ハルトマン・フォン・アウエの『哀れなハインリヒ』が読みたくて借りてきたのですが,他の収録作品が,『エッダ』『グレティルのサガ』『アーサーの死(トマス・マロリー)』『ローランの歌』『狐物語』なので,この手の話が好きな人には垂涎ものかと.
さて,件の『哀れなハインリヒ』ですが,そもそもは,ドイツ文学何か読みたいなあと思った時に,京都外大の図書館のページでハルトマン・フォン・アウエの名前を知り,検索かけたらWikipediaのハルトマン・フォン・アウエのページにたどり着き,その中でただ1作紹介されていたので,読んでみたくなったのである.
それで,読み出してどうにも吹き出してしまったんですが,このハインリヒを救おうとする娘ってのが,8歳なんですよ.この子はいっつもハインリヒのところにやってきて,彼の徒然を慰め
るんですね.それで,ハインリヒの方もいろんな贈り物を贈ってやったりして,(冗談なんでしょうが)彼女を自分の花嫁などと呼ぶような間柄にまで
なります.
この家にハインリヒが来て3年目にして,娘はハインリヒの病の治し方を聞き出して,命を捧げる決心をします.11歳ですよ,まだ.この時の整然とした娘の台詞というのは,まったく少女のものとも思えず,実際,両親もこれは精霊が娘をして語らせたのだ
と考えて,泣く泣く同意します.
んで,間をはしょりますが,最後,結婚しました,この2人.
神話や英雄譚なんかでも,えらい展開していることが多いし,中世の価値観ってすごいと思った.
『ローランの歌』は,死を前にしたローランが愛剣デュランダルを処分しようとする件が好きです.デュランダルが敵の手に渡らないように折ろうとするんですが,岩に突き立てても岩がまっぷたつになるだけで,刀身にほころびがみられない,それをローランは嘆くんです.デュランダルは神がシャルルマーニュに遣わして,シャルルマーニュがローランに賜ったと彼は言うわけなんですが,剣は剣として,ローランが思うような感慨とも関係なしに在ったのだろうなあと.
筑摩世界文学大系 (10)
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