翌24日。運命の日。
リリィは朝から嬉しそうだったが、俺はえらく気が重かった。
お店が開く時刻に合わせて買い物に出かける。リリィは本かなんかでしっかりと調べていて、料理の材料をメモした紙を片手に俺の押すカートの中に次々と食べ物を放り込んでいく。
リリィは突然立ち止まって、難しい顔をしてメモと値段と七面鳥の肉とをにらめっこしだした。
「? どうした?」
「高いかな、と思って・・・」
俺はチラッと値段を見て
「大丈夫だ」
とうけおってやった。
「でも・・・」
リリィがためらうのも分からないではなかった。ずっとその日をしのぐので精一杯の生活が続いていたんだ。
「だいじょうぶ、今年のサンタは裕福なんだ」
俺はちょっと胸をはってニヤッと笑った。
「そのお礼に客を呼んだんだろう?」
コクリ、とリリィがうなずいた。俺はその頭をクシャクシャとなでた。
「なら、がんばって料理してくれよ」
それでも不安そうにリリィが言った。
「でも、クリスマスのお料理なんて初めて・・・」
「大丈夫、大丈夫。食えるもので作ればどうにかならぁ」
もう、とリリィは怒ってみせたが、すぐにニコッと笑って
「がんばってみる」
と言った。そして、おもいきったようにカートに七面鳥を放り込んだ。
そんときには俺も腹をくくっていた。
まあ、いいや、なるようになるさ。
リリィはひとりで料理をこしらえたいらしく、お兄ちゃんは触っちゃだめ、と俺に宣言した。
俺は心配でずっと見ていたのだが、そのうちリリィは見ちゃだめと言って俺をキッチンから締め出した。
俺は手持ち無沙汰になってTVをつけてみた。けど、たいして面白い番組もなく、けっきょく、消してしまった。
で、とつぜんその辺を掃除し出した。これでもか、てくらいに入念に、だ。
掃除が終わるなり今度は洗濯にとりかかる。こういう時間があるときにしかできないソファーのカバーとかカーテンとかの大物をやにわに洗い出す。洗い出すと面白くって次から次へとおよそ洗える物は全部洗濯機にほうり込む。グルグルと洗濯物が回って、次々と白くなっていく。で、脱水も終わったらこんどは乾燥機に放り込む。実を言うとここに引っ越してから一番いい買い物はこれだったと俺は思っている。
グルグル・・・ぐるぐる・・・
洗濯をすべて終えてしまうと俺はやっと落ち着いてソファの上にどっかりと腰を下ろした。
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