姿三四郎

アメリカにいるときに東京・大阪で「黒澤明-生誕100周年記念 特別上映-」を知り,ちくしょー,また大都市だけかよ,行けないじゃねえかよ,巡回興行してくれー!!(魂の叫び)と思っていたのだが,大阪の上映期間はゴールデンウィークに掛かっている.うーん,行ける,行けんことはない,でも特急列車代とホテル代をかけてまで見に行くか?

迷いに迷って,一時は止めようかとも思い,結局,ロスに行ったときのように出立2日前えいやで手配して,行ってしまいましたとさ.なるべく短い期間に観たい物をできるだけ網羅するために上映スケジュールとにらめっこして,28日と30日に休みを取って,28日は5時起きだった.(大阪まで3時間半弱かかるんだよ)

道に迷ってあせりながらようやっと辿り着いた一発目は『七人の侍』だった.今回は最初から日本語が聞き取れたので,アメリカで分からなかったのは単純に音の問題なのだろうか?と首を捻った.見終わった後,となりのおっちゃんに「これ,昔はもっと長かったんだけどねえ」と言われて「もっと長いの?!長い版観たいよ!」と思いつつ,次の『姿三四郎』を待つ.

調べてみたんだが,たしかに『七人の侍』は短縮版があって,2時間半強ぐらいのと3時間超えのがあるらしい.だが,今回の上映は3時間25分.長い方のはずだ.

入れ替えだったのだが,となりのおっちゃん(さっきと違う人)に「この話,昔はいろんな俳優がやったもんだけどねえ」と話しかけられる.そうなんだよなー.題名だけは聞いたことあるもんなあ.

この映画,最初に注意書きが入るんだけど,検閲で15分切られて,そのフィルムは残っていないんだそうな.もったいない,ほんともったいない.だってね,その部分とおぼしきところが来るたびに字幕だけの説明書きが表示されて,その度に流れていた世界から醒めちゃうんだもん.黒澤さんの映画を観ていて思ったけれど,この人の生きた時代って戦前・戦後を意識せずにいられない.それは,映画にとって不遇の時代でもあり,また,その後に来る映画の全盛の時代でもあり,この大きな盛衰の起伏をこの時代の映画人は駆け抜けたんだなあと思う.

さて,この『姿三四郎』は黒澤監督の監督デビュー作である.

ただ,私は(おそらく)一番重要な蓮の花のシーンでちょっと冷めちゃって,さほど好きじゃないんですわ.黒澤映画に暗喩的なシーンが良く出てくるのはなんとなく気がついてきたんだけど,今回のはちょっとあからさまだったからかなあ.あ,いや,逆に暗喩に見えなくて直裁的だからなのかもしれない.大変美しいシーンなんだけどね.「理解するんじゃない,感じるんだ!」という感じが性急かつ強引に押しつけられたように思えて,感性が置いてけぼりを食ってしまった気がする.うん,まあ,全体的に展開がチャキチャキ性急すぎるよに感じるからだろうなあ.

試合のシーンはどんな特撮?!とチト思った.志村さんが人格者の柔道家やってんの,けっこう似合ってて,試合に負けた後に三四郎と親しくなるのも良かったけれど.

この映画は黒澤映画に珍しく続編があるけど,観ようという気にはならなかったなあ.

姿三四郎 [DVD]

日時: 2010年4月28日 | 感想 > TV/映画 |

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