補足説明

ゲドが真なる雷の紋章を宿していることについて,こんなメールを群青さんと交わしておりました.

群青:

ゲドって「真なる雷の継承者」なのか疑問に思えてきた(そんなシナリオの根幹に関わることを).(中略)だとしたら彼は緊急の一時預かり先で,新しい継承者を見つけて譲り渡さなくてはいけないのではなかろうか.やけにボーっとした忠犬だなオイ.……実は頭悪い……?←ホントにゲドファンか俺

要領悪いんだね,きっとね,ウン.んで妙に義理堅いんだ.

Sousui:

僕も,IIIで火の紋章を受け継ぐ時みたいな意味での正当な後継者じゃなかったと思う.むしろ,テッドみたいな感じね.急に攻め上られて,心構えも何もできてない人に渡さざるを得なかったのだと思う.

(ゲドは)「こんなもの受け継いだからには何事か成さなくちゃならないんではなかろうか」って難しく考えちゃうんだと思う.正当な継承者探して放浪してるっていうのもいいね.

群青:

テッド君みたいな状況,賛成.

(正当な継承者を)延々80年近く探してるはいいけど,どうやって探せばいいのか皆目見当付いてなかったりしそうだ.人生行き当たりばったり.……おかしい,ゲドがどんどんかっこわるくなっていく(笑).

Sousui:

いや,間違いない!

豊富な余命を生かして行き当たりばったり生活してるよ,あの人.

この時に思い描いていた話は今とはかなり違っていました.

だいたい,こんな感じでした.ところが,どこかのページで(すいません,忘れました)「ゲドは幻水2で言う逃亡ED」という意見を見た途端,突然,「そうか!ゲドは歴代主人公と逆の道を選んだ人なんだ!」と思ったのです.

私は,幻想水滸伝は「許し起った物語」だと思っています(特に1).ゲドがその逆だとすると,彼は「許さず起たなかった」ということになります.では,彼が許せなかったのは何だったのか.その時,今回のようなプロットになったわけです.

そうそう,もうひとつ考えたことがあります.それは,「テッドみたいに期せずして継承したにしろ,テッドみたいに為すすべもなく逃げ惑うってのは許せん」ということです.大将,たぶん,当時30代後半から40代前半なわけです(個人的には41だと思っている).このいい大人がですね,最終兵器(リーサルウェポン)を持たされたわけですよ.で,大将,変に潔癖症でしょう.絶対,玉砕精神全開になると思うのです.普通なら.それをやらなかったのは,それをやりたくなくなるような状況があったのだろうなと思いまして.

あとは独断と偏見で盛り付けしました.

だいたい,こんな感じで,最初はもっと短いものを考えていました.長くなってしまったのは連載形式にしてしまったせいです.「ここまで書けば展開が分かってしまうから,ここまで載せなければならない.でも,そこまでは書きあがらない.仕方ない,時間稼ぎだ!」というのを何度やったことだろう(とほほ).長くなってしまったもうひとつの理由は,分かりにくいかなと思うたびに説明を加えたせいです.説明文っぽくはしたくないので,本編となじませる必要があるのですが,そうなるとどうしても分量が増えるのです.おかげで,どんどん人が増えていって,自分でも誰が誰やら分からなくなっていました.不思議なことに,当初予定にない人が印象深くなったり,こんな性格じゃなかったはずなのにという人が出てきたりして,自分でも細かな展開は書いてみないと分からなくなっていました.

実は,題名の『怒りの日』は安易な気がして気に入っておらず,ずっと仮題にしておりました.しかし,一度名づけてしまうと,そうなってしまうのです.恐れてはいたのですが.『怒りの日』の出典は聖書です.

dies irae dies illa  その日は忿怒(いかり)の日
dies tribulationis et angustiae  患難(なやみ)および痛苦(くるしみ)の日
dies calamitatis et miseriae  (あれ)かつ亡ぶるの日
dies tenebrarum et caliginis  黑暗(くらく)またをぐらき日
dies nebulae et turbinis  (あつ)き雲および黑雲の日

(ゼパニヤ書 第一章 十五節)

これを「ディエス・イレ」と呼ぶとモーツァルトのレクイエムを思い出します.その部分の歌詞はこうです.

Dies irae, dies illa, その日こそ,怒りの日.
Solvet saeclum in favilla: この世は灰燼に帰し,
Teste David cum Sibylla. その様をダビデとシビラがみとどける.

Quantus tremor est futurus, 畏れるがよい,
Quando judex est venturus, 裁きの主が来て,
cuncta stricte discussurus! すべてを厳しく裁かれる.

しかし,「怒りの日」と呼んだときに私が真っ先に思い出す曲はG.W.グリフィス監督作品の映画「イントレランス」に使われていたものです.作曲者が誰だったか思い出せないのですけど.

話がそれてきましたので,そろそろ終わりにしたいと思います.この,華のない,独自展開もいいところの話を最後まで読んでくださった方々に感謝いたします.

『孤影、冂か』『怒りの日』共通設定