青年期の悩みにおける傾向と対策・
キングの場合(傾向篇)
〜BAD COMMUNICATION〜
悲しい女。
哀れな女。
あんまり寂しくて、とても一人ではいられなかったひと。
そんなキングを書いてみました。
彼女の屈折しまくりな心の闇。
お相手はろばやん(我ながら……)。
私の書くキングは天使でも聖母でもなく、
さながら鬼か悪魔のような女性なのですね。
そして、その彼女と平然と渡り合うろばやん。強いぞ!
リョウなんか足下にも及ばないくらいだ!
それにしても……ろばやんこんなにかっこよかったっけ……?
それはよしとしても関西人に偏見あるかなあ……。
私の書くKOF男性キャラの中で一番見目麗しく
かっこいいのは紅丸ですが一番いい男なのはろばやんかも。
クールな男になるはずだったのに
ファンキーな関西弁にーちゃんになってしまった(笑)。
今回ろばやんがしゃべってるのはイタリアなまり(一部日本語混じり)の
はげしい英語ということにしてください。
感情が激しくなるともー完全にイタリア語(関西弁で表記/笑)に
なってしまうそうです(笑)。
悲しい女。
哀れな女。
あんまり寂しくて、とても一人ではいられなかったひと。
に、してはえらい強いですが、
弱くなるわけにいかなかった理由もあるんでしょう。
大事なものを守るためには
弱くなんてなっていられなかったのかもしれません。
……また、聞こえる。いやな音……放送終了後のTVみたいな、耳障りなノイズ。いつからだろう、耳の奥でときどき聞こえるようになったもの。
嫌いなんだよね、これ。思い出してしまうから。
ワタシノナカノ、キョウキ。
名前も聞かず、キスをして寝た。私好みの黒い髪と目をした、エキゾチックな男。この訛りはイタリアかな。
これ、恋なのかな。なんて、わざとらしく思ってみる。わかってるのにね。
「ん……」
太い腕。あったかくて、抱きしめられて気持ちがいい。鎖骨や顎の先に触れてくる唇もいい。妙に慣れてて、最近のなかでもピカ一だ。
『俺なしじゃいられなくしてやる』、なんて偉そうに言ってたっけ。でもね、そう言ってきた男は結構いたけど、別に私はあなたじゃなくてもいいのよ、坊や。
私好みの綺麗な男なら、自分で誘う。にっこり笑ってみせればそれだけですむ。次に真っ赤な薔薇の花束持ってくるようなずうずうしさがあれば、陥落たと思って間違いない。
欲しいのは一瞬の快楽。後腐れなくすむのが一番。その調子で続くようであればなおいいね。
……あなたもそうなんでしょう?だからあなたも私の名前を聞かないんでしょう?
何も聞かないでちょうだいな、わかってるでしょう?私が欲しいのはあなたの体、それ以外の何かであったりはしないわ。誤解のしようがなくていいじゃない?
あなたのことも、知りたいとは思わないから。ああ……もう。そう言ってるじゃないの。
「名前?私の?……ふふ、バーの主人じゃ駄目なの?マスターでいいじゃない」
ああ、うるさい。そんなこと言わないの。もっと違うこと言いなよ。
まだ何か言いそうだから、開きかけた形のいい唇はふさいでしまおう。軽く合わせた唇離して、湿ったそこに人差し指をおく。
「いいっこなし、ね」
そう言って笑ったら、彼も皮肉っぽく笑った。もう一度、今度はキスされる。長い……。音をたてて首や耳元にキスしながら、ならもう少しサービスしてもらわないとな、なんて言う。
物分かりのいい男は好き。わかりやすい男も好き。ギブアンドテイクがはっきりしてる方が楽だし、かけひきも楽しい。私もずうずうしくなったものね。
「サービス?いいわよ、どうして欲しい?どこでも好きな所にキスしてあげようか?」
もっと、声を聞かせて。でも何も聞かないで。あなたの体のほかに、あなたに興味なんてないんだから。
だけどお願い、抱きしめて。もっと強く抱いていて。それだけで、いいわ……。
TVの音で目が覚めた。コーヒーの香りが、頭の中の霧を払っていく。
「おはようさん」
言われてそっちを振り向く。へえ、あなたこんな顔してたの。朝の遠慮のない光の中でもいい男じゃない?光はごまかしを剥いでしまうのに。
「……ありがと」
差し出されたコーヒーカップを手に取る。
「ミルクと砂糖は?っと、紅茶の方が良かったって言いたそうやね」
「そんなことないわ、ただブラックじゃちょっと飲めないだけ。お砂糖もうひとつくれる?」
ほろ苦くて、甘くて、香り高い。……まるでこの朝みたい。
あなた、いいわ。やっぱり。また会えたら嬉しいかもしれない。すとん、とベッドに腰を下ろしてこっちを見る。黒……ん、茶色の瞳が綺麗。
「また会いたいなあ。イギリスのどこなん?」
「うふふ、イギリスでバーやってるって言ったでしょ?それだけじゃ駄目?いけないわ、欲張っちゃ」
「んー、しゃあないな。探すよ」
よくできました。いい答えだわ。
「今夜も会える?」
「今夜は駄目ね、用事で遅いの。明日は?」
「OK。7時にここのロビーで待っとるよ、チーズとワインの美味い店知っとる」
ふっ、と言葉が消える。視線が離れない……からみつく感じ、好き。
コーヒーの香りが口の中に広がるキス。悪くない、短くて長い瞬間。
「つくづくいい男ね、あなた」
「ええ女やと思うよ、わいも」
くすくす二人で笑っていたら、芸能ニュースが目に入った。見覚えのある色の髪が、もっともらしくしゃべってる。
「あら、あの男……」
「ん?ああ、あの女癖の悪い俳優。とうとう離婚か、そりゃそうやろな」
あの髪の色……確か……。あ、そうか。去年の。顔がいいだけで頭の悪い身の程知らずの癖に、婚約指輪だと思ってくれ、なんて言って指輪持ってきたからさよならしたんだっけ。そういえばそんなおばかさんもいたわねえ。
「自業自得だわね、ばかな男」
彼の不幸が私の幸せ、なんて思わないけど。そう思うのさえばからしいようなつまらない男だったのかな。私の中では。
気分ぶち壊しだなあ……それにしても。つい眉がきつくなる。
「腹減ったし何か食わへん?ラウンジ行こ、ラウンジ」
タイミング良く声がかかる。本当、天性のフェミニストね。だからイタリアの男は嫌いじゃない。
「そうね……。シャワー浴びてくるわ、少し待って」
彼に笑みを残してシャワー室に入る。白くて綺麗な、品のいいつくり。でも私は眉をしかめる。
熱いお湯が体をたたく音にまじって遠く近く響いてくる音。耳障りなのは確かだけど、我慢できないほどじゃないノイズ。
あ。思い出しちゃった……。サングラスの向こうで子供みたいに笑う、今思うとものすごくセクシーな
……あの子、どうしてるかな。学校のキャンプに参加するんで1週間家を空けるって言うから、私も休暇兼ねて今年のワイン買い付けに来たんだ。怪我とかしてないかな。心配だな。
来るんじゃなかったかな、こんなとこ。せっかく彼が誕生日のお祝いにってくれた南フランスの別荘だけど、一人じゃあ……。
「悪ーい!下のラウンジで待っとるわ、トイレ行っとる!」
威勢のいい声に我に返って、あわてて顔を拭う。
「あ……!ご、ごめんなさい、今……」
バスローブを引っかけ、タオルを髪に巻いて扉を開ける。そうしたら、彼はそこにいて。ちょっと首かしげて、困ったみたいにあやすみたいに言う。
「……なんや、泣いとったんか?」
「ちが……!」
反射的に目元に手をやってしまいながら、叫んでしまった。それなのに、そうしたら。彼は私を抱きしめて、タオルの上から頭をなでてくれた。
「や……服が濡れちゃうでしょ!?」
「んー?かめへんかめへん、服なんぞすーぐ乾くわ。なんなら買い替えればすむ話やしな。それに美人さんの涙が乾くんやったら上着の一つや二つ全然惜しないで、ほんまに」
……これだから。これだからイタリアの男は好きだわ。
「……私のこと、好き?」
「激ラブや」
そっと聞いたら即答が帰ってくる。まるでわかりきったシナリオのよう。
でも。シナリオ通りでも何でも、今は嬉しい。嘘でも夢でも、愛されているのは嬉しい。
「あなたが私のものならよかったのに」
声にならなかった、声にできなかった言葉。でも、駄目よね?あなたみたいな人は、私じゃなくても誰かのものになんてならないわ。だからあなたは魅力的なのよ。
「服着ておいでな、風邪ひくで」
やさしい声。素直に頷いて、一度背を向ける。なのに、吸い寄せられるみたいに振り返ったら、彼は笑ってひらひら手を振った。
「外で待っとるさかい、早よ来てな」
……そんなに寂しそうな顔に見えたかしら。
首をひねりながら、部屋に一人残って着替える。
食事をすませたら出かけなきゃ。今年のワインの出来を調べて、向こう一年分の契約更新して。そしてお店に帰らなきゃ。あの子のために稼ぐための、私のお店……。
空は少し曇っている。そのせいか、ホテルを出ても人はあまりいない。
「送らせてくれへん?“レディを二本の足で歩かすな”、ちゅうんがうちの家訓やねん」
肩にまわされた手。あったかい大きな手は嬉しかったんだけど、そっとそれを外す。
「え!?ど、どないしたんや?わい変なことしたやろか」
「あ……ううん、違うの。ちょっと、ね……」
つう、と視線を流す。ほおらね、やっぱりいる。いやな感じしてたんだ、今朝のニュースは録画だったのかしら。
「やあ……会いたかったよ、僕のハニー。探したんだよ、とってもとっても探したんだ、やっと会えたね……」
服も髪も、小ぎれいなんだけどなんか変。目がイっちゃってる。やめてほしいわ、美しくないから。
「……なんや、お前」
彼が半歩前に出る。広い背中は頼もしいけど、でもこれは私の問題なの。それに彼、私しか見えてないわ……もう。
「ありがと、でもかばってくれなくていいわ。危ないわよ」
すい、と足を踏み出す。あーあ、もう笑っちゃうわね。最後のボランティアしてあげるわよ。
「何の御用かしら?聞いてあげてもよくてよ」
常軌を逸した気持ちの悪い笑顔。あれが“世界中の女性を魅了した”とかいう綺麗な顔の末路とはね。情けない男、ふられたぐらいで。気が変わったわ、冗談じゃない。
「その気味の悪い顔、二度と私の前に見せないで頂戴」
耳はまだ聞こえてるみたいね。真っ青になって頬の筋肉が痙攣した。さあ、さっさと終わらせてよ。私、忙しいんだから。
「うがああああああ!!」
耳障りな咆哮。上着のポケットからナイフを出し、荒い呼吸の合間に澱んだ目がこっちを見る。
ああ……またノイズが聞こえる。うるさい!
「ちょっ!ま、待ちぃな!ムリあるで!?」
制止の声がかかる。優しいのね。心配しないで、自分の身くらい自分で守れるから。
「さあ、おいで!」
無駄だらけのモーションでナイフを構え、突っ込んでくる。そんなの、目つぶってたって避けられるわよ。
「遅いね、そんなんじゃ私に傷ひとつだってつけられないよ!」
まっすぐ顔めがけてきたナイフを、半身ずらして避ける。バランス崩した背中に蹴りを入れると、みっともなく地面にはいつくばった。
「……そんなざまで、よく私の前に出られたわね」
なんかもう、あきれてしまった。『ばか』じゃないかしら。はあ……。
受け身も取れないくせにまだあきらめてないのかしら。鼻血で顔染めながら、今度は起き上がりざまにナイフを突き出してきた。さっきよりはまだマシだけど、やっぱり駄目ね。かわして避けて、その腕をつかんでおいて胸に手のひらを当てる。
「二度は言わないわよ?ふん……大っ嫌いよ、二度とその顔見たくないわ」
どん、とにぶい音がした。アバラにひびくらい入っちゃったかな?でもまあ、ここまでやれば懲りるでしょ。
くずおれた姿に背を向け、振り向かずに彼のところへ戻る。
「おまたせ、驚いちゃったでしょ?ごめんなさい」
「いやー‥…強いんやな、最後のアレ掌底やろ?わいかてああいう小規模の掌底弾、よお撃たんわ」
ああ、やっぱり格闘技やってたんだ。どおりで、ね。一般人のボディじゃないし、かといってボディビルダーって訳でもなさそうだったし。それも結構強いんじゃないかな?
腰をかがめ私の手を取って、珍しいものでも見るように眺め回す。
「うっはあ、ちいこい手やなあ!この手で掌底撃つんか、ははあ……。綺麗な手やんか、傷つけたないなあ。そう思うやろ、あんさん?」
「!!?」
鋭く振り向くと、目の前でばかが顔に廻し蹴りをヒットされて倒れるところが見えた。
ぱんぱんと手をはたき、こっちを見てにこっと笑う。人差し指立てて得意げに笑うとこなんて、かわいいくらいなのに。今の反応速度といい技のスピードといい……すごい。
「危ないからな、こいつは処分さしてもらいまっせ」
ばかの手から離れて転がったナイフを拾い上げ、気合一閃手刀を振り下ろす。幅広の刃をきれいに真っ二つにしてしまい、柄のほうをばかに投げ返す。見事に頭に当てるあたり、拍手したくなる。
「ええナイフ持っとるやん?ちょっと買えんで」
刃を眺め、彼はばかを見下ろした。そうしたら、あのばかまだ意識あったみたいで今度は喚きだした。もういい加減にしてよ……。
「僕に……僕にこんなことしてただですむと思ってるのか、お前ら!?僕のパパはレオーネ貿易の会長だぞ、お前らなんか……!」
レオーネ貿易?ああ、最近頑張ってるとこね。別にそんなもの怖くないけど、お店に何かされると困るんだよねえ……。ボスに頼めば良く言いきかせてくれると思うけど、気が進まないなあ。
私がため息ついたら、まあばかの嬉しそうな顔。ちょっと……黙ってよ。
「僕と一緒に来いよ、今ならまだ許してやるよ!」
……あんたのそういうところがばかだって言うのよ!
「黙らんかいこんボケえ!!こっちがおとなしゅうしとれば付け上がりよってからに、何やねんレディに向かってその口のきき方は!ほれ言うたれ言うたれ、あんたも何か言っとき!」
……自分が切れる前に別の人に切れられると妙に寂しいのはなぜかしら。
「……もう何も言う気になれないわね」
忙しく手招きされるけど、それには乗らずに額に手をやる。出てくるのはため息ばかり。いっぺんに年取りそうだわ……何だか。
「ぼ、僕のパパは!」
「やかましわ!だあっとれ、あほう!……取り乱してしもたやんか、まったく」
彼の剣幕に、さすがに黙る。武器もないのに彼に勝てるはずないのはわかるみたい。
むりやり気を取り直して、彼がにっこり笑う。
「レオーネ貿易のご子息かいな、そーれはそれは珍しいとこでお会いでけて光栄ですわ。せいぜい頑張っておくんなさい」
「お……お前こそ何だよ、その口のきき方!僕は会長の息子だぞ!」
腰の低い彼に、ここぞとばかりいばりくさる。鼻血くらい拭いてよ、汚いわね。でも、ちょっと……いくら皮肉でも、あんなばか息子に言わせといていいの?
「いやいやまったく、さすが大企業レオーネ貿易ですなあ。ご子息がこないな所でふられた女にいやがらせしとるくらいや、巨額の負債負うて経営状況火の車とは思えませんわ。いやそんな、とてもとても……くっくっく」
え?そんなの新聞にも載ってない。でも、確実にばかの顔色が変わる。彼はばかに氷のような視線を向け、冷ややかに宣告した。
「融資のお話はなかったことにさしてもらいましょ。もともと使途不明金やら使い込みやらの多い会社でしたさかいな、もう面倒みてられませんわ」
酸欠の金魚みたいにぱくぱく口を開閉する。ばかはやっとの思いで言葉を発した。
「なんで……なんでお前がそんなこと知って……。そもそもそんな権限……」
「権限でっか、ありまっせ?最近景気悪いですやろ、わい金融部門と企業単位でのリストラクション任されてますねん」
からからと笑って、彼は人が悪そうににやりとした。
「お前……何者……」
気を失いそうに顔色が悪いばかに、彼はいっそ爽やかに笑ってみせた。
「わいでっか、ガルシアの長男坊ですわ。名前くらいはご存じなんちゃいまっか?」
ガルシアって、あのガルシア財団!?総帥アルバート・ガルシアの懐刀と言われたその長男……彼が!?
「ほーんま、運悪かったですなあ?よりによってわいの恋人に乱暴なことするなんて」
ひょい、と肩を抱かれる。嬉しくて、その腕にそっと手を添えて頬を寄せる。そうしたら、彼、ちょっと意外そうな顔をしてからめいっぱい嬉しそうに笑った。
「やっと笑うてくれはったな、むっちゃ嬉しいで」
頬に軽くキスをくれて、それから。彼は、呆然と座り込んでるばかに、まるで雷がうつみたいに激しく厳しく言い放った。
「天罰や、くらっとけ!」
さー行こ行こ、と言われてにっこり笑いかけられる。この人が……ガルシア家の?
やっと来たタクシーに乗り込んで、駅まで出してもらう。
横で鼻歌歌ってる顔は、そういえばいつだったか写真で見たことがある。
「……ムッシュウ・ガルシア?ムッシュウ・ロバート・ガルシア……貴方が?」
尋ねてみる。すると、彼は茶色の瞳をいたずらっぽく輝かせた。
「ガルシアなんてウソやウソ!敬称なんかいらんがな、ロバートでええって。ロバート・ダヴァロスや、ガルシアの坊ちゃんもロバート言うんやろ?ちょっと借りただけや!」
にーっこり、笑って言い張るダヴァロスさんに、笑い返す。
「確かアルバートさんの奥様ってダヴァロス家のご令嬢だったんですって?アルバートさん一世一代の恋だったっていうじゃない?」
そう言ったら、ダヴァロスさんは短く口笛を吹いた。
「結構情報通やね?」
「そうね、うちのボスがそういうの詳しいのよ」
言い合いながら、私たちはいつか笑っていた。こんなふうに笑うのは久しぶりかもしれないな、ってなんとなく思った。
この人だったら、ノイズは聞こえないかもしれない。けど、でも、この人もどこかへ行ってしまうのかもしれない。
だけど今は、隣にいるから。
「ロバート、でいいのかしら?」
「超おっけーや、んでな……名前、やっぱり教えてーな。頼むって」
名前。私の名前、一瞬考えてしまった。けど、これがあなたをつなぐ鎖になるというのなら。
「キング、よ」
彼が単語を反芻する。私は弁解するように言葉をつないだ。
「いろいろあってね、本名はちょっと言えないのよ。ごめんね」
「全然かまへん、ええ響きや。キング……さん、やな」
絶対そのうち本名も聞き出すからな、と耳打ちされて、私も声をひそめた。
「あなたとガルシア家のかかわり、必ず白状させるわよ?」
「あはは、そいつは大変や」
にこやかに笑うその顔。……あなたが、私のものだったらいいのに。
腕を取って、そっと寄りかかる。彼は額にキスしてくれた。
私は目を閉じて、彼の体温を味わっていた。
Author's Note
アップは1997.9.23です。
むしろ「ロバート・ガルシアの場合」とすべきではなかろうかと思い続けて、改題には至っておりません。これも初期の話ですねえ。
副題(『BAD COMMUNICATION』)出典は当然『B'z』です。ぼーっと聞きながら、「あ、これねたにできる……」と思った瞬間からエンドレスでかけつづけ、3日で脱稿という伝説付き(笑)のシロモノです。
ラスト近く、かけるCDを変えたせいか非常に平穏に終わっています。『BAD COMMUNICATION』のままだったら、ほんとに救いのないまま、心なんて全然通いあわないまま二人は別れていたんではないかな、と思っています。
これ書いてこっち、「群青=ロバートファン」なる図式が一部で成立(笑)。好きですよ、ろばやん。頭良くて悪人で、優しくて残酷で複雑で。大好きです(笑)。