知った.いいなあー,この名前.(私は刀好き)
玄哲はどう考えても酷い奴だろうと思うので,なんで浪人さんがその命を惜しむような言動だったのか興味深い.そりゃあ確かに辛酸をなめたのだろうなというのは分かるけど.
お雪がちゃきちゃきしていて好きだ.お雪がなんとか武器を確保しようとするところとか,浪人がうまいこと村の衆を祭の場へと返すところとか,どうやって捕まっちまった連中の安全を確保するのかとか,緊迫する場面がとてもいい.
兵馬は最初捕縛に四苦八苦している場面から入るのでいい人なのかと思ったら,すんげーやな奴でやな奴で,でも最後にね,ころっと可笑しみとともにちょっぴり感じが良くなる.「おくにに何か言ってやれ」ってとこが,いいんだ.でも,浪人はなんも言ってやんないけどね.いや,言ってやれないんだろうな,性格上.そこがこの人のどうしようもないところであり,好きなところなんだけど.
この映画,もったいないなあと思う.最初に引っ張った謎めいた部分を生かせたらもっと面白かったと思うんだよなあ.時代劇+ミステリーってな感じで.それはお前の趣味だろうと言われれば,そのとおりです.