雪が……降っていた。
音もなく舞い降りる、白い死の翼が大地を覆っていく。
白い無色の静寂に包まれた世界に、ぽつんと赤い色がある。その下に、俺がうずもれていることを、俺は知っていた。
寒くはない。不快でもない。ただ、耳が痛いほどの静けさだけがあった。
……これは、夢なのか?
立ち枯れた木々が、申し訳程度ながらも俺を囲んで並んでいるのがわかる。葉などなく、余計な枝も落ち果てたそれらは、ただ灰色の天を貫かんばかりに無言で立ち尽くしていた。
生の鼓動など、影もない。だが、その姿は確かに美しかった。
どれくらい、俺はここにいるのだろう?
一瞬?数分?数時間?……それとも、数千年?
考えるのがばかばかしくなって、俺は思考を打ち切った。