ブローノ・ブチャラティ
VS
エンヤ婆
Epilogue
JOJOCON Version
ネアポリスの町並みを若い男が歩いている。
視線の先にはカフェがある。
カフェに向かって男は歩いていく。もう、外のテーブルにかけている人が判別できるほど近い。
人が座っているテーブルは一つだけ。座っているのは若者が四人。
もう、声をかけたら聞こえるほど近い。
と、突然、その中の一人が立ちあがり向かい側に座っている若者を怒鳴りつけた。怒鳴りつけられたほうは静かに立ちあがり、一拍おいて負けじと怒鳴り返した。残りの二人は「また始まった」とでも言いたげに肩をすくめると、喧嘩を止めることもなくコーヒーを口に運んでいる。
口論は激しくなっていき、とつぜん、一方がナイフを抜いて――投げた。
もう一方がひょいとよけたのでそのナイフが歩いて来た男のほうに飛んできた。男は右手をあげて自分の顔に飛んできたナイフを止めた。
ナイフをよけた男が素早く振りかえ、叫ぶ。
「ブチャラティ!」
「なんだって?ブチャラティだって?!ごめんよ、ブチャラティ。あんたを狙ったわけじゃないんだ。怪我はない?」
「ああ」ブチャラティはナイフを返しながら「不用意にナイフを振り回さないほうがいい」
ナランチャはナイフを受け取ると、口論相手――フーゴ――に勝ち誇った笑みを向けた。
「ほらみろ。俺の言った通りだ。ブチャラティはちゃんと帰ってきたじゃないか。何が『考えなし』だよ、この俺のどこが『考えなし』なんだよ、え?」
フーゴは答えない。
「フーゴ、お前の取り越し苦労だったな」
ミスタが笑って言ったのに、それでもフーゴは答えない。ただ、驚いたような表情をブチャラティに向けている。
「どうしたんだ?」
ブチャラティ自身が訊くと、やっとフーゴは声を出した。
「大丈夫なのですか?」
「ああ、片はつけてきた」
もう
気のせいさ。誰も何も言わないのがその証拠だ。そう、気のせいさ。……
それまで黙っていたアバッキオが言った。
「今日は霧が濃いな。まるであんたが連れてきたみたいだぜ」
ブチャラティは天を振り仰ぐ。
「ああ」
それから、アバッキオに向き直り吐息を漏らすように呟いた。「そうだな」
The Battle is Over.
...Probably
1999/12/2 初稿
2005/1/8 第2稿