この話,割と最初から泣いて,それはどこかというと汕子の目の前で実が流れてっちゃうところと,長い年月を経てそれを汕子が捕まえるところです.(もらい泣き)
泰麒,素直で大人しい良い子なので,なんで祖母に疎まれていたのかさっぱりなんですが.強情というのもさっぱりなんですが.
玉葉が景麒を呼んだことは泰麒にとっては間違いなく良かったけれど,それが慶を傾けるとは世の中上手くいかないなあ.慶のためにもなると思っていただろうに.
あまりにもそれまでの大人しく控え目な性状からは考えられないほどの執着っぷりだし,前の巻で麒麟の性質について読んでて知ってるから,「あってんじゃねえの?」と首を傾げながら読んでた.それまで思ってたことを忘れるほどに,偽りを思い悩むほどのことをしてまで,別離を耐え難く思う人と,憂いなく一緒に居られるようになってよかったね。
罪に怯えながら額ずく場面から,皆で茶番やってくれるところが好きで何回も読み返してる.
あそこ,景麒が泰麒のことを伝えた後,「口で言っても泰麒は不安を残すでしょうし,泰王も心から納得できますまい」とか言って,策を進言したんだろうなあ.ここ,延王って適任で,もちろん乗ってくれそうな性格っていうのも,自然に礼を取らせるよう促す治世の長さってのもあるんだけど,雁が現在安定していて王と麒麟が国を少し離れても大丈夫というのがある.たぶん,言われるままに額ずこうとした段階で「やっぱり分かってなかった」って思っただろうし,泰王は安堵し喜んだだろうなあ.あとはちょっとやり過ぎなんだけど.寄って集って子どもをいじめてはいけない.
麒麟が王を神にするけど、王が麒麟の力を引き出したようにも見える。
ところで.
これって,陽子の前の景王の時代じゃない.ということは,数年で陽子が来るじゃない.『月の影 影の海』で「戴は慶より酷い」って言われてたんですが.歓呼と共に閉じた物語の後にいったい何が.
物語とは関係ないんだけど,新潮文庫の解説がひどくて,自分の感想とは違ってて釈然としないのはともかくとして,先のシリーズで起こることが書いてあるのはどうなのよ.慌てて読むのやめたわ.(ちょっと読んじゃったから恨んでる)