製本してみた
モニタじゃなくて紙で読みたい物があって,製本してみることにした.製本したかった理由というのは,テキストだけならプレーンテキストにしてZaurusで読めばよかったのだが,挿絵がとてもよかったからであり,じゃあモニタじゃダメだったのかというと量が大量だったために文字をすべてしっかり追うのが苦痛だったのだ.
お手本は主にBindUp.糸かがりの仕方はブッキストの製本講座が詳しい.
文庫サイズにしてみる.文庫はだいたいA6サイズだから,A5の紙に両面で刷って2つ折りにする.
紙は近くの文房具屋で安売りしていたA5の用紙.こいつは真っ白い紙である.あこがれはクリームキンマリだが,まあ,今回は中身を読みたいだけであって金をかけたくはないのでこだわらない.
組版はTeXを使用.スタイルにはトニイさん作「B6判・文庫本(A6判)スタイル」(転載してます)を使用していたのだが,黙々とソースを作成していたらページ数が400ページ超えだして,慌てて改修した.上下左右の余白を狭くしてポイントを8ptにしたのだが,ちょっと余白の削りようが勢いあまったらしく,上部の柱(上にあるのも柱っていうの?)がほんのちょっぴり欠けてしまった.結局,PDF印刷するときに用紙に合わせて縮小(だいたい95%ぐらいだった)する羽目になった.やはり,この本文作る作業が一番大変だった.もちろんソース作りも大変なのだが,16で割り切れるページ数にしつつ挿絵の位置を調整する作業が大変だった.TeXの特性上,ソース全部を処理してみないと全体のページ数が分からないのも大変だった理由ではある.
最終的な中綴じ用のPDFは,青空文庫を読もう!公開のperlスクリプトdvi2nakでdviを中綴じ両面印刷用にして,出来上がったdviをdvipdfmxでPDFにした.小口をカッターで切ることを考えると,カッター使いがへたくそな私には1折16ページが限界だと考えて,4枚まとめ(1枚に両面4ページずつ)である. 何回か組版を試行錯誤することになって面倒なので,
@echo off
perl dvi2nak -t -p a6 -c 4 xxxx.dvi
dvipdfmx -p a5 -l xxxx2up.dvi
というバッチファイルを作っておいた.
普通の並びの本文PDFでもAdobe Readerの印刷機能でも「ページの拡大/縮小」の設定を「小冊子の印刷」にすればできるのだろあうが,この場合,1折にしたいページ数ごとにプリントしなければいけない.量が膨大だと苦痛である.また,自動両面機能のないプリンタを使うと大変である.
一番楽なのは,自動両面機能があり,プリンタのドライバに小冊子にする設定がある物である.
今回使った紙の秤量は64kg/m2で薄いかなと思ったのだが,裏移りの具合は許せるか範囲.まあ,インクジェットプリンタを使ったので,挿絵のところは印刷直後はベコベコで裏移りも濃い.
ああ,そうそう,印刷してみて最近のインクジェットプリンタは素晴らしいなと思った.文字もよーくよーく見れば確かにドット感があるけれど,昔みたいないかにも滲んでますという文字ではなかった.ただ,それでういやつじゃと思っていると,謎にインクが変なところに付いて版面が汚れていたりする.両面にするために紙を裏返して通している以上仕方がないことなのか.とはいえ,最初の片面を印刷しているときも紙の端が黒く汚れるのが謎だった.もともとそういう物なのか,プリンタのツールにヘッダを奇麗にする操作というのがあった.
苦労の種はもう一つ.そう,自動両面印刷機能が付いていないことである.しょうがないので印刷指定でまず奇数ページのみ印刷して,その後に偶数ページを印刷することになる.紙の吸い込みは良い方だったのだが,やはり時々1度に2枚紙を吸っていたりするし,裏面を印刷するときは一度印刷している紙を通すので,さらに紙の吸いの精度が悪くなる.一度プリントがずれてしまうと,先に印刷したページもパーである.ずれに気づかなかったらさらに最悪である.それで300枚余りを印刷する間に30枚ダメにした.結局,偶数ページを印刷するときには1枚1枚手で刺した.どうせインクジェットプリンタで印刷すると紙はある程度乾かさなければならないから,悟りを開いたかのようにゆっくりゆっくり印刷していた.
さーて,本文ができたら楽しい製本のお時間である.
まず,寒冷紗を作ることにした.だって,寒冷紗なんて売ってないんだもん.粘着性包帯を使うといいという情報もあったのだが,大量に製本するわけでもなく,となると残った包帯をどうするんだと思ったので,手持ちのガーゼでなーんちゃって寒冷紗を作ることにする.
ガーゼにでんぷん糊を塗って乾かそうという魂胆である.最初,そのままの糊を付けていたのだが,伸ばしにくいし付け過ぎの気がしたので水で薄めた.
これを乾かしながらお次は本文の紙を折っていく.
この作業が一番好きだよ.失敗しようがないもんな.ちなみに,紙を折るときに「コップとか固い物でこすると奇麗に折れますよ」と教えてくれたのは東京勤務の頃の派遣さん.本当は円柱部分を使うんだったかもしれん.
次に小口が合うようにカッターで切っていく.紙なんて薄いもんだしたいしたもんじゃないだろうと思ってたけど,やっぱり折りを作ってみると結構ずれている.私がもっともうまくいかないだろうなと思っていた作業だったが,やはりうまくいかなかった.最初,古いカッターを使っていたら,切れが悪くてただでさえ苦難の作業が茨の道パワーアップである.いいかげん刃も短かったから替え刃入れようとしたらメーカーが違っているせいか刃が入らないし!予定外にカッターを買い換えたが,なんというかカッターよりも問題は差しかもしれん.安定感の良い滑り止めのある差しが重要であるということに気づいて,45cm差しに変更.ちょっとはマシになったが,うまくいったとは言い難い.
800ページ分ぐらい苦行の時間を過ごした後で,ディスクカッターなる物があることを知り,実戦投入.
なにコレ?!楽すぎる!今までの時間を返して!
投入したのは借りてきたカールのDC-210Nという製品なんだけど,蛍光黄色に着色されたアクリル板に合わせてカットしたい線を置いて固定し,刃が入っているハンドルを何の力も入れずに一往復させるだけでスイスイ切れる.厳密なサイズを出したい時は位置合わせに緊張しそうだけど,これみたいに「ある一定の大きさに揃える」という目的なら,1回位置合わせ用のバーの位置を決めたらあとは紙差し込んでサー,サーっとハンドル動かすだけ.ちなみに,ボール紙は1mmまでと書いてあった気がするんだけど,えいやで表紙用の2mm厚ボール紙を入れてみたら普通に切れた.(ちょっと往復数は多くなるが)
今度は本文を揃えて糸かがりのための目引きをしなければならない.
両側をクリップで留めているだけだと動きそうで心細い.万力でもあれば板と一緒に挟んでしっかり固定できるけど,そんなものは無い.それでどうしようかなあと思っていた時に,ます寿司の竹!と思い浮かんだ.いいアイディアだと思うと同時に,自分は心ゆくまで富山人だと思った瞬間.案の定,万力はないけどます寿司の竹は台所にあった.
誤解を招きそうなので注釈を付けておくけど,家でます寿司を作っているわけではない.単にます寿司を押さえている竹とゴムが,いかにも何かに使えそうな感じがするのでなんとなく取っておいてしまうのである.見たことがない人には意味不明かと思って画像探してみたら案外竹を外す前の写真がない.そりゃそうだよなあ,中身の方が重要だもんなあ.「鱒寿司の竹」という題名のエントリーを書いている人を発見.うんうん,やるんだよ,竹とんぼ.
閑話休題.
めびき,最初カッターで切れ目を入れてみたんだけど,どうもコレじゃ糸を通せなそうだと諦めた.うちには普通のノコギリしかなかったんだけど,しょうがない,糸のこ買いに行くか,とホームセンターへ.一番安いの買ってきてゴリゴリ.木工用買ってきたんだけど,今見てみたら金切りノコ使えと書いてあった.思ったより深めに切れ目入れないと折の中心にある紙に到達しないことが分かった.それと,自分はノコギリを使うのもへたくそだと言うことが分かった.目印の線からずれてしまう.実にしょんぼりである.
いよいよやってみたかった糸かがりですよー.製本用の糸?そんな物は無い.ので,縫い糸である.針は刺繍針かもしれん.見分け方なんて知らないか忘れた.やってみて分かったけど,これって本文を固定したままやるんじゃないんですね.外して1折ずつ積み上げていくんですね.考えれば分かりそうなことなのに,やってみるまで気づいてなかった.それと,1冊目は中糸というか横糸というか,これも縫い糸にしていたんだけど,かがっている糸を引っ張ると本文側に入ってきて全然しっかりしない.
それで,またもます寿司の竹投入.中糸はピンと張ってるとやりやすいと気づいたので,糸を固定してみた.糸はちょっと太い方がいいんじゃないかと思って,服にくっついていたラベルについていた縫い針よりは太い糸を使ってみた.こればかりはちゃんと平麻使った方がやりやすいのかなあ.でも,困るんだよ,製本用具は.ちょっとしか要らないのに余ったのどうするんだとか,近くで売ってないけど高くもないから通販だと送料もったいないとか.
さて,糸かがりは終わり,背固めである.作っておいたなーんちゃって寒冷紗はというと.
なんかそれっぽくなってた!
しかし,考え無しにカッターマットにくっつけたりするからはがす時たいへん.そうめんのフタがいい説も聞いたんだが,あいにくそうめんの季節じゃなかった.......なんだ,これもます寿司のフタ使えばよかったんじゃないか.(いい加減ます寿司から離れろ)
そういえば,カッターマットは他にも使うかと思って,思い切って買ったんだけど,案外高いんだね.その上,机の中にあったよ,カッターマット!
そうそう,木工用ボンドは家にあったんでおっけーだよな,と思ってたんだけど,よくよく考えてみると,この20年ばかり使った覚えがない.嫌な予感がして蓋を開けてみたら,なんだかゴムのようになっていました.しょうがないので,買ってきた.近くに文房具屋があるからいいようなものの,どうにも用意が悪い.
ボンドで和紙→寒冷紗→クラフト紙とつけていく.大量に余っている裏打ち用紙も和紙だよね,と付けてみてあかんと気がついた.糊付き加工してある裏打ち用紙だったせいで,接着剤を十分に吸ってくれないどうも背固めには向いていない.しょうがないので,台所から半紙を持ってきた.クラフト紙は,何かと発送する人なので,目に付いたら溜めているから事欠かない.
ボンドを乾かしているうちに表紙を作成.文庫サイズだとA4の紙で表紙が作れて便利だね.
表紙の厚紙貼る位置に印を書くために,裏側に印を付けないといけないんだけど,垂直出したりサイズはかったり苦労して線をひきまくっていた.
4冊目を用意している時に,表側もどうせ折り込んじゃうんだから,端っこに印印刷しときゃいいじゃん,と気がついた.印刷後に,カッターとか千万通しで上からちっちゃくポツポツと印の穴を付けて,裏側で結んで線を引く.楽だった.何より印刷時の微妙なずれを折り込んだ印を引くことができる.もっと早く気づけばよかった.
表紙に2mm厚ボール紙を貼る.1冊目,段ボールを貼ったら,思いっきり表紙がボコボコと段ボールを表現していた.しぶしぶ2mm厚のボール紙を買いに行ったら無かった.店員さんに聞いたら,イラストレーションボードというものを勧められた.これは表面がなめらかでなかなか良かった.
見返し用紙は,A5メッセージカードというのを買ってきて貼った.切らないで済むし最初から真ん中に折り目入っていて後腐れ無いじゃんと思ったのである.ちょっと大きさ違ったりしたけど,どうせ表紙に貼っちゃうから気にしない.カイゼルというのとマーメードという紙を使ってみた.丸背の場合,丸みだしをする前に見返しを貼らなければいけないのに,いつも丸みだしで苦心惨憺した後でイチョウ作ってから貼ってなかったことに気づいたりする.
丸みだしも鬼門だなあ.どうにもうまくいかない.円柱をあてがってちょうどいい円弧を出したいところだが,うまい円柱の物が見つからなくて家中探し回ったあげく,プリット糊をあてがっていた.これも長さ足り無いし,回す部分が邪魔ではある.
後は本文と表紙を合体させるだけ.重ししとけとは書いてなかったけど,なんとなく重ししておいた.辞書なら棚いっぱいにあるんだ,どーんと来いやー!便利だなあ,辞書(辞書の使い方間違ってる).一昔前なら「電話帳」というのも選択肢だったんだろうだけど,最近はどうなんだろうね.時代は変わったなあ.
できあがり.上が角背で,106ページ.下は352ページ有って,角背じゃ辛いかと丸背仕立て.しおりひもは昔の手帳から頂戴した.おお,古い手帳になぞしおりひもなど要るものか!しおりひもも売ってない材料の筆頭で,でっかい封筒についしているのから拝借しようと思っていたんだけど,手持ちの封筒はこういう紐じゃなかった.無印のしおりひもも考えてみたけど,富山の無印に売ってなかった.
けちって花切れは付けなかったんだけど,眺めているうちにこの厚みだと付けてみたいなあと思った.
なーんちゃって花切れ始動.裏打ち用紙を付けた布にこよりをのっけてボンドで貼る.これ,十分薄い布でないと作りにくいし使いにくい.
花切れ乗っけて背固めしたところ.花切れがボンド塗り立てだとはがれてきてしまって参った.背固めの時は竹で本文を押さえていたから,輪ゴムをひっかけて乾くまで押さえた.
できあがり.ちなみに,ピンクの表紙紙はレインボーという紙で,ベージュのはレザック.単に折り曲げ加工ができそうでインクジェットプリンタで使えてA4でそれなりに厚い紙がそれしかなかっただけ.
丸背の方は最後まで見返しを表紙のどのあたりに貼ればいいか分からず,うまく溝を付けられていない.たぶん,表紙用のボール紙は本文幅-2mmぐらい,背との間は5mmにしておいて,貼る時は見返し用紙以外には糊を付けない方がいいんじゃないかと思う.
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