読んだこと無かったよケルト英雄譚第2弾ということでフィン・マックールの話.サトクリフ版クーフリン本の横にあったので,ほくほくと借りてきた.
クーフーリンの話とは印象が違っていて,アーサー王伝説みたいだなあと思った.フィン・マックールがフィアンナ騎士団長になる話から連綿とその繁栄と死までなので,フィンにしても若い頃の話と年老いてからの話で印象が違う.ディアミッドがらみの話なんて「いや,お前が悪いだろう!」って感じだ.それから,クーフリンの話は始終戦いに満ちているんだけど,フィンの話は戦いはあるにしてもちょっと笑えるエピソードもある.「冒険譚」なんだなあ.ジラ・ダガーの話なんかは笑えた.わざわざ約束通りにやってきたダナンの人たちは偉い.
ディアミッドはものすごく可哀想だ.グラーニアってディアミッドに不幸しか運んできていない.ディアミッドがらみでは,最後まで親友で有り続けたオスカが好きだ.オスカはフィンの孫ってことになるのかな.ディアミッドをめぐってフィンとは若干不和になるのではあるが,それでも立派な騎士であり続けたオスカがとても気に入っている.
そうそう,私が一番印象的だったのは実はゴル・マックモーナ.エピソードはほとんど無いに等しいんだけど,本当言ったらフィンとは不倶戴天の敵同士でもおかしくないのに,結局彼は自分から騎士団長の座を奪ったフィンに対して終生忠実な騎士であり,フィンにしても自分の父を死に追いやって騎士団長を簒奪したゴルのことを頼みにしていたようだ.この関係が興味深い.それだけで話が一つできあがりそうだ.
フィン・マックールのエピソードの最後をしめるアシーンは考えてみると気の毒である.アシーンの話で示唆されるのは,上古の人間が力有る人々だと描かれている点である.時は下って人々は魔法も妖精も英雄も失い,今ある姿になったのだ,と.
2010/9/19 読書開始 - 9/25 読了