NATIVE DANCE
昔話2nd参ります。キング、15〜6くらい。
王様です(敢えて)。偉くて強いです。
タイトルは懲りずにB'zです。内容は全く関係ありません。
リック・ストラウド出してみました。趣味です。
うちのリック、ばかです。壊滅的にばか。
ただ、書き手の愛を一身に受けてしまった為、
リョウと庵のおいしい所を併せたような性格になってしまいました(謎)。
ライトで強引で我儘で、偉そうで素直でお子様。
イケイケなリョウというか、天然ライトな庵というか。
ひょっとしてすげぇやな奴ではなかろうか(汗)。
ずっと負け知らずだった。自分が負ける日が来るなんて、思ってもなかった。あの時、あの瞬間まで。
『ホワイト・レディ』なる優雅な名に似合わぬ、トラブルには事欠かないサウスタウン・スラムにある店。喧嘩専門チーム『ブラッディ・メアリ』のたまり場であるそこに、赤銅色の肌と見事なプラチナブロンドをした体格の良い男がやってきたのがその日のトラブルであった。なまじ腕に自信があるのか、この男、オーダーしたミネラルウォーターにいちゃもんをつけ始めたのである。
「……お客さん、無茶言わないでほしいねえ。ここがどこだかわかってるのかい?ようく冷やしたミネラルウォーターが飲みたいんだったら、もっとちゃんとした店に行くべきだよ」
「俺は客だぞ?俺は冷たい水が飲みたいんだ。金なら払ってやるよ、いくらだ?……たたき出すかい?それでもいいぜ、俺は」
椅子にどっかりと腰掛けたまま、男はグラスに移したミネラルウォーターを運んできた女を挑発した。浅黒い肌と、黒い髪にきついパーマをかけた、生半可な男ではかなわないような体格を誇る女が苛立たしげに舌打ちする。
ボスが代わって以来、『ブラッディ・メアリ』はたまり場で事を構えることは少なくなっていた。何でも新しいボスはグラスやカップの類をこよなく愛しているらしく、立ち回りのたびに店の備品であるグラスが粉砕されるのが我慢ならなかったらしい。
そんな事情を知ってか知らずか、男はにやにやしながらグラスをつかみ、中身を目前の女にぶちまけた。
「おっと、手がすべっちまった。大丈夫か」
「……貴様ァ!」
激昂した女がトレイも投げ捨て、目前の男につかみかかろうとする。にやにや笑いは消えないまま威勢よく椅子をけたてて立ち上がり、男はファイティングポーズをとった。
すぐさまリアルファイトになるはずだった、その場の空気が切り裂かれた。
「レン、よしな!」
鋭い声の呼びかけに、殴り掛かろうとした女がびくりと動きを止めて振り返る。男も不審そうに眉をひそめ、声のした方をのぞきこんだ。
テンポよく靴音を立てさせ、真っすぐに歩いてくるその影は、華奢なほどに繊細だった。白い肌と短い金色の髪に、冷えたブルーの瞳の取り合わせが美しかった。
身長など、彼よりもレンと呼ばれた女よりもずっと低い。それでいて、冷たい眼差しが内に秘めた熱雷に似た怒りは、鮮やかに周囲を圧倒していた。
「ボス……」
叱責を恐れたか、女の声は弱い。
レン、と呼んだ女にタオルを投げてやる。まるきり美しい少年のような金髪のそれはレンに視線をやり、その視線の青を和らげた。耳に心地よいハスキーヴォイスが、レンをいたわる。
「顔拭きな、レン。……お客さんとは私が話をつけよう」
つい、と不躾な客人に投げかけられた視線は、ぬめるような愉悦を浮かべていた。
「私の獲物だ」
見据えられ、はっきりと宣告される。線の細い、性別を感じさせない黄金の美貌は悪魔のそれに似ていた。
男は拳を固め、喜々として再度ファイティングポーズをとった。楽しくて仕方ないというようなその様に、それは冷たい視線を向けた。
「おまえがボスか。話の早い奴で助かるぜ、楽しませてくれよな」
「おまえの楽しみに興味はない。おまえは私の友人を侮辱した。……許しがたいな」
構えもせず、金色の悪魔は冷ややかに嗤った。傲然と顎をそらし、真っ青な視線で彼を射貫いて無造作に言い放つ。
「賭けをしようか。私が勝ったらその髪もらうよ」
「髪?俺のか」
唐突な申し出に、男は大きな目をぱちくりさせた。目の前の小柄な異形は眉をひそめる。その姿さえ恐ろしいほど魅力的だった。
「ああ。気に入らないねえ……そのプラチナブロンド」
「……ふふん、いいだろう!俺が勝ったらどうしてくれる?」
「何でも望むものをくれてやるよ、金か女か?……それとも、私か?」
金色の髪を片手でかきあげ、それはようやく滑らかに構えをとった。
ふいと顎をそらし、白い細い首を露にさせる。微かな吐息で誘うように細い指を動かしてやる。濡れたように赤い唇を、ちろりと舌がなめた。
まるきり、強烈な挑発のように。それは言葉を紡いだ。
「Come on,baby?」
みしい、というにぶい音を聞いたのが最後だった。
店じゅうを転がりまわり飛びまわって闘った結果、散乱するガラス片やテーブルや椅子に囲まれて、彼はこめかみに正確な蹴りを入れられていた。脳震盪を起こし、意志とは裏腹にそのまま地に伏してしまう。
立ち上がることもできないのにもかかわらず、なお拳を握っている男を見下ろして汗を拭う。
「私の勝ちだな。約束は守ってもらうよ」
乱れた髪を軽くかきあげ、それは傲岸なほどの鮮やかさで微笑った。
床にくずおれ転がった彼の体をうつ伏せのまま膝に抱き上げ、周囲を振り返って顎で示す。白い手にナイフが渡されるとそれを1・2度もてあそび、軽く握りを確かめて改めて宣告する。
「気に入らないよ。この綺麗な髪」
冷たい刃が、ぴたりと首筋にあてられた。迷いもためらいもなく剃り落とされたえりあしの髪が、ばさりと音を立てて床に白い模様を描き出した。
ばん、と裏口のドアが開いた。見張りのために外に立っていた、ピンクの髪の女が飛び込んでくる。
「ボス、警察です!」
「フン?誰か通報したな、おせっかいな奴もいたもんだ。……散りな!」
凛と通る声での命令に、店にいた者たちが一斉に姿を消していく。その気配を察知し、えりあし部分のみを落とされた彼は必死で体を起こそうとしたが、ダメージは大きく残っているようだった。何とか顔を上げるが、立ち上がれない。
「おい……待て、おまえ……名前を聞かせてくれ」
「人に名を聞くときはまず自分が名乗るのが礼儀だろう?違うか」
仰向けになって転がったままの彼に、それは冷ややかな視線を落とした。彼は腫れはじめた瞼を気にしながらそれの整いすぎた顔を見上げた。
「……俺はリック。リック・ストラウドだ……」
「フン。覚えておいてやるよ」
ひとつ笑って、それは身を翻した。鮮やかなその印象を刻み付けて、リックは今度こそ気を失った。
まるで金色の稲妻か炎のような相手だった。強くて美しくて、激しい。
傷が癒えてから店に行ったが、そこにはもう居なかった。探しても探しても、会えなかった。風の噂で、もうサウスタウンにはいないらしいと聞いた。
名前も、聞かせてはもらえなかった。そうつぶやいてしょげかえった、めっきり『ホワイト・レディ』の常連となって久しいリックに、レンは言ってやった。
「何言ってるんだい。ボスにタイマン買ってもらって、しかも負けた上に名乗らせてもらったんだろ?贅沢言ってるんじゃないよ馬鹿だねえ。私らの時なんか大変だったんだよ?こっちはこてんぱんにのされるわ、名前も聞かせちゃくれないわでさ。必死で引き止めて口説いて、やっとの思いでボスになってもらったんだ」
「おまえら、レディースだったんじゃないのか?あいつは男なのに?」
早い問い返しに、レンはひとつため息をついて肩をすくめた。
「……ボスは特別だよ。あんたもよくわかったろ、あの人の強さと綺麗さと。どうしてもボスになってほしかったんだよ」
「レン、あいつの名前教えてくれよ」
「……だからさァ。私らもボスの名前なんて知らないんだよ。ずっと“ブロンド”っては呼ばせてくれてたし、別れ際に『次に逢えたら“キング”って呼べ』とは言ってたけど、こんなのあからさまに偽名じゃないか」
「今、どこにいるんだよ」
「言えないんだってば!それにチーム外のやつには絶対教えるなってキツく言われてるしね」
「もう一度会いたいだけなんだよ……」
「だからねえ、リック、ボスは女も嫌いなら男はもっと嫌いなんだってば!やめときなよリック、不毛だよ。ていうかあんた飲み過ぎ」
へべれけになるまで飲んで、受け止める者もない一途な恋に似た憧れを吐き出す。それが、リックの月に一度の恒例だった。
Author's Note
アップは1998.8.16です。
リック・ストラウド君です。初めて彼を見て惚れた帰り道に考えていた話がこれ。あんなにかっこよかったのに、なんかこう、どんどんばかになっていっているような気がします。あんたまさか女見たこと無いとか言わないでね状態なような。
普通、わかりませんかねェ……(涙)。声とか、体つきとか……。まあ……彼女自身、脱がされるまで女だって分からなかったって設定付きだから良いのかな。
もうちょっと続きがありますが、そっちの彼は更にばかです。頭悪すぎです(涙)。清々しいほどの天然ぼけをぶちかましまくってます。そんな彼がステキだと思います。
ぐれまくりなキングは、Mr.BIGのところから飛び出してきているところです。一つのチームを潰して、その事実で「子供扱いするな!」という意志表示を示したところ。彼女は早く大人になってお金を稼いで、ジャン君を迎えに行かなくてはいけないのにそうできないことがもどかしくて苛立って、BIGの保護をうっとおしいと感じています。でも、世間はそんなに甘くないんです……。
彼女を大切に大切に育てて、自分好みの立派なLadyに仕立て上げたいBIG。それは彼女がダイヤの原石だと知ったから。
「磨かなくてあれだぞ。磨けば他の誰もかなわねえ」
「俺はお前を手放したくねえんだよ。わかってくれねえかなあ、男心ってやつをよ」
彼のつぶやきは、キングには届きません……。