サイエンスフィクションだった.正しく,サイエンスだった.
プロローグの後に,月で五万年前の死体が見つかったというところから始まって,ひたすら科学者達が寄って集って多方面からその解釈について調査し検討し議論している.冒険も何も無いのに(いや,無いから,かもしれない)酷く壮大で,読んでいる間中,どこに連れて行かれるのだろう,どこまで連れて行かれるのだろうと思い続けていた.そういえば聞いたことあるなあというような科学上の謎が編入されていくのが心地好い.
最後に見つかった物が,解釈できる人の手元に届けばいいと思った.それと,五万年前に死んでしまった人の動かしがたい運命に哀れみのような身震いのような物を感じる.彼らは頭上で爆散していく様をどんな思いで眺めただろう.それを見ただけで気力が萎えた人だって多かっただろう.多分,自分なら最初に脱落する.
読んでいる間,ダンチェッカー博士が好きというわけでもないのだが,なんとなく気にかかっていて,自説に固執するところはあるかもしれないけど,真実へのストイックな探究心には忠実なんだなあと思う.「コーヒーなら」と応じるところは好きだ.
続編あるみたいなので,読んでみたい.