三船さんの素浪人物がもっと見たいーとは思ったんですが,これはちと迷った.だって,何でか知らんけど主役格に五連発銃撃つ人おって,「外国の西部劇ドラマを時代劇として仕立てたような雰囲気」っちゅうんやもん.マジかい?!
そんで,おそるおそるDVD第1巻借りてきて(それでも観るんか)観てみたら.
え.いいの?一話目からこんな複雑な人間模様で?!
いや,主役三人組は別に複雑じゃないよ.でも,その回その回の登場人物とストーリーがなんとも深くて腹の内にシンと来る.かと思えば,始まって10分ぐらいで悪代官切り捨てて思わず「早すぎるだろう!」と叫んでしまった回とか,ともかく展開が読めん.それで,思わず,一気観してしまった.
確かにばんばん銃が出てくる辺りは西部劇なのかもしれん.代官所やら藩やらが,種子島何丁と揃えている.いや,そりゃまずいだろ取り潰しだろってぐらい持っている.この時代(文化年間)の時代劇でこんなにバンバン鉄砲撃ってるの初めて見た.
スタッフや脚本も「お?!」と思う人が関わっていて豪奢だ.
第1シリーズと第2シリーズ(第2シリーズDVDは『新・荒野の素浪人』という題名になっている)で雰囲気が違っている.私は割と楽しげな雰囲気の第1シリーズが好きだけど,見終わったあとに「うーん」と心ならずも唸ってしまうほどの話は第2シリーズに多い.語り草は第2シーズ第6話『影を斬る』.峠の旦那の台詞が1つっきゃない.でも,どんな人生歩んできたのかなあと想像を巡らせずに居られない.脚本は黒澤映画でも度々脚本やっている橋本忍氏でした.
でも,第2シリーズのDVDは途中までしかでてないんだよ.何その蛇の生殺し状態は!?一度出すと決めたなら全部出してくれ,DVD-BOX!買うから!もう買うから!
時代劇専門チャンネルでたまに最後まで放送しているらしい.もし次に放送してくれるとしたら,アンテナ買ってスカパーに加入してしまうかもしれん.
以下,登場人物所感.
峠九十郎(とうげ くじゅうろう:三船敏郎)
最初なんて読むのか分からなかった.他の二人より年上だしリーダー格なので,二人からは「峠の旦那」と呼ばれている.名乗るときは,「とうげのくじゅうろう」と言う具合に「の」が入る.
獲物は同田貫.だよねー.私はこの人の刀を納める様子がものすごく好きだ.血振るい必ずやるんだよね,この人.あと,いつもではないんだけどたいていは納めきったときに人差し指と中指が鍔に残っていて,それが好き.どの回か忘れちゃったけど,この血振るいから納刀の一連の動作がすんごく奇麗な回があって,何回も観てしまった.
そして,最終兵器ッぷりが半端無い.いや,どの時代劇だって主人公はそりゃまあたいてい多かれ少なかれ最終兵器だ.ただ,この人の場合,その印象が別格.他の時代劇だと別に「最終兵器」って言葉は浮かびもせずにすんなり殺陣を観てるんだけど,『荒野の素浪人』では物語最後の方で峠の旦那出て来ると,知らないうちに「最終兵器投入......」ってつぶやいてしまう.もう出てきたら相手が盗賊集団だろうが代官所の役人だろうが壊滅させるハカイダー.
まあ,他の二人に接近戦戦闘能力が無いに等しいからかもしれない.それに,『百人斬り 悪党の砦』って回のせいかもしれない.なんせ,本当に100人斬ってた.いや,もうマジでマジで.100回刀振るだけでだって大変だろうに,何回か弾かれてるからもっと振っているはず.斬殺音数えてたけど途中で分からなくなった.
基本的に堅物で,女性のあしらいは苦手.風呂に入っているときに混浴だったので女性が3人ほど入ってきたら出るに出られなくなってた.女性と手鎖で繋がれる羽目になったとき,他の二人に散々からかわれて,鎖取れたらおめぇらの顎外してやる!と怒っていた(本当にできそうで怖いが,二人は笑うばかりだ).
かと思えば次郎吉に珍しく頼み事して「頼んでんだよ!」と言ってるところなんかのように,時々妙な可愛げを見せてくれる.
あと,峠のおじちゃんは子供好きなので(普段仏頂面なのに惜しげもなく笑顔を振りまく),子供を虐めたら壊滅必至である.
鮎香之介(あゆ きょうのすけ:大出俊)
峠の旦那からは「五連発」.次郎吉からは「鮎の旦那」もしくは「五連発の旦那」.なぜなら得物が五連発銃だから.何故?ちなみに銃身は白い.
このところの三船フィーバーで古い映画見ては「うへぇ,この人若ぇ!」と叫んでいたもんですが,今回叫んだのはこの方でした.
基本は育ちの良さそうな感じの女たらしの優男っちゅう感じだけど,脚本家によって性格が若干違う.短絡的性格のように描写されてる回よりも,それなりに達観している感じの方が自分のイメージには合ってるなあ.
けっこう,敵方に雇われて出てくるが多いけど,峠の旦那を見かけると,あっさり無条件に寝返ってくれるから無問題.峠の旦那は金にならんことばかりしてるんだから,それに味方するこの人もたいがいお人好しだよなあ.
この人の中距離戦闘能力(いちおう,種子島より射程が短いと言っている回があるので「中距離」に分類する)は大変便利だが,接近戦能力は無いに等しい.得物が得物なので,5回撃ったら弾込めが必要だし,剣術については本人曰く「まんざらではない」らしいんだが,そもそもこの人の持ち歩いている刀は竹光だ.いちおう,自分一人だけなら切り抜けるぐらいはできるけど,誰か守りながらとか,多人数を全員切り倒せというのは無理で,たまにコロッと捕まって「面目ない」と出てきたりする.いちおう第2シリーズでは柔使ってることも多いけど,やっぱり「倒す」ってわけじゃないからね.
すっぽんの次郎吉(坂上二郎)
どじな泥棒ってとこか.得意技は死んだふり.
基本的に偵察役なので戦闘の役には立たない.よく考えてみると峠の旦那って好き勝手に偵察命じてるよなあ.コミックリリーフでよく峠の旦那に怒られていけど,九十郎もしぶるのを無理矢理偵察させてたりするんだからどっちもどっちか.
次郎吉が峠の旦那を怒らせて,鮎の旦那がそれを横から見て「またやったのか?」てな感じにチャチャ入れてるのがすごく好きだ.