住宅街にある通りは夜ともなると人影がなく冬という季節もあいまってこれ以上ないほど寒々としていた。
男はひとりその通りを歩いていた。
と、突然、あたりが真っ暗になった。 |
駆け込んでくるなり少年が叫んだ。
「こら、影嗣」
父子が待つこと数刻、赤ん坊の泣き声が家中に鳴り響いた。 |
「・・・ということがあったのだ」
「ただいま・・・って、あ、親父、また影二によけいなこと教えてるな? 影二、話半分に聞いとけよ」 |
木の枝に座ってぼんやりと遠くからの光を眺める。
「何を見てるんだ?」 |
"うまい飯用意して待ってろよ"
それっきりだった。
任務は難しい物だったらしく、かかわった里の者の半数が命を失った。
影嗣と行動を共にしていたという男が影二を訪れた。 |
街灯が2,3度瞬いてパッとついた。
男は人知れず苦笑を浮かべるとまた歩き始めた。 1997年12月25日 |