寝付くのが遅かったせいだろう、次の朝、俺が目を覚ますと日はかなり高かった。

「おはよう、お兄ちゃん。きのう渡しそびれちゃったんだけど、はい、コレ」
 渡された小箱を開けてみると、そこには赤と白のストライプの布切れ。
「バンダナかぁ」
俺はさっそくつけてみせた。
「似合うか?」
「よかった、似合う、似合う」
リリィがニッコリ笑う。
 リリィがプレゼントをくれるのも嬉しかったが、「自分のプレゼントに喜ぶ俺を見て嬉しそうにするリリィ」が俺はすごく好きだった。

 リリィが何か言いたそうにこちらを見ている。ニコニコしながらいたずらっぽい表情で俺を見上げている。
 まてよ、どうしてこんなに機嫌がいいんだ?
「どうしたんだ、リリィ」
「ききたい?」
「ききたい、ききたい」

 リリィは何も言わずにクリーム色のミトンとそれとおそろいの毛糸の帽子を俺に見せた。手に取ったもののいまいち状況がのみこめてない俺にリリィは笑いかけた。

 リリィの話によるとこうだ。

 朝、リリィがまだきのうのくらい気持ちを引きずったまま食事の支度をしていると、チャイムが鳴った。
 扉越しに覗き窓で確認すると、なんと"ミスター・ロックウェル"が立っている。

 リリィはあわてて扉をあけた。

 雪の中を歩いてきたのか、"ミスター・ロックウェル"は雪だらけで全身真っ白になっていた。

 リリィが何か言う前に"ミスター・ロックウェル"はずいっと紙袋を差し出した。そして、「昨晩はいきなり帰ってしまって申し訳ありません」と言った。さらには「きのうは大変失礼なことをしました」とも言った。
 で、リリィが贈ったマフラーを差し出した。

 リリィがどうすればいいか分からないでいると、「もし許していただけるなら、もう一回プレゼントの所からやり直していただけますか?」と"ミスター・ロックウェル"は言った。

 リリィがコクンとうなずくと、"ミスター・ロックウェル"はリリィに届くようにかがんだ。リリィがマフラーをかけてやると"ミスター・ロックウェル"はとびっきりの笑顔を浮かべて「ありがとう」と・・・

「・・・それから"メリークリスマス"って言って行っちゃったの」
「で、その紙袋にコレが入ってたんだな」
「うん」
「そうか・・・あ、そうそう、兄ちゃんからもプレゼントがあるんだ」

 俺は隠していたプレゼントをとりに部屋に戻った。
 自然と顔がほころぶ。

 へへ、あの人にちゃんと謝らせたのってリリィぐらいのもんじゃないかな。

 俺はふと動きを止めて部屋の窓から外を眺めた。
 それからニヤッと笑うと
「メリー・クリスマス、ミスター・"ロックウェル"」
と小声で言った。

1997年12月25日

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