座頭市と用心棒

題字が出てきたときに思い浮かんだ言葉はなぜか『ゴジラVSメカゴジラ』でした.いや,『座頭市』シリーズと『用心棒』は会社が違うからむしろ『ガメラVSゴジラ』なのかもしれない.

三十郎とはやっぱり性格が違うけれど,私はこの映画に出てくる用心棒の旦那もすんごく好きで,借りてきたDVDを思わず三回も観てしまった.ある意味一番正当な三十郎の血統を引いた(?)人物造形だと思う.人を食ってて,悪人ぶりがひどくて,いつも寝てるか酒飲んでるか.ただ,決定的に違うのが一人になったときに見せる仄暗さだ.梅乃さんの店のいつもの席で,看板になってからも一人飲んでいる彼はまるで何か苦い物を飲んでいるかのような顔をしている.その二面性がなんとも言えない.

もとから『座頭市』シリーズがあんまり好きではない(=血しぶき舞い散るイメージが強くて観られない)からかもしれないけれど,市より用心棒の旦那の方が格段に面白い人物造形だと思う.市を嬲ってゲラゲラ笑ってたり,政五郎の真似をして「しぇんしぇー」と言うところなんか最高だ.でもって市は......すまん,なんかこう手を取ってみたらじっとり湿っている感じというか,纏わり付く雰囲気がどうも私は苦手だ.

用心棒の旦那,ずーっと「用心棒」とか「先生」とか呼ばれていて名前出てこないから本名出てこないのかと思ったら,半分以上過ぎたところで突然名前が分かって(背景が分かって)びっくりした.

でもって,血で血を洗う抗争状態になるんですが,出入り状態のところよりも,親子三人がズルズルと地を這うようにして金の在処へと向かうところが音楽の効果もあって凄まじかった.これは用心棒の旦那でなくてもぎょっとするわ.そして,九頭竜が「俺は九頭竜だ!」と叫ぶところね.ここにも金に狂った人間が......って.用心棒の旦那はいろいろ画策したくせに,最後のところで踏みとどまった――というより踏み外せなかったんだな,と.

梅乃さんも私は好きで,「今夜泊まっていいか悪いか」から始まるシーケンスが一番好きだ.梅乃さんと旦那の出会いはどんなんだったろうなあ.このシーケンス,最初に観たときは「政五郎よりむしろ用心棒の旦那の方が主導権握って色々やらせてるみたいなのに,なんで斬らないのかなあ」と思い,「それでも頼りにされている義理ってものがあるのかなあ」と思ってたんだけど,最後まで見終わってから考えると違う側面が見える.この映画を思わず見直したのはそのせいで,立ち位置が見えてから見直すとなるほどなあと思うところがいくつかあったからだ.

えーとまとめると,「骨折り損のくたびれもうけ」って話だと思う.(意味不明だが間違ってもない)

座頭市と用心棒 [DVD]

日時: 2010年4月22日 | 感想 > TV/映画 |

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