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ひやりと冷たい何かが触れた。

目が開いた。

「……大丈夫?」

聞こえる声。案じる表情。俺を、見る……アイスブルーの瞳。

「うなされてたから……起こしちゃったけど。夢でも見たの?」

「……あ」

やさしい声。いたわる言葉。揺れる……世界。

遠ざかる。景色が回る。『落ちていく』。

感情の飽和。感覚が恐慌をきたす。精神の混乱がはねかえる。同じ強さで。体に不調をおこさせる。

息が。止まる。

「ヨオリ!?」

呼ばれる。抱き起こされて。きつく抱きしめられて。

……俺が。

「落ち着いて!息をしなさい、ヨオリ、呼吸して!」

俺を見てる。ここにいる俺のことを見てる。『見てくれてる』。

呼吸できる。それを許せる。

呼吸不能が、呼吸困難に持ち直す。喉が鳴る。灼けた鋭利な刃物で気管を切り裂かれるような感覚が、俺を引き戻す。

「大丈夫、大丈夫よ、ゆっくり息を吸って……落ち着いて、吸ったら息を吐いて。焦らなくていいわ、大丈夫……」

奥歯が鳴る音が聞こえた。手が震えていた。『大丈夫』、そう言われるたびに涙が出た。

俺はまだ捨てられてない。捨てられてない。まだ俺は生きていていいんだ……。

どこにもいくな。俺を置いていくな。本当に壊れてしまうのがわかるから。

「……キング……!」

切れ切れに呼びかける。小さな手をさぐって、震えている手でかたく握りしめる。

夢に見ただけで息ができなくなった。俺の顔をした俺ではないモノに笑いかける姿を夢に見ただけでこのざまだ。

狂ってる。きっと。

俺は、もう……くるっている。

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