なんか,名指しで狙撃されました.
面白かったのでご興味そそられた方は是非、と言いつつ。
Sousui氏。ゼンガー氏が10cmイルイ嬢と遭遇。逆も可。むしろ 逆 推 奨 。
ちょっと~!何で私だけ~!しかも,逆か!
というわけで答える。(騒いだクセに答える)
柔らかい日差しが窓から差し込んできて、ベッドを温めている。明るい光がベッドで丸くなっているイルイの上も撫でている。
気持ちよく寝息を立てていた少女のまぶたに動きがあった。
やがてイルイはゆっくりと目を開けた。視界はボンヤリとしたものからすぐにはっきりした物に代わる。
いつもなら、まだしばらくぼーっとしているのだが、イルイは不思議な光景が瞳に映っていたような気がしてパチパチと二回瞬きした。
小さな姿がはっきりと視界に入った。
と、にわかにイルイは起きあがり、ベッドの上にペタンと座り込むと、何度か目を擦ってその小さな物を見つめた。
見間違いではなかった。
五分は経ってから、イルイはおそるおそる小さな姿に話しかけた。
「ゼンガー……どうしちゃったの……?」
身長一〇センチほどになったゼンガーが黙ってイルイを見上げていた。
どうしたも何も、イルイを起こしにベッドに手を掛けた途端、急に視界に変化があって――こうなっていたのだ。出勤のために着込んでいた服も腰に帯びていた愛刀もゼンガーと共に小さくなっている。
ゼンガーはイルイの前で腕組みをしたまま考えた。どうも出勤は無理な気がする。
と、急に影が出来た。見ると、イルイが不思議そうな顔をしながら、ゼンガーに触ろうと手を伸ばしていた。差しのばされた手は、いつもはもみじのように小さいのに、パワーショベルのように思える。ゼンガーはイルイの手に自分の手を置いた。
「わあ……」
イルイが声を上げたので見上げると、いかにも嬉しそうに表情が輝いている。
「ちっちゃい……」
それからイルイは、すごい、すごい、と繰り返した。
どうすごいのか分からない。
イルイはゼンガーをよく見ようと顔を近づけた。どうも所在ない。
ゼンガーはパジャマ姿のままはしゃいでいるイルイに言った。
「服に着替えろ。食事もせねばならん」
「うん!」
やけに勢い込んでイルイはうなずき、
「今日は私がごはん用意するね」
ずいぶんはりきってベッドを降りた。スプリングが揺れ、ゼンガーはバランスを取るのに手一杯になった。
食卓に行くためにイルイの手に乗ると、イルイは嬉しげに歌など歌いながらゼンガーを運んだ。
「フフ、変な感じ」
ゼンガーの困惑をよそに、イルイは嬉しそうだ。
イルイはテーブルにゼンガーを載せると、よいしょ、と足場を持ってきて、醤油皿を持ってきてゼンガーの前に置いた。醤油皿という選択は悪くない。これでさえお盆のように見えるのは仕方がないが。
イルイはそこにご飯を置いた。
「ゼンガー、これぐらいでいい?」
「……」
ゼンガーは米粒を一粒手に持った。手のひら一杯が一粒の米に占領された。まるで大きく作りすぎた不格好な握り飯である。イルイとしてはずいぶん加減したつもりだったのだろうが、この量を平らげるのは無理だろう。それに、他の物も食べたい。
「イルイ」
「?」
「お前のおかずを少しもらっていいか」
「うん!」
分けようとしたイルイをとどめて、ゼンガーは腰の刀を抜いた。こんな事に使うとは思わなかったが、豆腐の角と焼き魚を一片、ほうれん草の先端を切り落とす。ちょっと小さくなっただけでサバイバルだ。
「それだけでいいの……?」
「ああ」
醤油皿の前に正座して咀嚼しながら、食費はずいぶん浮きそうだと思った。
食事を片づけると、イルイが訊いてきた。
「ね、ゼンガー、どこか行きたいとこない?」
「そうだな、通信機の前に連れて行ってくれ」
答えを聞いてイルイが少しがっかりしたような顔をしたので、おや?と思ったが、まずは欠勤の連絡が先である。
マイクの指向が今のゼンガーの身長に合っていなかったので、大声を張り上げねばならず、ずいぶん苦労したが、どうにか連絡は取れた。映像を切っていたのを不審に思っていたかもしれない。
通信が終わるのを待っていたイルイが、また訊いてきた。
「ゼンガー、今度はどこに行く?」
期待に満ちた瞳がゼンガーを見下ろしている。
イルイは世話を焼きたくて仕方がないのだ。
気がついて、ゼンガーはわずかに苦笑を浮かべた。
――これではペットと変わらんな。
「公園にでも行くか、イルイ」
「うん、公園に行きたいのね!」
イルイの頭の中で「ゼンガーの台詞」が「ゼンガーの希望」に変換されている。ゼンガーは微笑して、仕度を始めたイルイを眺めた。
イルイは肩にゼンガーを乗せたがった。
「だって、いっつもゼンガー、乗せてくれるもん」
イルイとしては特等席を提示したつもりだったのだろう。だが、ゼンガーはイルイのなだらかな肩を眺めながら首を振った。捕まるところのない肩でバランスを取る自身がなかった。脚を滑らせたら絶対に死ぬ。髪に捕まればできたかもしれないが、それはイルイが痛かろう。
「……高くって楽しいよ?」
もう一度だけイルイは提案した。
「ダイゼンガーで乗り慣れている」
まあ、機動兵器の上に乗っているようなものだろう、と想像しながらゼンガーは答えた。見る間にがっかりした表情を浮かべたので、急いで付け加えた。
「鞄にでも入れて持っていってくれた方が嬉しいのだが……嫌か?」
「ううん、イヤじゃない、イヤじゃないよ」
用意するね、とイルイは自分の部屋へと姿を消した。
ずいぶんかかる物だな、と思っていると、イルイは手に円形のバスケットを持ってきた。
「ほら、見て。ここがね、ゼンガーが寝るところ」
イルイが指し示した籠の隅は丁寧にハンカチが敷いてあった。
「……」
どうもますますペット扱いである。
「隙間から外が見えるでしょ?この方がいいと思って……」
「狭間か。なるほど、よく気がついた」
褒められて、イルイはにっこり笑った。
「こっちにサンドイッチ入れておくね」
「……」
サンドイッチに押しつぶされないよう気をつけるとしよう……
公園は、歩いていける場所にある。緑地に指定されており、自然の残る場所である。土の地面からは緑の草が生えている。
ゼンガーは降ろされると、辺りを見回した。草はゼンガーの背丈ぐらいあり、どちらの方向に行くにしてもかき分けて進むことになる。しばらく進んでいくと、少しまばらになり、薄い茶色の物がまっすぐ上に向けて生えていた。茶色の幹のような物は、一定間隔でムシロのような物が巻かれており、先端は大きな綿棒のようになっていた。
「……土筆か」
ゼンガーはツクシの茎を押してみた。手を離すと、弾性でゆらゆらと揺れている。
ゼンガーは思案顔になって指をあごに当てて考えていたが、ゆっくりと刀を抜いた。
「どうするの……?」
花を摘んでいたイルイがゼンガーに話しかけた。答えず――
「でぇい!」
ゼンガーが刀を振るうと、すっと一筋入って、ツクシが上下に分かれた。
――悪くない。
独り悦に入って、ゼンガーはしばらく辺りのツクシを切り続けた。
スパン、スパンとツクシが切れていくのをイルイは丸い目で見つめ、ときどき拾い上げては真っ直ぐな切り口を触っている。
昼近くになると、イルイがサンドイッチを広げた。例によってゼンガーはその端を切り取った。
ここまでで気がついたのだが。
――どうもすぐ空腹になる気がする。
一度に食べる量が少ないのだろうか。しかし、一度に食べられる量にも限度がある。頭をひねっていると、フンフンという音が近づいてきた。
「……?」
足音。草が踏まれる音。
「イルイ、何か来るのか?」
「うん、シバイヌさん」
イルイはいつも見かける飼い犬が近づいてくるのを無邪気に眺めている。
「何?!」
ゼンガーは咄嗟に刀を引き寄せ、すぐに意味がないと気がついた。
――どうする?
走っても無意味だろう。ゼンガーは必死になってイルイの籠に身を隠そうとした。が、その前に。
「ゼンガー、サンドイッチあげていいかな……?」
答えるどころではなかった。イヌは珍しい生き物を見つけると、黒い湿った鼻をゼンガーにくっつけて、フンフンと臭いを嗅ぎ出した。押し倒されそうになって、ゼンガーは必死で踏ん張った。が、次の瞬間。
「ゼ、ゼンガー!!」
イルイが悲鳴を上げた。ゼンガーの視界が暗くなり、身体の周りを暖かくて柔らかい物か覆う。生臭い臭いでいっぱいになって、空気がなくなる。
――ゼンガー……食べられちゃった!
イルイの声が遠く小さく聞こえる。
――ダメ、出して、食べちゃダメ!
ゼンガーは渾身の力で刀を引き寄せた。
「く……」
――許せ!
思いっきり犬の舌とおぼしき物を突き刺すと、キャンと甲高い声と共に吐き出された。急に新鮮な空気の中に放り出される。咄嗟に上下すら分からなくなったが、必死に受け身の体勢を取る。衝撃と共にしたたかに背中を打った。
「ゼンガー……!」
気がつくと、イルイが泣かんばかりにしてゼンガーを手の上に乗せていた。
――生きているようだ。
ゼンガーはイルイの手の上で座り、大きく息を吸い、吐いた。
「ゼンガー……大丈夫?」
「大丈夫だ」
「……ごめんね。こんなことになると思わなかった……」
泣きそうなイルイにゼンガーは話しかけた。
「気に病むことはない。俺の油断だ」
本当だったら頭の一つも撫でてやりたかった。だが、今の姿では叶わない。
「イルイ、それよりも頼みがある」
「なあに?」
イルイは真剣な顔をしてゼンガーの「頼み」を待っている。
「風呂に入りたい」
情けないことに、ゼンガーは犬の唾液で全身べたべただった。
公園に来るときよりも気を張って、イルイはゼンガーを連れて家に帰った。
食卓にゼンガーをのせると、スープ皿を持ってきて、お湯を入れた。
「……イルイ、ガーゼを持ってきてくれ」
「ケガしたの?」
心配そうに言うので、すぐにゼンガーは首を振った。
「タオルが欲しくてな」
「分かった。すぐ持ってくる」
切りにくいガーゼをイルイははさみを使ってちょうど良さそうな大きさに切った。
上から覗き込まれながらの入浴はどうも落ち着かなかったが、たぶん、不安なのだろうと思って、ことさらに寛いだ仕草をして見せた。
服はどうした物かと思っていると、急にイルイが立ち上がって居間から出て行った。しばらくして戻ってくると、
「それは?」
「お人形のお洋服」
「……」
お洋服と言うより、浴衣にしか見えなかった。どんな人形なのか少々疑問が残るが、ちょうどよいサイズだった。
「昼寝の時間だぞ、イルイ」
帯を締めながら、言うと、イルイが曖昧にうなずいた。
「どうした?」
「ゼンガー……そばにいてくれる?」
ゼンガーは少し柔らかい物を視線に湛えながら、自分よりも大きなイルイを見た。
「ああ」
イルイはほっとしたようにもう一度うなずき、言われたとおり昼寝のためにベッドに入った。ゼンガーはその枕元でイルイが寝入るのを見守っていた。
少し眠っていたらしい。
意識が覚醒して初めて、ゼンガーは自分が眠っていたことに気がついた。
――いかんな。
目を開けると、イルイがゼンガーの胸の辺りでスヤスヤと眠っている。黙ってその姿を眺めていて、ん?と気がつく。
胸の辺り?
ゼンガーはいつの間にか元の大きさに戻っていた。
視線を感じたのか、イルイがぼんやりと目を開けた。そして、少し顔を動かして、ゼンガーを見た。視線が合う。まだぼんやりした様子でイルイはそっと手を伸ばして、ゼンガーを触った。
それからもぞもぞと擦り寄ってきて、額をゼンガーの胸にぴったりとくっつけた。
「……わたし……ゼンガーはおっきい方がいいな……」
くぐもった声がした。
ゼンガーは小さな身体を抱き寄せた。
そして、柔らかな金髪を撫でながら、
――まったくだ……
と思った。
これで答えたことになるかね,我が友よ.書きっぱなしで校正なんかしてないぜ.はっはっは.(若干乾いた笑い)
いろいろ考えたんだよ,これでも.191cm→10cmになるわけだから,19.1分の1.体重は3乗で訊くから,正確に何キロかは知らんけど,95kgぐらいだとして13.6g.すごい,80円で全国に送れるよ.イルイでも持ち運べそうだ.
米粒はですね,測ったら8mmあったのです.19.1倍したら15.2cm.こりゃ手のひらいっぱいいっぱいだろう.とか.
あと,どれぐらいの重さの物持てるかなあと計算してみたんだけど,それは使えなかった.(ベンチプレスどれぐらいか分からないけど,職業が職業だから一般人よりは上,でも,基本はパイロットかつ剣客だから,筋力ばかりじゃないよねえと200kgを想定.で,筋力は筋肉の断面積で訊くから2乗で訊くわけで(全身筋肉でできてるわけじゃないからアバウトだけど),500gぐらいは動かせるかな,ちゅう感じで)
回ってきたの見て,「逆?!」と思ったけど,逆じゃなかったら普段とあんまり変わらない気がする.理科年表によると,2004年の5才(私の中でイルイはそれぐらい)女児の平均身長は108.6cm,17.6kgだそうです(日本人の統計だけど).うわ~,ゼンガーの半分ぐらいだ.なんて素晴らしい身長差だろう.
Tweet 日時: 2008年4月29日 | 感想 > ゲーム |
コメント (2)
すばらしいよ我が友。
想像の斜め上行った。
プレシャス。
「80円で全国に送れる」に吹いたさ。
投稿者:群青 (2008年4月29日 21:27)
あまりにも軽いような気がして,「ちょっと~,これじゃ定形で送れるやん」と疑問を抱いた.未だに計算間違っているような気がしてならない.
もっとも,定形で送るには厚みで引っかかるかもしれないなあ.
投稿者:Sousui (2008年4月30日 21:09)