母から聞かされた「ムタボール」という呪文が気になって,コウノトリになった王さま(ヴィルヘルム・ハウフ)という本を読んだのですが,最近,ひょいっとそれを思い出して,ヴィルヘルム・ハウフの著作を調べていたところ,『魔法物語』という本(種村季弘:訳 河出書房新社)が図書館にありました.
それで,知ったのですが,上述の話というのは,劇中劇という感じで出てくるのです.
もともとのハウフの著作は『Märchen-Almanach auf das Jahr 1826 für Söhne und Töchter gebildeter Stände』(意:知識階級子女のためのメルヘン年鑑1826年)というものです.訳者の一存で,内容にふさわしいと思われる『魔法物語』という訳名に
したと言うんですが,う~ん,ふさわしいかなあ......?
砂漠を行く隊商が道中の慰みにお互いに面白い話をしようという趣向で,『こうのとりのカリフの物語』『幽霊船の物語』『切り離された手の物語』『ファトメを救え』『ちびのムックの物語』『偽王子のメルヘン』という6つの話が,「隊商」という繋ぎの話を挟んで語られます.このあたり,ムソルグスキーの『展覧会の絵』を思い出しました.(「プロムナード」を挟みながら曲を繋いでいるような構造が似ていると思った)
『こうのとりのカリフの物語』ですが,絵本よりこっちの方が面白いです.ふくろうに隠れてコソコソと話し合っているところなんか.もう,どうしようもない男どもだな(笑).ムタボールというのがmutaborであって,「私は変身するであろう」という意味のラテン語だということにびっくり.
一番おどろおどろしいのは『幽霊船の物語』.
私が一番好きなのは『切り離された手の話』.こればかりは,魔法は関係ないと思うんですが,真相が謎のままに次の話に移ってしまうので,一番気になります.
ただ6つの話が語られるだけではないので,通して読むのが一番です.そういう意味でも,1つだけ取り出した絵本を読んで終わりなのはもったいないなあ.
ハウフの『Märchen-Almanach』は1827年と1828年もあるようです.読みたいものだなあ.